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「あけたて」の調味料は、とんでもなくうまい

魚介、野菜、お米……。料理は新鮮な方がうまい、なんてことは美味しんぼを読んでなくても知っている。でも、調味料に関して、新鮮さを気にしたことはあるだろうか?

新鮮な調味料はうまい。意識して口にしてみると、そこには「あけたて」にしかない感動があったので、ちょっと話を聞いてほしい。


君はまだ「タバスコ」を食べたことがない

最後にタバスコを口にしたのは、いつだろうか。何にかけて食べただろう。ピザか、パスタか、おそらく多くの人はファミレスで食べたはずだ。

そのときに使ったタバスコの姿をよーく思い出してみてほしい。

近いうちになくなるかもしれない、ファミレスの調味料コーナー。

ほぼ間違いなく、カピカピになっていたと思う。

私自身も、八割以上残っている瓶を見たことがない。「乾いていないファミレスのタバスコ」。おそらくこの世にほぼ存在しないもののひとつだと思う。牛肉の部位でいえば、イチボくらいの希少さだ。

そしてもう一度考えてみてほしい。「新品のタバスコを口にしたことがある」という人は、ほとんどいないはずだ。

「タバスコ」はブランド名で、正確には「ペパーソース」というらしい。

ということで、新品を買ってきた。400円弱。意外と高い。自宅でピザを食べる頻度を考えると、常備しようとは思わない金額だ。

開封してまず感じるのが、香りの強さだ。鼻を近づけるまでもなく、酸味のある香りが周囲に漂う。タバスコが「ここにいるよ」と強烈に主張してくる。青山テルマ以来の逸材。乾いたタバスコでは、こんなことは起きなかった。


遠慮なくドバドバかける。自宅だからこその蛮行。
辛すぎて歌舞伎役者みたいな顔になった。いよっ!丹波須子屋!

一口食べると、辛さとうまさでガッと目が開いた。目を大きくしたければ、アイプチよりタバスコを目薬にした方が効果があるかもしれない。もちろん責任は持てません。

なんというか「液」を感じる。ただ辛さやすっぱさが強くなっただけではない。液だ。染みる。身体が熱くなる。

味が全然違うので、いつもの感じでかけると痛い目をみる。毛穴が痛い。体温が0.5℃あがり、汗が出る。特に頭と顔の毛穴が開いている実感がある。タバスコを食べた後にパックとかしたら、化粧水をぐんぐん吸い込むかもしれない。

乾いたタバスコだとハチワレ(左)くらいかけないと辛く感じないが、あけたてのだと茶トラ(右)くらいで十分辛い。
感想メモには「ファミレスと同じ量かけると痛い目をみる」と書いていた。痛い目をみました。

ポイントをつけるとすれば、5段階評価で『5』で間違いない。これは本当にみんなにも試してみてほしい。タバスコ、すごいぞ。

感動ポイント:★★★★★

他の調味料にも可能性があるかもしれない

普段意識していないだけで、タバスコの他にも「あけたて」の感動を味わえる調味料があるかもしれない。まだ見ぬ出会いを信じて、他にも何種類か買ってきた。そのうち3種類+αの結果を報告しよう。

■一味唐からし

七味よりも一味派。ウィルキンソンよりカナダドライ派。

感動ポイント:★★★☆☆

そういえば、一味も「あけたて」の味の違いに感動した記憶があった。タバスコほど香りが強いわけではないけれど、鼻を近づけて意識すれば確実にわかる。華やかな香りがする。

よく見るとパッケージにも「ひきたつ香り」と書かれていた。もちろん辛さもしっかり主張してくる。舌にしっかり辛さの粒が乗っている感触がある。

自分の行くような蕎麦屋では、香りも辛さも飛びきった乾いた一味しか置いていなかったので、料理を赤くするための調味料だと思ってかけていたが、実は香りの調味料だった。

これまで「色味のない料理でも一味をかければカラフルになるぜ!」という運用をしてきたが、考え直す必要がある。蕎麦や牛丼の彩り要員ではなかったのだ。

ちょうど肉じゃがをつくったので食べ比べ。

身内にも嗅ぎ比べてもらったが、どちらが「あけたて」かを伝えていないのに「こっちの方が香りが強い」とすぐに当てていた。

口の中に入れた後もその差は明確だ。辛さはさほど変わらないが、香りが明らかに違う。わざわざ高いものを買わなくても「あけたて」なら、それくらいの違いはある。使い古しの高級品と「あけたて」の定番商品なら、間違いなく定番商品に軍配があがる。

自分が山岡士郎だったら「一味はあけたてに限る」なんてワガママを言って、家に開封済みの瓶が大量に溜まっていくところだ。

■ラー油

辛い調味料といえば、という共通点で買ってきた。

感動ポイント:★☆☆☆☆☆

タバスコや一味に似たジャンルのものなので、期待していたのだけれど、正直まったく違いはない。勝手に期待して勝手に失望した。迷惑なファンのようなことをしてしまった。

一味と同じく、肉じゃがにかけて食べてみたが、使い古しも新品も、どちらも同じくらい辛い。香りに違いはほとんどなかった。油は酸化するはずなのだが、プッシュ式のボトルなので、あまり空気に触れていないのかもしれない。

