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GPT4に推論は可能なのか?トッピロキーを理解できるか?『言語の本質』(今井むつみ・秋田喜美著 中公新書)を読んで

めちゃくちゃ仕事が忙しくてプログラムの勉強もGPTもいじってなかったです。さて、最近このような本が出ました

簡単に言うと、子どもがどうやって母国語を身に着けるのかを「オノマトペ」と「アブダクション推論」で学ぶ人間特有なのではという帯そのままの本である

さて、この本の面白い所は前半のオノマトペが子どもの言語獲得に非常に重要であること(かいつまむとジェスチャーという身体性の言語から、音や仕草という身体性で切り取ってるものの、一種の言語(アイコン)として活用されるオノマトペ、そしてオノマトペでは表せない抽象的な言語と移動する)。
このオノマトペについてはのちに触れるとして、一程度の語彙を得るものの、創造的な言葉や抽象的な言葉をどのように獲得するのか

アブダクション推論とはなんぞや

ここから難しくなっていく。アメリカの哲学者のウィラード・ヴァン・オーマン・クワインが提唱した「ガヴァガーイ問題」があるそうだ。

全く知らない言語を話す原住民が野原をはねていく兎の方を指して
「ガヴァガーイ」と叫んだ。(中略)私たちは直感的には当然<ウサギ>だと思う。しかし原住民は、<野原をかける小動物>を指して「ガヴァガーイ」と言ったのかもしれない。<白いふわふわした毛におおわれた動物>かもしれないし<白い毛>なのかもしれない。あるいは<ウサギの肉>という意味だったのかもしれない。クワインは、一つの指示対象から一般化できる可能性はほぼ無限にあると指摘したのである

言語の本質よりP109.110

このことは「お世話になってます」の記事で実感している。本当に理解してるのかと。

さて、本書でもGPT4が流暢に翻訳してるのを褒めてはいるが、子どもが複雑な構造をもつ言語の体系を登る(概念を獲得する)手立てを著者は「ブートストラッピング・サイクル」という物を提唱している。

かいつまんで言うと、既存の知識を推論によって知識を更新する<自らの力で、自身をよりよくする>サイクルで、これによって知識から新たな知識を生み成長させるということらしい。これは司書が無双するという記事の「わらしべ長者法」とすごく酷似する

つまり、GPT4が推論ができるのであれば言語を得たと考えられなくはないし、GPT4が新たな知識を生みだすという「シンギュラリティ」の焦点になるのではないだろうか?

じゃあ推論って何よ

本の中で最初に挙げられているのが「周りの情報の統計的分布を抽出する能力である」と述べている。

うん。GPT4すでに超えてるねwww


このアブダクション推論は哲学者チャールズ・サンダース・パースが提唱しており、演繹・帰納推論とは別に「アブダクション(仮説形成推論)」を提唱している。かいつまんで言うと「物を支えないと落ちる」は「握ったリンゴを離す」(事例)→「リンゴは下に落ちる」(結果)→「だから物を支えないと落ちる」(帰納)が、帰納法で「重力」という新しい言葉(概念)を生み出せない。

支えられていないものは落下する(規則)→どんなものでも下に落ちる(結果)→どんなものでも落ちるのは「重力(物を引っ張る力)」があるからだ。

このようなものらしい。(詳しくは本書に参考文献が挙げられているので読んでほしい)では言語獲得に必要な仮説形成推論はどんなものか

・対称性推論(「★は青を示す」ということから★→青と青→★と推論すること)
・相互排他性推論(コップという言葉を知っていて「ハニーディッパー」という言葉を知らない子供でも、コップとハニーディッパーが目の前にある状況で「ハニーディッパーを取って」といったら躊躇せずハニーディッパーを取れるという推論が出来ること)

ということらしい。

じゃあ、GPT4にやらせましょ

対称性とアブダクション推論はどうかな?

おおおお、普通に答えてますね

普通の論理学はどうかな?

意外とちゃんと答えてる

相互排他性推論はどうかな?

トッピロキー
流石にここまでは調べられなかったか。
(大江戸は漫画の日常の「スカチャラOL旅日記」からもじってみた)

ダメ出しで、オノマトペの理解と応用問題解かせてみた

やっぱりだめだったか。

このことからわかるのは、推論を使って知識をアップデートさせてるわけではない(学習データが一種の固定された記憶や知識の代わりになる。だからAI画像生成の汚染やモデルの崩壊があると思われる)・正確性を求めるがゆえに推論を働かせていないのかさせてないのかわからないが、推論を意図的に使ってないのは間違いなさそう。

ということが言えそうだ。

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