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マスクに食料品…買い占めする人々は愚かではない。

新型コロナウイルスの影響下に置いて、「買い占め」は一つの社会問題となった。

「慌てないで、買い占めないでください」という買い占め自粛の呼びかけもむなしく、品薄が話題になればなるほど、スーパーやドラッグストアの棚は空の状態が続く。

「買い占め」のために売り場へ急ぐ人々には種類があり、一緒くたに語れないと思うのだ。

新型コロナウイルスの影響で品薄が連発

2020年3月、新型コロナウイルスの流行下により、市場からマスク、アルコール消毒液が姿を消した。

さらには緊急事態宣言がだされ、小中学校の休校措置が取られる中、トイレットペーパーやティッシュ、ハンドソープ、食料品も品薄になった。

そして世の中が新型コロナウイルスに慣れてきた8月、「イソジンうがい薬」が市場から姿を消した。

買い占めに関し、インターネットでは、「転売は規制すべき」「情報に踊らされスーパーに走り、買いだめするなんて愚かである」と言うような、意見も見られる。

実は、私自身も休校の際には食材とトイレットペーパーを買いに行ったし、通りがかりに店頭で見かければアルコール消毒液も入手した。

私も買い占め合戦に参戦した愚かもの扱いされているのだろう。


買い占め合戦に参戦する人々を4つに分類してみた

有事の際の買い占め合戦に巻き込まれてしまった人々は、全員が同じ理由ではないと、私は考えている。

1.仕事として買う人

2.身近な人のために買う人

3.レア品ゲットの感覚が病みつきになっている人

4.品薄で困った経験がある人

私が知る限り、買い占めに参戦していた人々はこの4種類に分けられる。

1.仕事として買う人
仕事として買う人は、転売で商売をしている人はもちろん、保育所や公共機関に勤める人など、「仕事上欠かせないもの」が品薄になってしまった人々だ。

マスクやハンドソープが品薄であった時、毎朝近所のドラッグストアは朝早くから長蛇の列ができていた。

どんな人が並んでいるのか?それは転売を生業とする人?時間がある無職の人?それだけではないのだ。

息子が通う学童では、児童の手洗い励行のためにハンドソープが必須であったし、学童内の消毒のために消毒液が必要だったが、かなり入手にてこずったと、指導員の方が教えてくれた。

指導員の方が交代で毎朝ドラッグストアに並び、日々の運営に必要な分を購入していたんだそうだ。

学童だけでなく、保育所や飲食店など、「営業するにあたって必要」とする事業所は多くあるだろう。

業者からの仕入れルートを持たない事業所も多い。息子の学童も、職員の方の努力によりハンドソープや消毒液を準備してくださっていたことに頭が下がる。


2.身近な人のために買う人

退職後の高齢者など、ここに当てはまる人は「身近な人のために買う人」が多かったのではないだろうか。

「実家の母がマスクと消毒液を送って分くれました」

「専業主婦のママ友がトイレットペーパーを分けてくれた」

こんな話は私の周りでもよく聞かれた。

「緊急事態宣言宣言下においても、仕事に育児に忙しいわが子や友人は、マスクを買いに行く暇がない。では自分が少し余分に購入した分を分けよう」と考える人も多かっただろう。

もしかしたら、親しい身内に分けるだけではなく、「たくさん持っているから言って!」と、ばらまくようにおすそ分けすることで感謝され、それが病みつきになっていた人もあったかもしれない。

周りの入手できない誰かのために、時間に融通がきく自分が「買い物代行」を担っていた側面もあったように思う。

3.レア品ゲットがたまらない人

個人的にはこの「レアものを持っている優越感」により買い占めに参戦する心理もあったのではないか?と感じた。

これは私の経験なのだが、わが家は夫がマスクを欠かせないタイプのため、常に箱マスクが3~4個ストックしてあった。

そのため、マスクの品薄下でも夫は不織布のマスクをつけて通勤できていた。

市場が「品薄だ!手に入らない!手作りするしかない!?」と大騒ぎしている中、わが家は在庫に余裕があることに少し優越感を感じ、備えが功を奏したことに嬉しさを感じてしまったものだった。

(一応補足しておきたい。医療機関で使えるようなタイプではなく、個包装もされていない箱マスクのため、寄付したり分けたりすることはしなかった)

「時間に余裕があり、並んでゲットできる」

「みんなが欲しがっているものを、自分はたくさん持っている」

もし私が仕事をしておらず、自由になる時間が多いシニア世代であったら…そんな優越感を感じたいがために、買い占めに参戦していたかもしれない…と思うのであった。

4.困った経験がある人

「品薄で、困った経験がある人」

私の場合はこれにも当てはまる。

2019年の台風。2019年の夏は、関東をはじめとし、いくつもの災害が日本を襲った。

台風に竜巻。酷暑の中、家も吹き飛ばされ、停電が長く続き、大変な被災をしたエリアがあることは記憶に新しい。

そうしたニュースを人ごとでなく感じていた私自身が「備えの大事さ」を痛感したのであった。

「災害時に対する備えの危機感」は、世帯の大きさによってかなり異なる。

2019年の台風災害の後、私は「飲料水にトイレ、カップ麺、電池…4人家族だから量は…?」と備蓄品を大量に見直した。

幸いにもわが家が台風被害を受けることはなかったが、私の実家は台風が直撃。停電が2週間続き、蔵代わりに使っていた家の屋根は落ち、蔵内はすべて水浸しになった。幸い、誰も住んでいなかったため、停電や被害が落ち着いてからの対処で済んだが、もし自分たち家族が住んでいたら、両親や祖父母が住んでいたら…と思うとぞっとした。

