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2021年6月の本棚

もう今年の折り返しまで来てしまったという絶望感と一応半年間毎月note更新を続けてこれたという少しの達成感。読書記録アプリという便利なものもあるけど、自分にはこのちまちまと短文で書き記していくスタイルが合っていたと思う。とりあえず残り半年は続けたい。

映画大好きポンポさん3 / 杉谷庄吾【人間プラモ】(KADOKAWA)

アニメ映画も無事公開されたポンポさんの最新巻にして(おそらく)最終巻。巨匠ペーターゼンさんと組んで「最高」の映画を撮ることになったジーン。一方ポンポさんは年相応に学校に通うことに。そこで出会ったのは「最高」のカメラマン…!?
相変わらずの猟奇的な熱量で一気に読み切らせる面白さ。映画、ひいては創作物が好きな人みんなに読んでほしい名作です。

神さま 僕に…… 僕に映画を与えてくれて ありがとうございます…


映画大好きポンポさん the Omnibus / 杉谷庄吾【人間プラモ】(KADOKAWA)

フランちゃん、カーナちゃんはそれぞれ1冊ずつ外伝として刊行されてきたけど、今回はポンポさんの祖父にして、伝説のプロデューサー・ペーターゼンさんのお話がメインのオムニバス。ドイツに生まれ、チニャチッタ(チネチッタ)での生活を経て、ニャリウッド(ハリウッド)進出&独立。名優・マーティンや天才・ロッシオとの出会いとポンポさんの誕生。最終的に成功して伝説になるまでをわかっていてもガッツリ最後まで面白かった。映画に限ったことじゃないけど「物語」が時間を超越していく流れってとても素敵だし、そこが最大の特徴だなと思う。

そうして描いた私たちの物語は 映画という名の船となって 時の海を渡り未来へと紡がれていくんだわ…


Dr.STONE 21巻 /  稲垣理一郎・Boichi(集英社)

南米奥地、石化始まりの地に辿り着いた千空一行。さらに石化装置の再起動に必要なダイヤモンドを手に入れるべく石の聖地(ストーン・サンクチュアリ)ブラジル・アラシャへと向かう!
VSスタンリー編も佳境って感じかな。正直、想像し得る物語のゴールが壮大すぎて今やってることがすごいちっぽけなことのように感じてしまう。(つまらないとかでは決してないし、そういう地道な積み重ねの話ではあるんだけど)ここからどうなって行くんや…


ウィッチウォッチ 1巻 / 篠原健太(集英社)

『スケット・ダンス』『彼方のアストラ』の篠原先生待望の新作は魔女×使い魔(鬼)のドタバタラブコメ。相変わらず小気味良いノリでめちゃくちゃ笑ったし、ヒロインのニコを始め、キャラクターも魅力的で可愛いくて面白い。ただ、不意にシリアスが飛んできそうでまだちょっと身構えながら読んでる自分もいる。


怪獣18号 3巻 / 松本直也(集英社)

謎の人型怪獣と対峙するカフカは怪獣に変身して何とか難を逃れるも、その前に姿を表したのは保科副隊長。細目キャラは強いに決まっているからここからの保科の活躍が楽しみ。ただ最高の見せ場を作った後、怪獣に吸収されそうなフラグが立ったような、立ってないような…


SAKAMOTO DAYS 2巻 / 鈴木祐斗(集英社)

ジェットコースター、お化け屋敷と遊園地内で殺し屋に襲われる坂本さんたち。例の如く余裕で撃退するも家族に懸賞金のことがバレてしまい、自らの懸賞金を取り下げてもらう為に動き出す。面白いけど、展開的に懸賞金掛けられたからって取り下げてもらいに行くってなる普通?笑


ふらいんぐうぃっち 10巻 / 石塚千尋(講談社)

青森からお送りするのんびり魔女修行物語ももう10巻目。横浜に帰省した真琴は、久しぶりに会う親友たちとこっちでの初魔女依頼をこなしたり、観光したり。どれだけ時間が空いても変わらず旧友と接せられるって良いなーと読んでて思ってしまった。あと依頼の内容がめちゃくちゃ可愛くて癒し。今回は横浜色が強かったけど、読んでいてどんどん東北行きたい気持ちが募る漫画です。

杏子ちゃんの大活躍に1万ポインツ!! ゲームセット!!  優勝 杏子ちゃん!!


