陰謀論,科学者,おまえら

 意識低めの院生たちの仮想院生室として立ち上げたリミナルというコミュニティで雑誌を作り,その中で「人間は皆,陰謀論者で,陰謀論こそが過去と未来の架け橋だ」という趣旨の文章を投稿しました.

 その文章では少し自虐的な下げ感で終わりたかったので,科学の末席を汚す自分の研究も陰謀論でしかないかもしれないといったことを書いたのですが,今回はもうすこしちゃんと,科学者と陰謀論者のマインドの共通部分を探ってみたいと思います.

 さて,やってみましょう.これを読まれる皆さんはまぁ,科学者でも陰謀論者でもないと,そういうことにしましょう.でもTwitterのタイムラインなんかでコロナワクチンの陰謀を告発する投稿を目にすることはあったのではないでしょうか.でもあなたはそれを信じなかったはず.それは,あなたに新型ワクチンの安全性についてのエビデンスを見極めることができたからでしょうか?いやそうではなく,その投稿者がどこの誰だかわからないやつだったから,あるいはそのような投稿だけではなく医療の専門家の投稿も目にすることがあった,というのが大きいのでないでしょうか?もしくは,専門家が制作したものであるのだから,そもそも危険性を疑いの余地もないと思っていたというのもあるのではないでしょうか.とはいえ,陰謀を告発する投稿やそれを否定する投稿の投稿者のプロフィールを見に行ったことはあるでしょう.

 だとすれば,その態度とは専門家の証言をもとに真理を判断しているといえるでしょう.証言をベースにして,その証言者の在り方を重視していると.それでおかしな判断をしていなく生きていけてるので悪くないと思います.でも.そのような態度は陰謀論者からするとまさに「自分の頭で考える」ことができていないことを意味するでしょう.

 では科学者はどうか?専門家の証言をもって何かを真実だとは確信しません.科学者は,これまでの専門家が示してきた仮説を疑ったり,それを客観的に検証しようとエビデンスと呼ばれる物証を求めるのです.証言や証言者ではなく,物証が大事なのです.そしてこの物証を集めたり,制作する過程に創意工夫が必要となるのですが,その物証に従って判断をします.

 そして陰謀論者も誰かの証言に頼ることもありますが,専門家の証言などは当てにしていません.物証をあらゆるところから探し出し,クリエイティブに制作し,読み解くには多大な苦労を要する物証をこれでもかと重ねます.(その理論の矛盾に気づくたびに,それを説明するロジックと物証が必要となって,結果的に膨大な物証を有する理論になってしまい,初見の人が「こんなに証拠があるなら!」となっているだけの可能性は多いにありますが).

 ともかく,誰かの証言,特に専門家の考えたことを信用しないという意味では科学者と陰謀論者は同じなのです.飽きたのでここまで


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