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夢中と没入の間に

このnoteは「私が好きなマーダーミステリーベスト10 2023」ってトークイベントに、私NOVAKも参加させていただいて語ってきたので、そのことを振り返る、という内容です。比較的いつもは最初に言いたいことをバシッと最初に書く方なんですけど、今回はとりとめもなく始まります。

まず、自分のベスト10は、正直しょっちゅう話してるので目新しさはないです。
ちょうど1年前にも書いてました。こちらのnoteの下の方にあります。

で、年末のイベントの結果としては、2024に体験した二作品
2位に「アク 星降る島に花束を」
5位に「パンドラの箱の再開」
を挟み込んで、招待の正体、Why done it、アンノウンがリストから外れたのみです。

で、今回、自分は、没入体験ができる作品が好きなので、その中でも上位を選びました。と同時に、その中でもさらに上の4作品は
「夢中」になった作品である、と説明しました。

で、この「夢中」って話、アク、パンドラの箱の再開の作者であるぱんださんと飲んだ時に、自分は飲みながら初めてその言葉を口にしたのを覚えてます。「今年はもうパンドラで決まりだと思ってたんですけどね……あまりに「アク」に夢中になってました」とお伝えしました。そして、1位から4位の作品は、自分の中で「夢中」になった作品である、と。

正直、僕の5位から10位に出した作品は「桜の散る夜に」以外は、定番過ぎてもう今更いいか……とも思ったので(失礼w)「桜の散る夜に」だけ熱めに語って、他は流しつつ、「夢中」になった4作品について話をさせてもらいました。

さよならを聞かせて
アク
ランドルフ・ローレンスの追憶
裁くもの、裁かれるもの

「夢中」になった4作品です。(最初が1位)

で、この4作品の「夢中」とその他の「没入体験」の差がなんだったのか。

一言で言うと、我を忘れてるんですよね。アドレナリンが出まくってて、メタ、とか、RPとかもうよくわかんない。この4作品はなんとか自分の目的を達成するために必死になってました。正直、ゲームとしても完全に「勝ち」を取りにいった作品です。でも、それでも、それなのに、素晴らしい物語が最終的に紡がれた。それは、単に用意されたストーリーというだけでなく、自分にしかなしえない「ドラマ」を作れたような手ごたえがあったのです。

このあたりは先月ぐらいに書いたnoteでもふれています。

あと、4作品に共通することがあります。濃度の差こそあれ、あまりに夢中で終わった後、我に返った時、
「こ、これ僕だけ楽しんだんじゃないだろうか……他の人、楽しめたかな?大丈夫だろうか……」ってちょっと心配になったんですよね。実際、いくつかはそうだったかもしれません。ほんとごめんなさい。普通の人はそういう場合ベスト10にいれないのかもですが、僕は、いれました。

これはトークイベントでも話しましたが、1位の「さよならを聞かせて」は、特に自分がそう思った作品です。しかし、終わったあとのことを鮮明に覚えてます。一緒に遊んだ友人が
「いやー、俺主人公だったわー」
って言ったんですよねw
おいい!主人公は俺だよ!!って全力で主人公対抗COしましたがw

さらに終わった後、他の友人たちも口々に満足した旨を伝えてくれました。あんなに自分は近視眼的なプレイだったのに、友人たちもそれぞれ、自分の人生を歩んでいたのです。多分、あの感覚はもう2度とないんじゃないか、とさえ思ってます。

でも、これでは「夢中」になった体験を語るだけで、あんまり中身、原因とか理由を言語化できてないなあ、ってずっと思ってたんですよね。それが、自分のベスト10語る前に聞いたとある2人のプレゼンで、ぱあっとなんか、開けたんです。

ひとつがこちら。東大マダミスのかるらさんのプレゼン。

私が好きなマーダーミステリーベスト10 2023 より(本人と運営のご承諾を得ました)

特に、この「マーダーミステリーでやる必要があるのか」こそに「それ!」って刺さったんですよね。実際、かるらさんの作品自体からはめちゃくちゃそこへのこだわりを感じます。そしてこの③を見た瞬間に
Lost/Remembrance
が出てくることを確信してましたが、やっぱり出てきましたね。
この作品、協力型で、推理重視……的な文脈で語られることが多いのですが、僕はこの作品はまさに「マーダーミステリーでやる必要がある」作品であると感じていて、そこが一番好きだな、と思っていました。これは、少しだけ言い換えますが「マーダーミステリーである意味がある」ことが僕にとっても重要なのだな、と聞きながら考えていました。ちなみに、Why done itも出てきたので、そこもうれしかったポイントでした。これも僕にとって「マーダーミステリーである意味がある」作品でした。

