水蒸気

何歳からサンタが来てないか覚えてない。けど、今回はきた。どーやって応募したか覚えてないユニバのチケット。当選というのにかけ離れた自分に青天の霹靂。

大阪へ行くんだ。
遊びか遊びじゃないかで起動時間がきまる。午前6時。今日は遊びじゃない。本気だ。この先の行動は全部これによって選択される。
 
午前10時半。ここが大阪。これがグリコ。あれが君の好きな、かに道楽。朝早くおにぎりを食べた。お腹が2人とも痛くなった。1時間半の滞在。

自分最大の歓喜が来る。太陽の塔に行ける。すんごいんだこれは。本当にすごいんだ。
太陽の塔の第3の顔の前でストリートパフォーマンスをしてたな。めちゃくちゃうらやましい。足を止めてその瞬間を居たかったけど、時間がなかった。9年ぶり、天下のユニバが待っている。

ウォーターワールドって知ってますか?ショーみたいなやつなんだけど、いっぱい水かかるやつ。一番前に座ってたらエキストラの人に水鉄砲で水をかける役目を任された。
『お名前は?』、『あ、深見です。』、『よし、深見。さっきの女の子の借りを返そう。』僕の前に女の子が水をかけられていた。
その女の子に向けて僕は少し小さい声で、
『まかせて、』と言う。自分で思う。気持ち悪い。エキストラの人につっこまれる。『小さい声で任せてってなんや笑』って。
でも僕は気合い十分だ。
『発射!!!!』
ゔぉーーんあぉん、あれ、自分のやつ水がでてないぞ。と、思ったのと同時に前後から勢いよく水が飛んでくる。裏切りだ。エキストラの人が僕目掛けて大量の水鉄砲を放ってきた。
一月の夜の野外のずぶ濡れ。夜の川に飛び込んだのを思い出した。
数千人の前で醜態と名前を晒したわけだ。
『深見、ありがとう。』と言われ、右手を上に上げられた。寒さなんて忘れて僕は少し図に乗って左手も突き上げた。数千人の拍手が降ってくる。醜態と名前を晒したんだ。あーあ、奥底の目立ちたがり屋が表舞台に上がった。
そのあと何回もエキストラの人は、『深見、大丈夫か?』って心配してくれるんだ。好きだ。

びしょ濡れを乾かす手段。
フライングダイナソー、ハリドリ。貸切イベントだったので待ち時間なしで乗れる。急に、『深見さん?』って声をかけられた。じっくり顔を見た。こんな人知らない。考えた。さっき僕は名前を晒したんだ。醜態と一緒に。ちなみなんだけど乾くわけがない。
女の子5人に話しかけようって決めて入園した僕たちは終始ふたりの世界。大好きでちょっと嫌いな今がある。タイムリミットの午後10時。

帰り道に差し掛かる。表示がガソリンがなくったことを示す。近くにガソスタがない。隣であいつは焦っている。僕は思っているより走ることを知っている。だけど教えない。

一本の煙草を『もういいよ。』って半分残して渡す。あいつはギリギリのギリまで吸う。今日もそんなジリ貧旅。僕たちは少しの煙と嘘を吐く。

道中、急に出てくるひとや、テキトウな車や建物で大阪は嫌いだって、あいつが言った。僕も少しだけ思った。

だけど、僕たちは大阪loverで急上昇と急降下を繰り返した。ノリノリで歌いながら。
お互い吐いた煙が車内に溜まる。その煙が僕たちが思ってる、大阪は楽しいを表現してる。

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