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肌の色と人種

今年(2020年)5月の末に、ミネソタ州ミネアポリス市で、ジョージ・フロイドさんという黒人が白人警察官に殺され、それを受けて全米、そして全世界に人種差別に対する抗議が広まっていきました。抗議デモは生きている人間に対するものだけではなく、奴隷を所有していた、などの理由で、歴史的人物の像も破壊されてきました。私の住むイリノイ州でも、シカゴ市でデモや暴動が起こり、シカゴ市長はクリストファー・コロンバスの像を公園から一時撤去しました。コロンバスはアメリカ大陸を「発見」した訳でもなく(それ以前からアメリカ先住民はアメリカ大陸に住んでいた)、各地の先住民を虐殺した、という批判もあるためです。(参考文献:”Here’s a list of statues ordered to be removed by government officials since George Floyd’s death? https://www.wxii12.com/article/heres-a-list-of-statues-ordered-to-be-removed-by-government-officials-since-george-floyds-death/33085278#
“Will Columbus Status Come Down After All? Mayor Says City Will ‘Examine’ All City Monuments” https://blockclubchicago.org/2020/07/20/will-columbus-statue-come-down-after-all-mayor-says-city-will-examine-all-city-monuments/ )

その後、抗議運動に対する配慮もあってか、民主党の大統領候補であるバイデン元副大統領は、自分が大統領になった際の副大統領候補に「黒人女性」であるカマラ・ハリス氏を選びました。

ハリス氏は、お父さんがジャマイカ出身、お母さんがインド出身です。半分黒人、半分白人のオバマ元大統領も「黒人」とみなされていますので、ハリス氏も黒人とみなされているのでしょう。(参考文献:”Biden picks Kamala Harris as running mate, first Black woman?” https://apnews.com/5ac8fff8bbe1c70479604e3ff62ecb10 )

そもそも、米国は建国当時、移民をしてきた白人、奴隷として連れてこられた黒人、原住民のネイティブアメリカン(レッド)、しか主な人種はいませんでした。支配してきた人種(白)と支配されてきた人種(黒)の対立から、すこしでも「黒」の血を持った人は、例え見た目が白人であっても「黒人」とみなされた歴史があります。
(参考文献:”Who is Black? One Nation’s Definition” https://www.pbs.org/wgbh/pages/frontline/shows/jefferson/mixed/onedrop.html )

余談ですが、最近では自分を「黒人」と定義した方がいろいろな面で得だから、「黒人」と自己申請する人もいます。

今から100年以上前に、ニューヨーク大学に留学した私の祖父(故人)が、最初に白人の先生に言われたことは、「黒人の友達を作るな」ということだったそうです。当時ニューヨークにはほとんどアジア系の人がいなかったため、「白人の友達をたくさん作れば白人とみなされ、黒人の友達をたくさんつくれば黒人とみなされた」そうです。今ではこのようなことを言ったら、その教授はニューヨーク大学を即解雇されますが、本当の肌の色でではなく、まさにその人の文化的なかかわりによってアジア人は白または黒と定義されたということです。

アジア系も有色人種であり、アメリカではマイノリティーであるには変わりありません。日本人や中国人、韓国人の肌は一般的には「黄色」と言われていますが、白人と比べて少々肌の色が濃い、というのはわかりますが、「黄色」とまではいかないと思います。

東アジア人の肌は、白人が「黄色」と言い出すまでは「白」とされていたそうです。世界貿易が盛んになってきた17世紀になると、「文明(Civilization)、文化(Culture)、識字(Literary)、従順(Obedience特にキリスト教かどうか)」ということを元に、東アジア人は「白より濃い肌の色」ということになりました。

1735年に植物学者で医者であるスウェーデン人のカール・リンネ氏は人種を別けるために、「東アジア人の肌は白より濃い色」と定義しました。

1795年になると、ドイツの解剖学者ヨハン・フレードリヒ・ブレーメンバッハは、それまで人種で使われていた「白、黒、赤」に加え、「黄」「茶」という肌の色を使い始めました。(参考文献:”The Chinese were white – until white men called them yellow.” https://www.scmp.com/week-asia/people/article/3086768/you-chinese-virus-spreader-after-coronavirus-australia-has-anti

つまり、肌の色も見た目の色だけに限らず、文化によって別けられているのです。

話は変わりますが、世界にはいくつ大陸があるでしょうか?

私が小学校の頃、日本では、確か「世界には大陸は6つある」と習いました。南極大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、オーストラリア大陸(オセアニア)、アフリカ大陸、ヨーロッパ・アジア(ユーラシア)大陸。

しかし、オリンピックの五輪は人間のいない南極大陸を除いた5大陸、南北アメリカ大陸、オセアニア、アフリカ大陸、ヨーロッパ大陸、アジア大陸を象徴している、とのことです。(参考文献:”What is the Meaning Behind the Five Olympic Rings? : https://www.cavatoyota.com/blog/what-do-the-olympic-rings-symbolize/#:~:text=The%20interlocking%20rings%20of%20the,America%2C%20Europe%2C%20and%20Oceania.

世界では、大陸の分け方の考え方は5つから7つあり、ポイントは南北アメリカ大陸を一つと考えるか、ヨーロッパ・アジア大陸を一つと考えるかによります。

南北アメリカを別の大陸とするのは、繋がっている個所が少ないから納得できます。アフリカ大陸も然りです。しかし、アジア大陸とヨーロッパ大陸は別とする分け方は、実際の大陸の構造ではなく、単に文化的な意味で分けていますよね。地図を見れば、アジアとヨーロッパの間にはどこにも切れ目がないのですから。因みに、アメリカで教育を受けている息子は、高校で世界の大陸は「7つ」と習ったそうです。
(参考文献:”How Many Continents Are There? Depends Whom You Ask” https://people.howstuffworks.com/culture-traditions/world-history/continents.htm )

要は、肌の色の分け方も、大陸の分け方も、ヨーロッパ系の白人の決めたカテゴリーなのです。私は、別にアジアをヨーロッパと同じように考えるべき、と思っている訳ではありませんが、白人の社会では、肌の色も大陸の定義も、アジアを自分たちとは別だと思いたい、という歴史があったようです。

私が米国に来た頃、実際に聞かれたかどうかは覚えていませんが、本に「日本人は、『肌の色』という質問に対して『黄(Yellow)または白(Fair)』、目の色は『茶色』、髪の色は『黒』と書くように」とあった覚えがあります。しかし、最近、肌の色や髪の色を聞く質問も受けていません。いつの日か、肌の色に関係ない、差別のない社会が来ることを祈っていいます。

ただ、会社を経営する上では、統計目的で入社した時点で従業員の人種など聞いておくべきです(もちろん、自己申告でかまいません)。万が一「人種差別」などで訴えられた場合には、会社が労働局などに人種・性別構成を申請する必要がありますので、念のため。

The Stellar Journal 2020年8月掲載
https://www.stellarrisk.com/ja/definingpeopleofcolor/?fbclid=IwY2xjawElGgJleHRuA2FlbQIxMAABHVCJZ736luUPE7wEOOCj7xfB99CsVjkGJ6DcYE4yls9y3rDVFzlzs4pScw_aem_eNgEK0J34w-MsmymtiOuuA

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