辻村美月, 凍りのくじらを読んで
元旦に読了
辻村美月作品は、描写が丁寧で、他者への気持ちが存分に描かれていてとても好きです。
さらにただ平凡な話ではなく、最後に驚くような展開があります。
本作の主人公は、周りのことをよく見てる、自分のことを周りより頭が良くて、大人だと思っている女の子、理帆子。
ただ意味のない飲み会だとしても呼ばれたら行ってしまう、頭がおかしい元彼も求められたら応えてしまうそんな女の子。
書評には主人公っぽくないと書かれていましたが、私はそんなことない、多くの人はこんな揺れ動きがあると思っています。
本作の大きな流れとしては、理帆子が様々な経験から、自分のことが嫌になり、もがき、最終的には大人になる物語です。
ドラえもんの話が沢山出てくるのも特徴ですね。
ただこれはドラえもんを無理やり被せているのではなく自然に出てきます。
私たちが日常会話に好きなアニメの必殺技やアイテムを重ねるように
本作には多くの人物が登場します。自分の近くにいそうで感情移入してしまう
失踪した父親
娘とうまくやれない母親
見た目は完璧な父親の親友
言葉を話さないその息子
頭が悪いと自分で言いながら友達想いの女の子
人の話を聞くことが上手な掴みどころのない先輩
顔も良くて頭も良い生徒会長
それにいじめられてる同級生
明確にここが面白いとは言いづらいのですが(というか辻村美月作品はどれもこんな感じ?)
自分の気持ちを代弁してくれているというか、よくここまで心理的な描写ができるなというか、
人の気持ちが丁寧に描かれていて、かつ、最後に全く自分が想像していなかったサプライズを見せてくれるので私は好きです。
こんな体験なかなかできないです。
素晴らしい物語を観せていただき、ありがとうございました。