たぶん、人によって「マーダーミステリーである意味がある」の定義は全然違うでしょう。だけど、僕にとって、それは、「目的にむかってプレイしていたらいつの間にかキャラクターになっていて、いつのまにか物語ができあがっている」ことにつきます。そして、「没入体験」だけでは「目的にむかって」がやや弱い場合もあるんですよね。もちろん「いつの間にかキャラクターになっていて」が達成されているから没入体験なわけですが。だから、僕にとってこの「夢中」になった4作品もまさに「目的に向かって」が大きな差異なんだな、と横で聞きながら考えていました。

そして、もうひとつのプレゼンを聞いて、それだー!ってさらに思ったのです。それは #毎月マダアン  の主催、翔さんのプレゼンでした。

私が好きなマーダーミステリーベスト10 2023 より(本人と運営のご承諾を得ました)

翔さん自身もおっしゃっているように、真ん中の、共感的没入、で没入体験を得ている人はマーダーミステリープレイヤーにはとても多いと思います。僕自身もそうです。没入体験できた、と思った作品はほぼすべて共感的没入、を感じました。

ただ、自分の考える、「夢中」との差異は何か。
一番大きいのは「思考的没入」だとまさにそれを見て思ったのです。ああ、僕が「夢中」になった作品にはまさにそれがあった。情動だけでなく、論理的思考もフル回転して自分は没入していった。

そこまで話を聞いた段階で自分のプレゼンで話すこと、もともとあんまり決めてなかったのですが、ちょっと変えました。
「情動と論理の両輪で頭をフル回転させてこそ、夢中になれるんじゃないか」
そう考えたのです。ちょっとなんか思いつきで話し始めたので、熱く語る口調だけで押すプレゼンになっちゃって申し訳なかったんですがw、自分にとってはその場で気づきを得た興奮も得てあんな感じのしゃべりになっておりました。

さらに同時にもうひとつ「空間的没入」です。ギリギリベスト10から外した「招待の正体」という作品。これ、正直共感的没入も、思考的没入もそこまではしてないんですよね。では何がすばらしいかというと、「空間的没入」でした。宿泊型で、あの場所でしかなしえない駆け引きや物語があった。

そして、翔さんの次、僕の前のプレゼンターが運命的に「招待の正体」の作者、イマーシブラボのユートさんだったんですね。実際、ユートさんの作品である、「招待の正体」も「七つ下がりの雨に」も「毛玉の家」も、強く情動や論理で突き動かされる、とはちょっと違う作品でした。でも確実に僕は没入していたのですよね。だからこそ大好きなのですが。それがまさに「空間的没入」だと考えました。

(ちなみに、ゲーム的なものが好き、って前振りしときながらエモ作品ばっか紹介するユートさんのプレゼンには、「エモばっかじゃねえか」ってガヤ煽りしてましたがw)

翔さんは、真ん中の「共感的没入」の強い作品は多いけど「思考的没入」「空間的没入」が強い作品がもっと増えるといいんじゃないか。とおっしゃっていました。もう、本当に我が意を得たり、でした……。心の底から僕もそう思います。

僕は、自分のプレゼン終わった後(だったと思います)
「かるらさんやユートさんにはがんばってほしい」と述べて「おい、他のマダミス作者は!」ってつっこまれてw 「いや若い2人にね……」とか胡麻化しましたw

でもあれには理由があってですね。思考的没入の旗手としてのかるらさん空間的没入の旗手としてのユートさん、に期待してる気持ちが素で表にぽろっと出ちゃったのです。これは嘘偽りない気持ちでした。ただパッとそれを短く説明できる瞬発力が僕になかっただけですw

おや、お気付きになりましたか……?
実は、僕はこの言い訳をするためにこのnoteを長々と書いてきました。
半分冗談で、半分本気ですw

でも本当に、共感的没入、を捨てることなく、空間的没入、思考的没入をもたらせる作品は生まれるんじゃないか。そしたらさらに夢中になれるんじゃないか。そんな期待をいだいた、2023の暮れだったのでした。

そして、2024にはきっとまた、そういった新しい作品に出会えるのではないか、僕はそう考えています。

あけましておめでとうございます。2024年もよろしくお願いします。


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