一次と二次の創作の話

時は2000年代、うら若き女子大生のわたしは漫画とインターネットにどっぷりのオタク女子だったのですが、当時のオタク女子の嗜みとして当然のようにわたしも同人系個人サイトを持っていました。
当時のジャンルやHNやサイト名はまるっと秘密です。恥ずかしいので。人気漫画のNL二次創作とだけ言っておきます。イラストやらショートショートやら書き散らしては同好の士と萌えを語らう楽しき日々でした。わたしの青春と言っても過言ではない。びみょい青春だな。

しかしそんな楽しいサイト運営もいつしかゆっくりと熱を失い、作品の更新は滞りキリリクも一向に消化できず日記ですら止まったままの放置サイトに。最後はリア友や彼氏にバレることを危惧したのもあって突然の閉鎖となってしまいました。当時の閲覧者様、最後まで駄目管理人ですみませんでした。今ここで言っても伝わらないけど。

さて、わたしが書いていたのはマイナー寄りのカップリングでしたが、それでもやはり人気漫画というべきか、わたしのサイトの他にもいくつかそのカップリングを扱う同人サイトがありました。
初めのうちはわたしもそれらのサイトの素敵な作品群を一閲覧者として楽しむことができていました。しかし徐々にそれらを素直に楽しめなくなっていきました。同じカップリングを扱いながら自分よりも人気が高いだとか、同じカップリングのサイトとよく相互リンクしているのに自分のサイトにはリンクを返してもらえないだとか……今思えば些細なことですが、当時のわたしはそういったことで周囲に嫉妬し卑屈になっていきました。
自分よりもっと人気があって自分よりもっと素敵な作品を生み出す人が何人もいるじゃないか。何も自分が創らなくても、このカップリングの素敵な作品は他人がどんどん生み出してくれる。わたしが創る必要なんてないじゃないか。そんなモヤモヤした思いが静かに胸に積もっていったのでした。

そうしてわたしの活動意欲は折れました。これは同人あるあるかもしれません。当時のわたしの場合はそこに青年期の葛藤が乗っかりました。自分には何ができるのか、自分にも自分にしかできないことや他人より得意なことがあるのだろうか、それは何なのか、本当にあるのか、見つからなかったとしたらそんな自分に価値などあるのか。そうして折れてしまった。

あれから15年もの月日が流れました。わたしは今も創作活動をしています。絵を描き、歌詞を書き、歌を作っています。
当時と違うのは、二次創作ではなく一次創作をしていることです。同人サイトで二次創作をしていた当時は「わたしがやらなくても他の人がもっといいものを作る」と悩んで筆を折りました。しかし一次創作はそうはいきません。自分が表現したい世界は自分が創らないと広がらないのです。自分が創り続けなければ作品が増えないのです。
わたしはわたしの書く歌詞が好きです。わたしの書くメロディが好きです。わたしの創る歌が好きです。だからこれからも、もっともっとたくさん聴きたいのです。そしてそれはわたしが創らなければ叶わない。わたしにしかできない。

そうしてわたしは今日も新しい歌を考えています。人々に広く知られることや評価されること、人気を得ること、それらももちろん素敵なことだと思います。それが叶うなら本当にとても素敵なことです。しかしわたしにとってはそれらよりもっと重要なことがあり、それが創作の動機となっています。わたしの一番のファンであるわたしを喜ばせること、それはわたしにしかできないのです。

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