■醤油

120日以内に使い切れた試しがない。

感動レベル:★★☆☆☆

醤油に関しては、メーカーが明確に「鮮度」を意識して売り出している。商品名からして「あけたて」ならぬ「しぼりたて」だ。

醤油といえば子供のころは醤油差しが食卓に置いてあって、赤い容器がベタベタになっていたのを覚えている。風味も何もあったもんじゃなかったが、そのころと比べると、醤油の味はずいぶん変わった。テレビ番組のコンプライアンスくらい、昭和と令和で基準が違う。

ボトルに「香り立つ」と書いてある通り、これも「あけたて」は香りが強い。


たまごかけごはんで食べ比べ。究極ではない、普通のたまごかけごはん。

「あけたて」の醤油は、ふわっとふくよかな香りがあって、かなり味が鮮やかだ。醤油の味が濃く感じる。

ただ、鮮度キープのボトルが優秀すぎるのか、一ヶ月ほど前に開封したものにも香りがちゃんと残っていた。「あけたて」だからこその感動はあまりない。ずっとおいしい。企業努力に完敗だ。

キッコーマンはすごい。開封して半年くらい経った醤油を用意できたら、また食べ比べてみてもいいかもしれない。


神経を研ぎ澄ませてテイスティング……なんもわからん。


■その他

おなじエスビーだけど、パッケージが違う。ほぼ味がしない。
同じものが売っていなかった。どっちもうまい。

感動レベル:☆☆☆☆☆

他には、パセリ、粉チーズ、ブラックペッパーを試そうとしたのだが、そもそも同じ商品を揃えられなかった。一応食べて比べてみたけれど、違いはまったくわからなかった。


ブラックペッパーに至っては、新品を用意することすらできなかった。

困窮レベル:★★★★★

ブラックペッパーはどのメーカーのものもスーパーに置いていなかった。「そんなことないでしょ」と思ったかもしれないが、私が一番驚いた。これにはちゃんと理由があるのだ。実は、うちの最寄りのスーパーは、10月末に閉店してしまう。私が買い物に行ったのは10月26日。閉店5日前だ。

地域の生活を数十年支えてきた大型スーパーも、閉店間際は無残だった。棚はスカスカで、ブラックペッパーすら置いていない。食品だけではなく、衣料品も家具も家電も書店も百円均一も床屋もカフェもファミレスも揃っていた店舗だったので、この店がなくなると、ブラックペッパーだけでなく、もっといろいろな物が買えなくなる。誰か助けてほしい。

ブラックペッパーに関しては、ペッパーミルという「ひきたて」を味わえるグッズがあるので「あけたて」より、そちらの方がいいかもしれない。やはり、「あけたて」の衝撃はタバスコがダントツだ。


みんなにも「あけたて」を感じてほしい

味覚は個人差も大きいので、他の人の意見も聞いてみたい。ちょうど友人とごはんを食べる予定があったので、新品の調味料を持参して向かった。

左から、まシューさんと江ノ島さん。

「あけたて」は感動する、という話をすると、まシューさんは「わかる気がします」と理解を示してくれたが、江ノ島さんは「どういうこと?」「本当?」と騙されるのではないかと警戒していた。

そんな二人にまずは一味唐からしを味わってもらった。まシューさんは、口に入れてすぐ「香りが強い」と感想を漏らす。しかし、江ノ島さんは「よくわからない」と首を傾げていた。たぶん、のどぐろラーメンというものすごく香りの強いものを食べた直後だからだと思います。

そして、いよいよ真打ち、タバスコで挑む。クラッカーとチーズを用意したので、そこに数滴かけて食べてもらう。

一味唐からしは、数ヶ月前に開封したものと、目の前で開封した新品とを用意できたのだけど、タバスコは新品しか用意できなかった。

糖質制限ダイエット中(?)ということで、クラッカーを使わない江ノ島さん。

タバスコに関しては「普段あまり食べない」「ナポリタンにめちゃかける」という対照的なふたり。サイゼリヤのピザにびしゃがけしているらしい。

若干の不安はあったものの、二人とも口に入れた瞬間「すっぱい!」「あー!」と盛り上がった。よし! 一味のときよりも反応がいいぞ!

「辛さよりも酸味が強いです」「うわー、すっぱい」と、二人とも普段食べているものよりも、酸味が強調されていると言っていた。「辛いけど、うまいですね」「これはびしゃがけできない」


顔から汗が吹き出て、少しヒリヒリする。

三人中三人が違いを感じられたので、証明できたと断言していいだろう。やはり「あけたて」はうまいのだ。


おしまい

もともと、何気なく買ったタバスコが、普段お店で食べているものとまったく違う味に感じたのが発端だ。

はちゃめちゃに美味しかったので、そのときのタバスコはすぐに使い切ってしまった。あの時期は、タバスコを食べるためにピザを買ってきたり、パスタを茹でたり、もはや主従が逆転していた。

そのせいで、使い古しのタバスコが手元になく、比較用にフタを閉めずに三日放置して、むりやり「乾いたタバスコ」をつくろうとしたが、あまりうまくいかなかった。

ベランダに置いて直射日光にさらすなど、試行錯誤をしてみたのだけど、残念ながら三日ではあまり変わらず、部屋に辛くてすっぱいにおいが充満しただけで終わってしまった。

タバスコを乾かす、って生まれて初めてやった。

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