田舎の一匹狼セラピストが考える「中枢疾患に対するストレッチ再考」
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田舎の一匹狼セラピストが考える「中枢疾患に対するストレッチ再考」

本日も臨床BATONにお越し頂きありがとうございます。
113日目を担当させて頂くのは、子供の風邪をおそらくもらってしまい、ものすごく長引いてしまっている自分の「老い」を現在進行形で実感しているやや自己嫌悪気味のPT貴田農士です。

今回は「中枢疾患に対するストレッチ再考」というテーマで書かせて頂きます。
ちなみに中枢疾患に対する・・・とは書きましたが、間違いなく運動器や整形系にも転用可能な内容になっていると思いますので、そのような方々も少し目を通していただけると幸いです。

また、以下は今回使用する全ての図やイラストとなっています。読み進めるご参考にしていただければと思います。

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はじめに

始めにいっておきますが、私は関節可動域制限に対するストレッチを対象者に施行するのはあまり好きではないです。
(セルフでして頂くのであれば話は別ですが・・・)

なぜならば、中枢疾患において、関節可動域制限は陽性兆候ではないからです。
(脳卒中の主症状に関節可動域制限ってありますか?運動麻痺、感覚障害、反射亢進、筋緊張異常、覚醒障害、高次脳機能障害などはありますが・・・)
(それに急性期から脳卒中が原因での関節可動域制限がある方はほとんどいませんよね?)

そうです。関節可動域制限は、二次的な症状です。
整形疾患においても、術後の固定や安静、防御性収縮などにより起こりうるものだと思いますが、早期のリハビリ介入やセルフマネジメントなどで予防が可能であることも多いと思います。


そして、治療介入は基本的には原因介入です。

一次的な障害に対する介入、機能予後が悪いものへはコミットして関わることや脳浮腫や遠隔機能障害(機能乖離)などの比較的予後良好な機能に関しては、「悪くしない」、「タイムリカバリーの邪魔をしない」、「神経や筋レベルでの廃用を起こさせない」などの先を見据えた介入などを重点的に関わっていきたいので、二次的に起こった関節可動域制限に対するストレッチに一ミリも時間を掛けたくないのが私の心情ではあります。

そもそも関節可動域制限を作らない努力を心掛けたいと思っています。

ただ関節可動域制限に対するストレッチが好きではない私ですが、アンチはしっかりそこの知識や技術を身に付けて批判しようというのが私のルールですので、今回はあえてストレッチについて投稿させていただきます。

また、どうしても今現在働いている老健の様な生活期では、いやがおうにも関節可動域制限と向き合うことが多いので、今の自分の経験を整理するということも踏まえてここにまとめさせて頂きました。その中で関節可動域制限に対してだけで無く、「ストレッチ」という手技の様々な可能性(メリット、デメリット含め)に関しても深掘りできればと思っています。

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まずは一般的な情報、ストレッチのエビデンスなど

このリハビリ業界で関節可動域、ストレッチといえば、市橋則明先生や鈴木重行先生、沖田実先生などが有名だと思います。

市橋則明先生は「ストレッチングのエビデンス」としてググって頂ければ誰でもすぐ読める論文があります。

まずは私が昨年の栃木県理学療法学会の基調講演で市橋先生からお聞きした内容を簡単に要約し私なりにも解釈したものをお伝えさせていただければと思います。

・ストレッチ直後は筋力が落ちるレビューが多い
・時間の研究では45秒以内なら落ちないけど、90秒では落ちる
・その時間が長ければ長いほど落ちる傾向にある
・ストレッチ後はジャンプ力などのパフォーマンスは圧倒的に落ちる
・上記は静的ストレッチ(スタティックストレッチ)の研究による見解

つまり、静的ストレッチは長くやればやるほど抑制手技としての効果はあるのかなという事になります。

次に、動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)に関しては、

・60秒から90秒実施にて筋力もパフォーマンスも上がる

とされており、今はスポーツの業界での準備運動は動的ストレッチが主流だと思います。
つまり、動的ストレッチは促通手技といえるかもしれません。

しかし上記は全てストレッチ直後(短期的、即時的効果)の話です。

余談ですが、遅発性筋痛、いわゆる筋肉痛に効果があるかというのも研究されており、筋痛は減るけど臨床的意味のある変化量(MCID)には満たないとのことでした。
(最近の論文では筋肉痛にマッサージは効果を証明されているらしいです)

長期的ストレッチ効果としては、

・ジャンプ力は上がるとか筋力は変わらないなどあり
・つまり、即時的には効果的ではないが、長期では悪くはならない可能性
・最大筋力を出すところが変わる。ピーク角度が変化する

柔軟性に関しては、

・即時的効果はあることが多く証明されてはいる
・ストレッチの持続時間は最低2分ぐらいと言われており、2分と4分は変わらない
・効果を更に出すなら5分以上が良い
・筋によって時間は違うため、腓腹筋は2分もハムストリングスは3分など筋肉の大きさや本数により柔軟性の効果を出すための時間は違う
・それ踏まえると上肢の筋肉は小さいから2分以下でも良いかも
・効果の持続時間は1時間経つと戻る(持続効果5分~30分で徐々に減っていくともいわれている)


つまり、元に戻るから、中、長期的に継続していかなければいけない。
いわゆる量(回数、頻度)と強度(伸張力と持続時間など)をデザインしないといけないわけです。
臨床的には場所、時間、期間をしっかり考えてやらないと効果的ではないということになります。
(柔軟性、つまり関節可動域を上げるためのストレッチとしての介入をリハビリの時間だけで行うことで本当に十分なのですかね?効果あるのですかね・・・ということです)

ということで、これまでをざっくりまとめると

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以上、方法論などをエビデンスで掘り下げてもやはり、即時的な対症療法という観点が拭えません。そのため、身体図式を広げるための運動学習や自主ストレッチなどのセルフマネジメントは間違いなく必要になってきます。


そして、これらを基本的な情報として踏まえた中で、今回の投稿のポイントは、
・その関節可動域制限は筋の短縮なの?それとも筋緊張なの?
・相対的柔軟性や抵抗感として関節可動域制限をとらえる(ストレッチ手技自体の解像度を上げる)
・脳に影響を与えるためのストレッチの方法とは?

です。最後まで付き合っていただけると幸いです。
また、便宜上、柔軟性低下=関節可動域制限=短縮と読み替えて頂けると助かります。
(あいかわらず前置きが長いわ・・・)

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