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農業メタバースの可能性と課題 - 農業経営シミュレーションゲームと穴太城VR空間の事例から探る

メタバースはじわじわと一般利用できる環境が整っています。
そんなメタバースは農業分野でも様々な取り組みが始まっており、その可能性と課題について考えてみたいと思います。今回は、農業メタバースに関する2つのニュースリリースを取り上げ、それぞれの特徴や良し悪しを紹介していきます。


1. comotto Farm TYCOON - フォートナイトでの農業体験ゲーム

まず1つ目は、docomoが提供する「comotto Farm TYCOON」というフォートナイトでの農業メタバース体験ゲームです。このゲームのコンセプトは、子供たちがフォートナイトというメタバースプラットフォームで遊びながら農業を学べるというものです。

ゲームの内容と特徴

  • 農作物(とうもろこしなど)を育てながら、農業関連のクイズを解いてコインを貯める

  • 貯めたコインを使って農場を発展させたり、レストランや家を建てたりできる

  • フォートナイトの空間上で農業を軸にした経営シミュレーションが楽しめる

成功要因と課題

  • リリース1ヶ月で、プレイ回数は6〜7千回程度で、若い世代へのアプローチとしては成功事例と言える

  • YouTuberとのコラボ(ぜるふぃーさん)で認知度向上を図っている

  • 遊びながら農業教育ができる点で、メタバースの使い方として相性が良い

2. 穴太城VR空間 - 葬儀会社が手掛ける農業メタバース

次に紹介するのは、葬儀会社である株式会社穴太ホールディングスが手掛ける「穴太城VR空間」です。この取り組みは、葬儀業と農業という一見結びつかない分野を組み合わせた異色の農業メタバースです。

葬儀業×農業の取り組み

儀事業において売上高の減少という難題に直面。そこで、独自のビジネス改革に乗り出した。それが農業であり、お米の生産・販売に着目した。
2013年からお米の生産・販売を開始した。自社で製造した霊柩車や祭壇などの備品を積んで北海道へ行き、その地でお米を収穫し持ち帰るという往復輸送を実施した。これにより、輸送コストを節約し、お米の鮮度を保つことが可能となった。また、著者は自社でお米の品質検査を実施し、農協や市場を介さずに消費者や小売店へ直接販売した。これにより、価格や流通を自身でコントロールすることが可能となった。
※書籍「葬儀会社が農業を始めたら、サステナブルな新しいビジネスモデルができた」より

穴太城VR空間の概要

  • グループ会社8社のギャラリーや社員コメントが見られるエリア

  • 農場のリアルな風景を歩き回りながら体感できる実写パノラマコンテンツ

  • 生産者インタビュー動画の視聴や直営店舗での買い物体験ができる

課題と改善点

一方で、VRでコンテンツを提供するにあたり課題はいくつか存在する。

  • ユーザーが能動的にVR上で農業体験できる要素がない

  • 実写パノラマコンテンツだけでは、VRの特性を活かしきれていない

  • グループ企業の紹介が主目的になっており、ユーザーにとっての魅力や価値が明確でない

  • VR空間としての完成度や、農業体験としての教育的な要素が弱い

農業メタバースが真に価値を発揮するために

農業にメタバースを掛け合わせるにおいては、次のような点が重要です。

  • 農業の魅力や課題を体感できるリアルな内容

  • エンターテイメント性と教育効果のバランス

  • ユーザー視点に立った楽しく役立つ空間設計

  • 従来の農業とメタバースのシナジー効果

著書「農業メタバース革命」で詳しく解説していますので、併せてお読みいただけると嬉しいです。

まとめ

農業メタバースの可能性と課題について、2つの事例を通じて考察してきました。農業メタバースは、まだ発展途上の分野であり、試行錯誤が続いています。穴太城VR空間の事例からは、単にVR空間を作るだけでは不十分で、ユーザーにとっての価値や体験の質を追求することが重要だと分かりました。
一方、comot Farm TYCOONは、ゲーム性と教育要素を組み合わせ、人気プラットフォームと連携することで、一定の成果を上げています。この事例は、農業メタバースの可能性を示唆するものだと言えるでしょう。
今後、農業メタバースが普及するためには、エンタメ性、ゲーム性、ユーザー体験、プラットフォームとの連携など、様々な要素を考慮し、一般ユーザーに受け入れられる形で設計していく必要があります。そのためには、comot Farm TYCOONのような成功事例を参考にしつつ、穴太城VR空間の失敗から学ぶことも重要です。
農業メタバースはまだ発展の余地が大きい分野です。今回紹介した事例の良し悪しを踏まえ、より多くの人々に農業の魅力を伝え、楽しんでもらえるような取り組みが進んでいくことを期待したいと思います。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。

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