発見ヤマト芋


「その芋は黄金色の光沢を身に纏い、内側からは霊妙な輝きを放っていた」本棚の片隅に差し込まれていた年代物の植物図鑑にはそう書かれていた。その説明文の下には「ヤマト芋」という名称と共に、乱雑で簡素なイラストが添えられていた。そのイラストを見る限りでは、とても美味しそうには見えなかった。だが、だからこそ本物をこの目で見て、実際に味わってみたいと思った。僕は、ヤマト芋を探すことにした。

僕は、植物図鑑を片手に、ヤマト芋についての情報を集めることにした。手始めに、村の長老であるキイ婆さんの家に向かうことにした。キイ婆さんは、老齢の婦人である。実際の年齢は誰も知らず、100歳とも150歳とも言われている。この村一番の長寿者であるキイ婆さんは、かなり特異な容貌を具えている。

銀色の髪は、ざんばら状のまま野放図に伸びきっており、かんぴょうのような材質の衣服を好んで着用する。常に長尺の杖を握りしめているが、それは弱った足腰の役割を補填するためではなく、暴漢を撃退するためである。もちろん、今の今まで、一度たりとも暴漢に襲われたことはない。それでもなお、キイ婆さんは杖を手放さない。たとえ何歳であろうと、自己防衛の気概だけは失ってはならない。たとえそれが徒労に終わったとしても構わない。

キイ婆さんは、僕の説明を「ふんふん」と頷きながら聞いていた。ただ、実際にはほとんど聞いていない。長年の付き合いの経験から、僕にはそのことがわかった。大抵の場合、キイ婆さんは「聞いているそぶりを提示しているだけ」である。どうやらキイ婆さんは「こちら側が最低限の態度を示せば、大層な事態には発展しないだろう」という根拠なき確信を有しているらしい。それもかなり年代物の確信である。長大な年月を経て使い古された確信は、もはや何の効力も宿していない。僕は、キイ婆さんが保持する確信に対して、同情の念を抱いた。半ば儀礼的に。

僕は、キイ婆さんのいつも通りのつれない反応を見て、植物図鑑をぱたりと閉じた。この村一番の年長者であるキイ婆さんが知らないとなればお手上げである。他の誰に尋ねたとしても、ヤマト芋に関する有益な情報は得られないだろう。僕は「そうだよなぁ。そんなに簡単に物事が進展するはずはないもんなぁ」と独りごちた。

そろそろお暇しようと思い、見納めとばかりにキイ婆さんの部屋をぐるりと見渡してみると、大きな花瓶に見慣れない物体が挿さっていた。僕は椅子から立ち上がって、花瓶に近寄り、その物体を凝視した。それは、植物図鑑に添えられていたヤマト芋の絵に酷似していた。「二次元のイラストを三次元に起こしたらこうなるはずだ」と僕の直観が厳かに告げたのである。ふと、キイ婆さんの顔を見やると、明らかに狼狽していた。尋問の始まりだ。



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