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医療系雑貨生みたて卵屋『毒と薬の蒐集譚』

☆mediopos3478  2024.5.26

「医療系雑貨生みたて卵屋」による
『毒と薬の蒐集譚』

「医療系雑貨生みたて卵屋」とは
「医療」をテーマにした
Arai Mizuhoデザインによる文具・雑貨ブランド

2001年より活動を始め
「事実と空想、毒と薬の世界へ」を標語に
毎年数十種の新作を展示販売するなどの
制作・出展活動を行っている

「生みたて卵屋」には
「アイデアの卵が沢山生まれ(産まれ)ますように」
という意味があるそうだ

他にもいろいろなテーマで展開されているようだが
今回の『毒と薬の蒐集譚』では
世界の文化(魔術、錬金術などの古学問)と
深く絡み合うエピソードを軸に
おじさん博士が薬を求めて世界を飛び回る
「薬用原料採集旅行の記録」シリーズが
一冊の物語としてまとめられている

そのストーリーは
およそ100年前の1901年から
「薬用原料」を集め世界を旅し始めたおじさん博士が
その後10年にわたり続けられたその旅を思いだしながら
「地道に趣味で揃えてきた蒐集物の話を書き記」す
というもの

書き記されていくのは
旅の話とその旅で蒐集された以下のような物品の備考

1901年「毒と薬を探して」の章では
金と赤の石(オリハルコン・賢者の石)
小さな魔術書(治癒の書・知識の書)

1902年「魔女の気配」の章では
「ヘルメス主義と錬金術」の閑話を交えながら
魔女の薬草書(魔術薬草教本複写版 便箋帳)
マギステルブローチ
紙片に込められた物語(疫病研究センター・ギャラリー入館証・
 魔女歴史資料館リーフレット・修道院ミニチケット・
 マイメイドショーチケット・
 アクアリウム&テラリウムミュージアムチケット・ケルトチケット)
マンドラゴラの数奇な運命(魔道書紙片)
魅惑の薬瓶(魔女の毒薬・ELIXIR・契約の小瓶)

1903年「不死への鍵」の章では
「変容と循環」の閑話を交えながら
印刷の街(蔵書票・天使メタトロンの立方体)
虹色の四大精霊
歴史を紡ぐ祭典(錬金術史解体展・魔女の遺産展・アクアリウム展)

1904年「香辛料と植民地」の章では
漂流の記憶

1905年「秘匿と伝承」の章では
北の海獣目撃録
ケルトの伝承
魔女の占い処方(薬瓶ラベル)
友愛の秘密結社
星の加護
アカシック・シャーレ
錬金薬局の印章(フォブシールペンダント 錬金薬局)

1906年「世界を変える植物」の章では
錬金術師の置き土産
北の植物標本

1907年「鮮やかな旅」では
自然の箱舟

1908年「香水に魅了され」の章では
フレグランス・ガーデン
四元素の香水瓶
祝福を宿した香水瓶
愚者の被造薬

1909年「人魚と竜の血」の章では
「悲しき人魚」の閑話を交えながら
透明博物画
封緘の雫
伝承を紡ぐ針

そうした物たちが
豊富な写真やイラストとともに
紹介されていく「毒と薬」の旅物語となっている

本書の「おわりに」には
作者である「医療系雑貨生みたて卵屋」からの
メッセージが添えられている

「私の作品全体を通して、
「現実か空想か」という問いかけが多くありました。
主人公のおじさんは私が設定したものですが、
蒐集した薬用原料の薬効や、歴史や都市の説明、
旅程などは事実に基づくもの」

「これは現実なのか、虚構なのか。
不思議な感覚も楽しんでいただけたら」
とある

本書を読み始めたのは刊行されてすぐの
昨年九月のことだったが
その後何度も本書と楽しく旅をしているうち
とりあげる機会をもてずにいたので
本書の物語のように10年後に・・・とはならないように
今回とりあげることにした次第

ちなみに「医療系雑貨生みたて卵屋」の公式サイトでは
本書や実際の展示に関する内容などが参照できる

しかしよくもまあこうした数々の「医療系雑貨」を
細部にこだわりながらデザイン・制作されたものだと
感嘆するばかりである

■医療系雑貨生みたて卵屋『毒と薬の蒐集譚』(芸術新聞社 2023/9)

*「明治の世に生まれ、父の元で医学の発達を見てきた。
 その父も亡くなり、私も随分年をとった気がする。
 そんな中、まだ見ぬ薬用原料を探しに、海外へ行くことにした。
 先週招いた英国人が持っていた、薬草の博物誌。
 あれが非常に羨ましく、私を駆り立てたとともに、
 元気なうちに行かなければきっと後で後悔するだろうと直感したのだ。

 前例というの程のものもなく手探りの状態だが、要は慣れ。
 言葉の壁もあるが、それがこの機会をなくす理由にはならなかった。
 ————1901.1.1」

*「世界中の薬用原料を採集するための旅を初めて十年目になる。
 長い旅路を通し、様々な出来事に思いを馳せる————。

 ふと部屋に積まれた荷物を眺め、
 今までの旅路を思い返し、集成してみようと思い立った。
 普段は薬用原料やそれらにまつわる物事しか書き記していないのだが、
 今回は、世界各国の魅惑的な品々や素晴らしい体験を、
 忘れないうちに書き残せればと考えている。

 内容は妻への土産話のようなものになるかもしれないが、
 地道に趣味で揃えてきた蒐集物の話を書き記す良い機会と考えた。
 何はともあれ、これらの思い出が色褪せる前に、筆を進めようと思う。
 ————1909.7.10」

○医療系雑貨生みたて卵屋【プロフィール】

Arai Mizuhoが「医療」をテーマにデザインした文具・雑貨ブランド。2001年より活動開始。主にアートイベントに出展しつつ、路面店や企業と取引を進める。「生みたて卵屋」は、「アイデアの卵が沢山生まれ(産まれ)ますように。」という意味。その名の通り、毎年数十種の新作を制作、常に400〜500の商品を販売している。2017年に株式会社OVOを設立。「事実と空想、毒と薬の歴史へ」を標語に制作・出展活動を行う。

人の歴史に医薬あり。世界の文化(魔術、錬金術などの古学問)と深く絡み合うエピソードを軸に、おじさん博士が薬を求めて世界を飛び回る「薬用原料採集旅行の記録」シリーズ、動物たちが楽しく動く「動物のお医者さん」シリーズ、魔女が出てこない「使い魔」シリーズなどを展開。実制作では紙物雑貨の他、木・革、ガラス、貝、金属などさまざまな材料を使い、大量生産品から手作り品まで幅広く制作を楽しむ。近年は世界観を表現した「部屋」を作る個展も毎年開催。作品だけでなく、多数の什器やアンティーク品、自然物を持ち込み、「いつまでも居たい」空間をつくる。」

□医療系雑貨生みたて卵屋 公式サイト


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