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リモート勤務

最近、仕事の募集広告を出すと、州外や果ては国外からたくさん履歴書が届くようになりました。インターネットが発達した為もあると思いますが、コロナ禍でリモート勤務に雇用主も従業員も慣れたため、州外の仕事でも問題なく働ける、と思っていらっしゃるのかもしれません。

国外はさておき、アメリカ国内でも例えオンラインであっても、州外の仕事をするのは簡単ではありません。なぜならアメリカは「合衆国」であり、州によって法律が異なるからです。

雇用主は、従業員のお給料から税金の引き去りをする必要があります。税金は連邦税と州税があり、州税は従業員の居住地に支払う必要があります。失業保険も州の失業保険事務所に支払う必要があり、従業員はレイオフをされたら、居住地の失業保険事務所に失業保険の申請をすることになります。

健康保険も大体の場合には、州によってHMO、PPOなどの医者の区分があり、例えば旅行などで他州で医者にかかる場合には、旅行者保険が必要になってくる場合もあります。私自身、州外にいるときに自分の主治医に電話で相談に乗ってもらったことはありましたが、いざ薬を受け取る、というときに「州外の薬局には法律上処方箋を書くことはできません」と断られました。雇用主の加入している州の健康保険に加入したところで、健康保険を使用できない確率が高いのです。

最低賃金も連邦法で決められたものはありますが、州の規定もあります。残業の規定も州によって細かい規定がある場合もあります。例えば、イリノイ州では一週間に40時間以上働いた分に対して、通常の150%を残業手当として支払うことになっていますが、カリフォルニア州は一日8時間を超えた分に関して残業手当を支払う、一日12時間を超えた分に関しては、さらなる手当が発生する、という州の規定があります。(参考文献:”Otertime” by California Department of Industrial Relations”: https://www.dir.ca.gov/dlse/faq_overtime.htm

ベネフィットを考えても、州の規定で連邦法の規定よりもたくさん産休を認める必要がある、とか、パーソナル・デーは使わなかった場合には買い取る必要がある、とか細かい規定がある州もあります。

では、リモートで他州にとても魅力的な仕事があり、どうしても引っ越しせずにその仕事をしたい場合にはどうすればよいでしょうか?

コントラクトの従業員として、自分で自営業登録をして、仕事を引き受ける、という手もあります。もちろんその場合、お給料は税込みで支払ってもらう、ベネフィットも健康保険などは諦める。税金は自分で申告して支払う。ソーシャル・セキュリティーも自分で支払い、会社負担分は諦めるか、給料に上乗せしてもらう。失業保険も自分で支払う。

そこまでやるには、やはり自分に実力をつけて、コントラクトとして雇われる価値のあるスキルを身に着ける必要がありますよね。

雇用主の方も、従業員が他州に引っ越すから、とか、必要な時には来てもらえば良いから、などと安易な気持ちで他州に居住地がある人を雇うときはくれぐれも気を付けましょう。他州に引っ越す優秀な従業員を手放したくないのはわかりますが、下手をすると、他州でビジネスをしているとみなされ、他州のビジネス・ライセンスを取得する必要もでてきますよ。

コロナ禍でリモート勤務に拍車がかかったのはわかりますが、人を雇う場合には例えオンラインの仕事であっても、同じ州に住んでいる人を雇う方が無難です。

The Stellar Journal 2021年7月掲載
https://www.stellarrisk.com/ja/remoteemployment/?fbclid=IwY2xjawEZ0PhleHRuA2FlbQIxMAABHdd5NyGvKFbGxztNPfyBytLBkWXI-_rVWyKuj8kevJoBPaanflu8RFb2Iw_aem_G0_dIaryvmTLF92paMBlpQ

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