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子供の労働・夏の仕事とインターンシップ

現在、米国は夏休みの真っ最中です。夏休みの間、自分の子供に、自分に、夏休みの間のお仕事を紹介して欲しい、というご依頼がたくさん入ってきます。

まず、最初に申し上げますが、夏休みの間であれ、私の住んでいるイリノイ州で正式に仕事ができる年齢は16歳です。(16歳未満の場合は、仕事をするのには学校から特別な許可を取る必要があります。)いくら「うちの子供はしっかりしている」と言っても、年齢制限があるからには年齢制限に従う必要があります。(参考文献:”Child labor law compliance”, Illinois.gov)

親がEビザの人の子供で、Eビザの家族ビザで米国に滞在している人は、16歳以上であっても働くことはできません。最近、Eビザの配偶者にはわざわざ労働許可を申請しなくても働くことができるようにはなりましたが、子供の場合には、労働許可を申請することすらできません。

なお、Eビザとは、日本のように、「米国と通商条約を締結した国の国民」が駐在員として米国で働く場合に発行される労働ビザです。(参考文献:在日米国大使館と領事館

大学の留学生の場合、夏休みの間はCPTやOPTを使って、自分の勉強している分野と関係のある仕事をすることは可能ですが、時間の制限や、仕事内容の制限は当然あります。

では、無料で働き、経験を積むのは構わないのか、という疑問もでてくると思います。

無料インターンを受ける側も、雇う側も注意が必要です。なぜなら無料インターンを合法的なプログラムとして認められるには多大な制限があるからです。非営利団体でない限り、ほとんどの場合に違法になります。

お互いに「無料」で納得してるから、無料インターンシップをやっても構わない、ということはありません。無料インターンシップとして法律上も認められるには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  1. そのインターンシップが無料であることが周知の事実であること。

  2. そのインターンシップでのトレーニングが、教育機関で受けるものと同等であること。

  3. インターンシップが、インターンの現在の学校のプログラムと関連があること。(例えば、インターンシップをしたことで、学校の単位を貰うことができる、など。)

  4. インターンシップが、インターンの学業を邪魔しないこと。

  5. インターンシップがインターンにとっての利益となる期間だけに限られていること。

  6. インターンがする仕事が、インターンの利益となるだけではなく、既存の従業員の仕事の一部を引き受けることにならないこと。

  7. インターンシップをしても、その後にその企業に雇われる保証がないこと。

上記すべての条件を満たしていないと、無給インターンシップは違法となります。例えば、無料インターンの仕事が「普段その職場の従業員がやっている仕事の一部と同じである」とみなされると、無料インターンを雇う条件は満たされていないことになります。雇用主はペナルティーを食らうことはもちろんのこと、留学生の場合には、下手すると、不法労働として国外退去処分になる可能性すらあります。

(参考文献:”Work experience or free labor? Learn what makes unpaid internship legal”, Business New Daily, October 20, 2023)

雇用主の方は、「無給」インターンではなく、最低料金のお給料は支払うことをお勧めします。その上で、労災にも入れておけば、万が一、職場でケガをされた場合にも労災が適用になります。無給でインターンに普段の仕事を手伝わせる、ということは、その仕事をやりたかった人が一人、仕事を得られない、賃金を受け取れない、ということになるのです。

ところで、コロナ禍の労働者不足もあり、不法移民の12歳から16歳の子供が屠殺場で働いている、という事実もありました。屠殺会社は派遣会社を通して子供たちを雇っていたそうですが、実際に子供たちが働いていた、全米で最大手の屠殺・精肉会社は、は102人の子供(ほとんどが不法移民)を雇ったため、1.5ミリオン(150万)ドルの罰金を科されました。派遣会社から雇ったからといって、不法労働者が働いていた場合には、最終雇用主が罰せられます。(参考文献:”24 migrant children illegally working at Ohio chicken slaughter house”, World Socialist Web Site, October30, 2023)

米国は、移民の国であり、不法移民が安い労働を提供するから潤っている、ということは周知の事実です。でも、不法移民がかわいそうだから、というだけの理由で、この国に入れると、結局一番弱い子供たちにしわ寄せが行くのであれば、入れない、という選択もある、とさえ思ってしまいます。

変な親切心を出して、留学生や労働許可のない人を無給インターンとして雇っている雇用主さんは、すぐに弁護士さんにご相談になり、インターンシップのプログラムを見直すことをお勧めします。

留学生の方も、Eビザの家族として米国に来ている方も、将来米国で働きたい、勉強をしたい、という気持ちがあるのであれば、安易に無料インターンシップを受けないことをお勧めします。

The Stellar Journal 2024年7月掲載
子供の労働・夏の仕事とインターンシップ — Stellar Risk Management Services, Inc.

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