もし我が家が2週間停電の被害にあったと仮定して、幼児含めた家族4人が無事にやり過ごすためには「備蓄」が必須であった。

今までは「なんでもコンビニですぐに買える、全国どこでも必要なものは配達してもらえる」と、在庫を多く持たない生活を心がけていた。

災害に関しても「3日分の水があればなんとかなるでしょう」くらいの感覚であった。

しかし、「台風後に2週間も停電する可能性がある」ということを突き付けられ、それからは家族4人分の備蓄や準備に大わらわだったものだ。

ガスコンロから災害用トイレ、ランタンまで、買い足そうも、台風予報が出た後のホームセンターは、すっからかんであった。乳児がいる家は、おむつにミルク…とそれこそ備えは大変だったことであろう。

これが、単身世帯だと、温度感が全く違う。

当時、一人暮らであった友人に「台風の備えした?うちは電池買えなかったよ~」と聞くと「ううん、特に。ろうそくと、充電器、あとはカップ麺が多めにあればいいかなって」とのこと。

そう、大人一人であれば、数日分のトイレも食事も、そこまでたくさん買い込む必要はないらしい。

世帯の人数により、必要な備蓄、温度感は全くと言っていいほど違うのだ…。

少し話が長くなってしまうが、そう、品薄で困った経験があればあるほど、品薄の予兆には敏感になる。

「もし休校になって、子供たちも夫も家で生活するようになったら…?」と想像し、米は2週間で10キロ必要だな、トイレットペーパーは1週間で1パックなくなるな、と予測をたて、自分の家に必要な分を確保したくなったものだ。

もしトイレットペーパーがなくなれば代用する方法はたくさんあれど、不便なことには変わりない。米がなくなれば、毎食の支度にかなり困る。

そういえば台風の時はパンが品切れであった。

「在庫はあります!」と散々報道されていたが、マスクもトイレットペーパーもお米も、通常通り店頭に並ぶまで1か月以上かかった経験は忘れられない。

私の場合、2019年の台風被害の記憶が新しく、また、必要な時に手に入らない思いをしたので、今回も「休校して1週間家から出られないのなら、これだけは必要だな」と試算して買い物に行ったものだ。

オイルショック下でのトイレットペーパー買い占め

昭和48年のオイルショックで、トイレットペーパーが買い占めされたのは、学校でも習った。
習った当時学生だった私は「なんでトイレットペーパーでそんなに慌てるんだ(笑)」と鼻で笑ったものだが、家のトイレットペーパーを切らさずに準備しているのが誰なのか、当時は想像もしたことがなかった。

しかしながら、現実問題「トイレットペーパーがなくて、大をしたとき何でふけばいいのか?」と冷静に考えてみるとと「トイレットペーパーは必要だよね、生活必需品だよね」と思う。(もちろんティッシュや古布でふいてビニールで密封して捨てる、などの選択肢もあるが、ごみの処理はかなり憂鬱だ。あるならトイレットペーパーで水にジャーと流したい)

今回買い占めに参戦した人々の中にも昭和のオイルショックを経験した人々もいるのではないだろうか。

オイルショック当時、「買い占め自粛要請」まで政府が出しても効果がなく、市場や問屋からトイレットペーパーが消え、各家庭が溜め込んだ。

その当時苦労した経験から「備蓄しておかなくちゃ」という気持ちがシニア層に芽生えることを、私は責めることはできない。

「備え」の概念が変化した

新型コロナウイルスの動向をみながらの生活は数年続くだろう。

その間にも台風や地震、大雨と言った災害は起こるであろうし、普段からの備えが重要な時代になった。

2011年の東日本大震災の後、ミニマリストや断捨離が流行った。

時代は揺り戻すとはよく言ったもので、いままた揺り返しが起こっていると感じる。

大震災の後には、揺れても落下や家具転倒がないように、モノを少なく持つことが流行った。化粧や洋服も最低限にし、ミニマルな生き方にあこがれる人は増えた。備蓄品についても、たくさん持っていても仕方ないので、3~7日分が目安と言われていた。

しかし、2019年の台風~2020年の新型コロナウイルス流行により、また時代は変わろうとしている。

ロックダウンを想定するなら備蓄は最低でも2週間分は取っておくべきだし、外出自粛で家にこもっていても、心身ともに豊かであれるような趣味や運動ツールが必要だ。

自分らしいもの、家族としての娯楽など、生活に潤いをもたらすためのものを持っておくことは、ステイホーム中は重要だったと実感している。

さいごに

緊急時に市場のものが買い占められる現象は起こるべくして起こる。

いろんな理由やバックグラウンドを持つ人がいるのだ。

できれば、買い占めに参戦せずに、自宅にあるものでしのげるようになりたいものだ。

いざというときのために、必需品は必要分を計算しながら備蓄しておけるようにしたいと思う。

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