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一期一会 Sweets for my SPITZ【トリビュートアルバム探訪】#1

Introduction

私の記憶が確かならば……

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日本でトリビュートアルバムという名前が定着し出したのは1997年、加山雄三氏の『60 CANDLES』だった。タイトル通り、加山氏の還暦を祝うアルバムとして大物ミュージシャンやバンドが集い、彼の名曲をカヴァーした。
そしてX JAPANのhide氏の急逝を悼む『hide TRIBUTE SPIRITS』が1999年に発表され、100万枚を超えるビッグヒットを記録、トリビュートアルバムという名前が一気に一般層へ浸透した。
以後、カヴァーブームとも相まって、スペシャリティのある企画盤として様々なバンドやミュージシャンのトリビュートアルバムが発売されるようになった。

トリビュートアルバム自体の存在に賛否あるだろうが、私は好きな方だ。基本的には異業種というか、他ジャンルのバンドやミュージシャンが集まるので、自ずとバラエティの幅が生まれ、聴いていて飽きが来ない。また、トリビュートされる側と、する側の関係性に発見があるのもいい。そんなわけで、トリビュートアルバム発表のニュースがあれば興味の有無に関わらず、ひとまずメンツだけでも確認してしまうクセがついた。
今回の企画は、そんなトリビュートアルバムの魅力を改めて振り返ってみようぜ、というもの。第1回は2002年10月発売の『一期一会 Sweets for my SPITZ』(以下、一期一会)をピックアップする。

アルバムについて

『一期一会』は、当時発足から1年余りの新興レコード会社・Dreamusic内のレーベル「Teenage Symphony」からリリースされた。この時、スピッツはポリドール所属であり、所属外のレコード会社で企画・発売された珍しいパターンのトリビュートアルバムだった。
トータルプロデュースは竹内修氏。スピッツのデビュー以来、ディレクターを務めた人物だ。昔あった音楽系フリーペーパー『アンノウン』の編集長を務めた人物が関わっていたと覚えていたが、どうやらそれは間違いだったようだ。私の記憶は確かではない。
参加ミュージシャン・バンドの顔ぶれを見ると、レコード会社が手掛けるトリビュートアルバムのお手本とでも言いたくなるような人選になっている。
ビッグネーム枠には、世代を代表するシンガーソングライターとなった椎名林檎と、世代を超えて愛されるシンガーソングライター・松任谷由実を並べ、圧倒的なインパクトを演出。
その脇を固める奥田民生、つじあやの、小島麻由美、羅針盤といった面々は、どんな楽曲でも自分の色を出せる巧者感が良い。特に奥田民生は、これ以前にもトリビュートアルバムへの参加歴こそあるが、この「うめぼし」のカヴァーで“他者の楽曲でもあたかも自分の曲であるかのようにサラッと歌い上げるおじさん”の地位を確立したように思う。
そして勢いのある若手バンド枠には、GOING UNDERGROUND、POLYSICS、100s結成直後の中村一義、LOST IN TIME
更にレーベル枠としてゲントウキ、セロファン、ぱぱぼっくすの3組。企画盤としても、レーベルの宣伝としても魅力ある内容だ。

「珍しいパターンのトリビュートアルバム」と前述したが、このトリビュートアルバムには特殊な点がもう一つある。それは、このアルバムが何も記念していないことだ。そのためか、トリビュートアルバムに度々感じられるパーティー感がまるでない。だからと言うのもアレだが、落ち着いて聴けるのもこのアルバムの良さだと思う。

個人的収録曲ベスト

落ち着いて聴けるアルバム、と言ったものの、収録曲の中でのベスト曲はPOLYSICSの「チェリー」。初めて聴いたときにめっちゃ笑ってしまった(POLYSICSのカヴァーは度々笑わされてしまう)。何と言ったらいいのか、1曲のカヴァーなのにアレンジが組曲的なのだ。ただでさえ他の参加ミュージシャンとは異なるジャンルなのに、変化に富み過ぎた曲に仕上げているのが面白過ぎる。文句なしのナンバーワンです。

曲目表

1.スピカ / 椎名林檎
2.ロビンソン / 羅針盤
3.楓 / 松任谷由実
4.青い車 / ゲントウキ
5.冷たい頬 / 中村一義
6.空も飛べるはず / ぱぱぼっくす
7.夢追い虫 / セロファン
8.田舎の生活 / LOST IN TIME
9.うめぼし / 奥田民生
10.猫になりたい / つじあやの
11.チェリー / POLYSICS
12.Y / GOING UNDER GROUND
13.夏の魔物 / 小島麻由美

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