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クトゥルーの世界へようこそークトゥルーの呼び声ー

概要

訳:森瀬 繚 著:H.P.ラヴクラフト 絵:中央東口

出版:株式会社星海社(1)

あらすじ

 怪奇小説作家H・P・ラヴクラフトが創始し、人類史以前に地球へと飛来した邪神たちが齎す宇宙的恐怖を描いた架空の神話大系〈クトゥルー神話〉。
その誕生100周年を記念し、クトゥルーと異形の神々が瞑る海にまつわる恐怖を描いた傑作群が、新たな装いで蘇る――。
悍ましい半人半魚の巨人との接触を描いた最初のクトゥルー神話作品「ダゴン」、浅浮彫を手がかりに謎の教団の幻影を追う表題作「クトゥルーの呼び声」、クトゥルー崇拝の起源へと遡る「墳丘」、クトゥルーを崇拝する〈ダゴン秘儀教団〉の暗躍を曝いた「インスマスを覆う影」......。
“クトゥルー・オリジン”(神話の原点)にして、いずれ劣らぬ傑作7+1編を、森瀬繚による完全新訳で収録。
新たな探索者たちよ、来たれ。いま、海底から目醒めた邪神が呼び声を響かせる――!
〔収録作品〕
・ダゴン Dagon
・神殿 The Temple 
・マーティンズ・ビーチの恐怖 The Horror at Martin’s Beach
・クトゥルーの呼び声 The Call of Cthulhu
・墳丘 The Mound
・インスマスを覆う影 The Shadow over Innsmouth
・永劫より出でて Out of the Aeons
・挫傷 The Bruise(H・S・ホワイトヘッドとの合作)(2)

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各話あらすじ

ダゴン
 漂流した船乗りが見つけた高度な文明の跡とその神。記念すべきクトゥルー第一作目。

神殿
 任務実行中の潜水艦から起こる奇妙な現象。潜水艦にまとわりつく謎の魚、死んだ男が身に着けた謎のペンダント、乗組員が発狂し、最後の一人になりながらも抑えられない好奇心。

マーティンズ・ビーチの恐怖
 ビーチを襲った恐怖、B級の匂いがプンプンする奇妙な生物との邂逅。

クトゥルーの呼び声
 亡き祖父が残した手記には奇妙な神話の事が描かれており、それを探っている間に気が狂った彫刻家とシンクロしている事に気づく。

墳丘
 日中も夜も幽霊が出るという丘では失踪者が出ていた。それを調査する語り手が発掘したのは見たこともない金筒で中には十六世紀冒険家の記録が入っていた。
高度でグロテスクで不道徳な文明。

インスマスを覆う影
 男が好奇心のつられて訪れた町、インスマス。そこの住民が醜いのはどうやら伝染病のせいだとされているが。怪奇趣味と伏線回収が冴え渡る表題作。

永劫より出でて
 博物館で展示品の一つの蹲るミイラ。まるで恐ろしいものを見て目を塞ごうと顔を隠すそのミイラを訪れる奇妙な外国人達。亡き館長が語る奇妙なミイラと神秘主義者の引用で脅威の壮大さを物語る。

挫傷
 怪我をした日から奇妙な叫びと騒音。精神病医師の力を借り、その騒音の所以を探る、ホワイトとの共作。


特徴

 この作品群は気が違ったと思われる人物の手記または語りから始まる奇妙な様式美が感じられる。全てが残酷であり、超越者の影がちらつく魅惑の怪奇小説である。この本はクトゥルー作品群の中のクトゥルー、海の神話、沈んだ大陸にスポットを当てている。前期と後期の作品も混ざっているが入門書としては最適である。


良い点

 怪奇趣味、異形、神話、それらの要素に魅力を感じる人にはお勧めできる作品である。この作品の殆どの語り手が書いた手記とされており、後に身を投げるか変死を遂げておりそこも怪奇趣味に加速をかけている。もう一つ魅力的な部分はシェアワールドである。自身の作品だけでなく他の著者の作品とも繋がり広がる宇宙の巨大な古代文明からの脅威それを纏め、奇妙な繋がりを探るのも乙である。


悪い点

 欠点を挙げるとすれば、著者の文体か翻訳でなったのかは定かではないが少し文がしっかりしない時がある。テンポ良く読んでいた時に怪しげな文章に陥るのでそこは注意されたい。


まとめ

 物語としては物足りないと思う人もいると思うがこれを物語群としで捉えると奇妙な味わいを持つ。怪奇が好きな人、クトゥルーに興味持った人、シェアワールドが好きな人に勧める宇宙からの脅威を記した手記である。


(註)

(1)以下から画像転載


(2)以下からあらすじ引用


(3)以下から画像転載


リンク

講談社当該商品ページ

森瀬繚氏Twitter


中央東口氏Twitter


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