京都の喫茶店①
8月の京都の夏。息をするのが苦しいほどに、暑い。
南国出身なので一通り暑さは経験してきたつもりだったが、甘かった。ねっとり熱い空気が身体にまとわりついて、じっとしているだけで汗が噴き出してくる。お昼の時間帯なんて身体が外に出ることを全力で拒否してしまう。
それにしても京都には趣深い喫茶店が多い。特に、大戦中に戦火を浴びなかったことも関係しているだろう、歴史のあるお店が多いとように感じる。
①物語の蓄積・喫茶 ソワレ
場所、四条河原町。創業が1948年と戦後の間もない頃から京都の老若男女を見守ってきたお店。名物は角切りのフルーツゼリーが入ったゼリーポンチ。ハイカラな見た目をしているが、味も抜群においしい。京都のムッとする夏の暑さも空気も、すべてがここのゼリーポンチへ導く余興の様に思えてくる。
食事とは別に、この喫茶店を支えているのが”物語り”。店内の空間づくりに多くの著名人・芸術家たちが携わってきた。
店内を照らすブルーの照明は染色家の上村六郎さんが提案したもので、なんでも女性が綺麗にみえる灯りは青色らしい。そのため、昭和の頃にはカップルのお見合いの場としてこの喫茶店がよく使われていたとか。
店内の壁や屋根を飾る葡萄やギリシャ神話の木彫り彫刻は、彫刻家の池野禎春さんが手掛けたもの。また、ゼリーポンチで使われているサイダーは1889年に発売され、100年以上変わらない製法で作られているものと、歴史の積み重ねにくらくらしてしまう。
喫茶店が見てきた京都の歴史と人間の移ろいについて思いを馳せるだけで、思考はもう時空を超えてしまう。うっとりするほど美しく、豊かな時間が過ごせた喫茶店。
②絶品のフレンチトースト・スマート珈琲店
場所、京都市市役所前。1932年に創業。
ここのフレンチトーストの絶品さと言えば、まるで高級ホテルの朝食。バターをふんだんに使って焼き上げたトーストの表面はカリカリで、中は卵液が染み込み過ぎてなく、食パンの白さを残す。その絶妙なバランスに舌鼓み。
共に注文したエッグサンドも卵がふわふわで、サンドの塩味とフレンチトーストの甘みは無限ループ。
③西洋調の店内・築地
場所、四条河原町。創業1934年。
クラシック音楽が流れ、西洋ドールやアンティークの家具が置かれた店内は異国の世界。ここの名物はムースケーキ。クリーム好きにはたまらない!ただクリームは甘ったる過ぎず、中に入ったパインが爽やかさを足している。見た目の可愛さだけでない、ケーキの味や食感は忘れられない。
個人的には、ドリンクで注文したティーフロートも最高に良かった。
④ポルトガル菓子のお店・カステラ ド パウロ
場所、北野白梅町。2015年オープン。
あまり馴染みのないポルトガルのお菓子を提供するお店。エッグタルトが絶品で、日本で売られているエッグタルトは甘すぎることに気付かされてしまった。甘さは最小限、タルト生地のサクサク感とエッグの香ばしさを前面に楽しむ。
ちなみに、甘いものがあまり好きではない弟が、ここのエッグタルトを食べてかなり感動していた。
⑤バロック調の品格・喫茶フランソワ
場所、京都四条。創業1934年。
ステンドグラス、白い天井、赤いソファ、その品格たるや。戦時から戦後、現代まで多くを見てきた喫茶店。戦時中には自由な言論と芸術の場として京都市民に広かれた場所だったらしい。文化と議論を育んだ空間は、フランスのカフェ文化を訪仏させる。
名物はチーズケーキ。普通のレアチーズケーキと同じ見た目だが、食感や味は全くの別物。どちらかと言えばクリームに近かった。上品な空間と味にうっとりとする。
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