思えば遠くにオブスクラ 上巻 / 靴下ぬぎ子(秋田書店)

家が全焼したカメラマンがベルリンに移住する話。またしてもベルリンか!と思ったけど、主人公が卑屈で内向的で好きなテイストの作品だった。前?作『ソワレ学級』も好きだったからこの感じは間違いじゃない。翌月すぐに下巻も出るのとのことで楽しみ。エッセイではないけど、グルメ漫画の色は結構強くて、ドイツに行って浴びるようにビールを飲みたい欲がさらに高まった。あと、こういうヨーロッパ移住漫画を読む度に思ってるけど、ヨーロッパといえば「自転車」でしょ!自転車好きが高じてヨーロッパに移住しちゃった人のエッセイ漫画とかあったら読みたい。…自分で描くしかないか。


かいじゅう色の島 1巻 / はっとりみつる(KADOKAWA)

『さんかれあ』『綺麗にしてもらえますか。』のはっとりみつる先生の新作。
離島で暮らす女子中学生、千川棔(ちがわ こん)。都会から来た、一門歩流夏(ひとと ふるか)。海で溺れてしまった歩流夏を助けた棔。目を覚ました二人はなぜか“かいじゅうさんの穴”と呼ばれる島の洞窟の前で倒れていた。二人の出会いから、島では不思議な事が起こり始める。
結構がっつり百合だった。季刊連載とのことで次巻はしばらく先かな。


RAIDEN-18 / 荒川弘(小学館)

月刊サンデーGXにて15年間に渡って不定期連載されてきた荒川先生の作品が遂に単行本化。マッドサイエンティスト・タチバナ博士と彼女の手によって色んな死体をつなぎ合わせて誕生した怪物・雷電18号のアナーキーコメディ。毛沢東とかサッチャーとか出てきて各方面に怒られそうな部分もちょっとあった(一部の中国人はキレているらしい)けど、久しぶりに荒川弘成分を摂取できて大変満足でした。因みにハガレンが完結してもう11年経ちます。


ブランチライン 2巻 / 池辺葵(祥伝社)

自分を生きる女性たちの物語。特にフォーカスされているからってのもあるけど、仁依の生き様が本当に強く突き刺さる。過去の激しい感情が穏やかに凪いで今の自分の基盤になる。あんな風に生きたいなと思う。

思い出とかはな 忘れちゃっててあまり思い出したりはしないんだけど
言葉はずっとしみついてな
いっぱい元気をくれる


どぶがわ / 池辺葵(秋田書店)

6月は池辺葵先生の作品の中で未読のものを意識的に読んだ。これはその1。
ドブ川のほとりのベンチで日がな一日うたた寝をする老婆が夢見る世界は中世の豪邸。そこでは彼女はお嬢様で、姉妹たちと華やかで幸せな毎日を過ごしている。そんな彼女と現実で直接関わることはなくてもすぐ隣を通りすぎていく人々の些細な日常を描いた作品。名前も素性も知らない赤の他人と心のどこかで交わる瞬間って人生で少なからずあって、そういうのってなんか、良いよなぁ、と思った。


かごめかごめ / 池辺葵(秋田書店)

その2。修道女たちの祈りの物語。静かな雰囲気の中にある登場人物たちの確かな感情がフルカラーで鮮やかに描かれいた。多くを語らないからこそ、滲み出てくる味があって、全体的に短編作品としての完成度が高かった(気がする)。値段が高かっただけはある。今まで池辺先生の短編だと『雑草たちよ大志を抱け』が一番好きだったけど、それと並ぶくらい好きかもしれない。池辺葵先生の真髄を見た。


私にできるすべてのこと / 池辺葵(文藝春秋)

その3。池辺先生初のSF。正確にはSFと呼べるかちょっと微妙だけど、ヒト型AIが大量生産・大量廃棄されている世界を舞台にした記録の物語。元監視カメラのヒト型AIの少女の目には、生命体たちは皆キラキラと光っているように見えるという。ただ今を生きているだけで。


繕い裁つ人 1〜6巻 / 池辺葵(講談社)

その4。服に命を宿す人。祖母の志を受け継いで、その人だけの服、一生添い遂げられる洋服を作り続ける。そんな南洋裁店の店主・市江と、彼女の服を愛してやまない百貨店企画部の藤井。微妙な距離感を保ちながら関わる二人と、服にまつわる人々の思いを描き出す、優しい優しい物語。池辺先生の原点を見た。


サウダーデ 1〜2巻 / 池辺葵(講談社)

