辻仁成さんのドキュメンタリー

 自分にとっての大仕事が一つ終わって、ひさしぶりに味わう解放感と、じわじわ滲み出る疲れ。

 朝、雨がなんとか降らないことを願いつつ、シーツを洗ってソファに横たわって映画でも見ながらもうちょっとまどろもうかと思ったところに、辻仁成のドキュメンタリーが始まった。

 この人がお料理をつくったり、息子を育てたりを発信しているのはなんとなく知っていたが、あまり興味を持っていなかった。息子を手放してまで手に入れたい離婚というのもあるのかもしれないが、想像つかない。でもそれはあるのだろう。単純に比較などできない、どっちが大事とかなんとか。離婚する時点で、いいことづくめとはいかない。

 辻さんが、眼前に迫る息子との二人暮らしの終焉を見つめながら、大人になる息子を、自分の人生をかけて幸福な子にしたいと考えている気持ちが、自分のと重なった。息子さんが、フランス人の男の子が辻さんから教わりながらつくったおにぎりを見て「かっこいい」といったことを辻さんは本当にうれしそうに伝えていた。ここでちょっと画面が滲みました。だれかがそこにいて、そこには息子よりも小さい、守るべき存在の子がいて、その子に息子がかけることばを聞くときに、(よかった!こころが育っている!)とよろこびでいっぱいになったのだと思う。

 さて、先日、赤いお皿を一枚買った。我が家は色が少ないインテリアだ。木目、アイボリー、褪せた緑、灰色、ベージュ。お店で見かけた安いお皿だけど、自分のために連れて帰りたくなった。そういえば、娘の結婚式のときに、末娘が塗ってくれたベリー色のマニュキュアも今、とても気に入っているのと、「かわいいですね」と言われたこともあって、また塗ってみたりしている。

 赤い色は自分に元気をくれるものだなぁ、とこれまで生きてきた中で何回か思ったことがあるように思う。今がずいぶん久しぶりに、15年ぶりぐらいにそれがやってきた。赤い色の服を着て、午後の仕事に行きたいが着ていけそうなのがない。欲しいな。赤いワンピースとか、赤いTシャツとか。

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