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クマとウサギとカエル(仮)


『クマとウサギとカエル(仮)』をご紹介します。米原万里さんの著作で紹介されていた小話です。正式なタイトルは不明なので(仮)です。「諧謔の童話」とでも呼ぶべき秀作なので絵にしてみました。それではご覧下さい。


ある日、クマとウサギが森を歩いていました。彼らの目的はわかりません。徳川埋蔵金でも探していたのでしょう。

すると突然、魔法使いのカエルが現れました。涅槃仏ならぬ涅槃蛙は「それぞれに3つの願いを叶えてやろう」と言いました。神龍ならぬ神蛙ですね。 

まずはクマの1つめの願いです。クマは熟考の末、こう答えました。「この森にいる俺以外のクマを全員メスにしてくれ」

お次はウサギの1つめの願いです。ウサギは即答しました。「ヘルメットをくれ」

クマの2つめの願いです。クマはニヤけながら、こう答えました。「隣の森のクマも全員メスにしてくれ」 

ウサギの2つめの願いです。ウサギは淀みなく答えました。「バイクをくれ」

そしてクマの3つめの願いです。クマは頬を染めながら答えました。「世界中のクマをメスにしてくれ」 1つめ、2つめ、3つめの願いと段階を踏んで「自分以外のクマは全員メス」というハーレムを作ったのです。なんともスケベなクマですね。

いよいよウサギの3つめの願いです。ウサギは落ち着いて答えました。「このクマを同性愛者にしてくれ」 このウサギの願いによって、クマのハーレム計画は瓦解しました。オスのクマはオスしか愛せなくなってしまったのです。見事なちゃぶ台返しですね。

周到に準備したハーレム計画を御破算にされたクマは、怒り狂いました。自分以外のクマを全員メスにしたのに、自分と同じオスしか愛せなくなってしまったのです。お怒りはごもっともですね。リラックマならぬイラックマの誕生です。

ハーレム計画を完膚なきまでに叩き潰されたクマは、ウサギに襲いかかりました。ですが、ウサギは余裕の表情を浮かべています。そうです。ウサギはクマの襲撃に備えて、準備を整えていたのです。

クマの鋭利な爪がウサギの身体に食い込む直前に、ウサギはバイクに乗って颯爽とその場を後にしました。3つの願いを効果的に使うことによって、逃げ去る用意を完成させたのです。とんでもない策士ですね。持つべきものは、知恵とバイクとヘルメットです。  おしまい。


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