その5。喫茶店サウダーデ。そこで働く3人の女性とその周辺をゆるやかに描いている。大きな事件は起こらないけれど、商店街の日常には小さなドラマがあるし、3人の物語はそれぞれゆったりとしたペースで進んでいく。そのテンポがとても心地良い作品だった。 自分の信念を曲げない頑固でちょっと変わり者の主人公が、一途に一人の人を想い待ち続ける描写が好き。


二匹目の金魚 / panpanya(白泉社)

『かくれんぼの心得』という話が面白かった。最後にかくれんぼをしたのはいつだろう。大人になってからあまり人生の役に立たないくだらない習い事とかをしてみるのもいいなーと思った。


少年のアビス 5巻 / 峰浪りょう(集英社)

吐き気を催す深淵は巻を重ねる毎にぐちゃぐちゃに煮詰まってきている。ド派手に仕掛ける柴ちゃん先生と静かに外堀を埋める母親。柴ちゃん先生は良くも悪くも他人だから(その一線すら越えて来ようとはしているけど)どこかフィクションとして笑えて読めるシーンもあるけど、母親(を始め身内)が狂ってるのが救いがなくて個人的にはしんどい。最終的には登場人物全員死んでほしい。

ラ〜ララ〜 ラ〜ララ〜


シャドークロス 2巻 / スガワラエスコ(集英社)

ダンスに深くハマっていく冬実の姿を「下品」と一蹴するブレイクダンス畑の少女・黄蜂りんは冬実に忍のパートナー権を賭けて勝負を挑んできた。観客にとって最高のダンスをするりんとパートナーにとって最高のダンスをする冬実。初めてのダンスバトルを経験し、さらに一皮向けた冬実は商店街ダンスチームでの特訓を重ねて、いよいよ初めての大会に臨む。


阪急タイムマシン / 切畑水葉(KADOKAWA)

新しい職場に馴染めないコミュ障の野中さんは通勤中、幼なじみのサトウさんと再会する。幼い頃の些細なことですれ違ってしまった二人の思いが阪急電車の車内で少しだけ時を超える?
電車に乗ってゆっくりする時間が好き。旅行先のローカル線とかもちょっと気にしがち。作中でも触れられてるけど、阪急電車って本当にデザインが美しくて行き先も決めずに乗りたくなる魅力がある。ただ座席の配置的に輪行がしにくい。


塩田先生と雨井ちゃん 4巻 / なかとかくみこ(イースト・プレス)

周りに内緒でお付き合いをしている塩田先生と雨井ちゃんのさわやか日常ラブコメの約2年ぶりの新刊。相変わらず見るからに分厚くて、超ボリュームで大満足。体育祭編も良かったけど、雨井ちゃんが服部先生のところへ浮気(?)しに行く回が好き。「教師×生徒」というカテゴリではあるけど、全く生々しくはないし、とにかく雨井ちゃんが積極的で色んな表情をしていて面白い。おすすめです。

かわいそうに オレなんか好きになって


束の間の一花 2巻 / タダノなつ(講談社)

弟の大樹に自分の病気のことをバラされてしまった一花。それでも想いを止められない一花と絆されるように次第に心を開いていく萬木先生。個人的に「姉を想う弟」というキャラクターがツボで大樹が存在が一花と先生の関係の良いアクセントになっている。まぁありきたりと言えばそこまでなんだけど。死が約束された二人の束の間の物語、次巻完結。

なんなんだ人生! なんにもしなきゃいいのか!?


メダリスト 3巻 / つるまいかだ(講談社)

西日本大会in京都開幕。西の強豪たちが集うリンクで、スケート靴を電車に忘れるというアクシデントがありつつも、完璧な演技を見せたいのり。自分の状況をちゃんと見つめて今できる最善を尽くし、成長していく。凄いよいのりさん。
そして時は少し流れ、ライバル(?)の理凰(クソガキ)が同じスケートクラブに所属することに。弟子が師匠の強さを証明する燃える展開になりそうで超熱い。今一番熱い漫画。

私はそれを諦める理由に絶対にしない


チ。-地球の運動について- 第4集 / 魚豊(小学館)

ピャスト伯から研究を託されたバデーニは遂に地動説の完成に漕ぎ着ける。一方のオクジーはこの地動説を巡る体験を物語として自分の言葉で書き記そうと試みる。確かに前進する二人の元へ、この時代抗いようのない絶望が静かに立ちはだかる。
世界を変える為のチ。世界を変えない為のチ。一文字のタイトルが多くの意味をはらんでいてゾワッとした。ページを捲る度に鳥肌が立ちっぱなしだったし、次巻も絶対盛り上がる。今一番熱い漫画。

今、たった今、この瞬間にも、我々は、動いている。


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