最近の心境、体調(2016年5月現在)

病気が見つかってからのことを時系列に記録していたけれど、なかなか筆が進まない。もとはと言えば、書くことで気持ちの整理になればと思って始めたので、最近のことを書いてきもちを鎮めたいと思う。

手術から7ヶ月あまり経った。
この間、病気のことが頭の中から消えることはなかった。常に頭のどこかに居座っているような感覚。いつもがん細胞を切り取った場所が気にかかり、「この感じは”痛み”と呼ぶべきなのか?違和感というにはあまりに主張してくる感覚だし」などと自問自答を繰り返している。
再発が怖くて仕方がない。医師は「ふつうに考えたら再発の可能性は1%もないよ」とは言っていたが、「30代で舌がん罹患」という低い確率にヒットしてしまっているので、「1%もない」と言われても、私にとってはあまり説得力がない。

死がすぐそばにある感覚も拭えない。
「死がすぐそばにある」というのは、本当はみんなそのはずなんだけど、そんなこといちいち気にしてたら生きていくのがきついから、多くの人は気づかないことにしていることなのだろう。
でも、がんという病気が見つかって、不本意ながら「死」をわりと具体的にイメージしてしまったことで、そこからなかなか離れられなくなってしまった。死ぬかもしれない病気はいくらでもあるのだから、本当は、がんだからって短絡的に「死」に結びつけることなどせずに、自分の病状を客観的にながめてもっとクールでいたかったのだけどな。

傍から見たらそうは見えないかもしれないけど、いつも不安がつきまとっている。
ただ、このような不安感は、退院直後に比べたらだいぶ薄まっているので、今後も徐々に薄らいでいくのかなと思っている。

「不安感が強い」という心理状態がベースにあるせいか、精神面では他にも変化を感じている。
まず、これまで関心をもっていたことに以前と同じようには関心をもてなくなった。
これまでは、わりと社会的な問題に広く関心があって、積極的に情報に触れていた方だと思う。仕事の関係もあり、プライベートの時間もそういったことに割く時間が多かった。
しかし、病気がわかって以降、これまで触れていた情報からは遠ざかり、イベントなどに足を運ぶこともほとんどなくなり、以前は定期的に録画して見ていた番組も見ないで削除してしまうことが増えた。
深刻なことに触れたくないという意思に常にうっすらと覆われているような感覚だ。

また、近づきたくない人や事柄には近づきたくない、という気持ちがこれまで以上に強くなった。もともとあまり人と会う方ではなかったのだけど、ますますその傾向が強くなった。

最後に、ささいなことを深刻に受け止めたり、他人に対して不満に感じることが増えたような感覚を覚える。この点については、「増えた」のではなくて、そういう風に感じている自分を今までよりも鋭敏に感じるようになったのではないかと思っている。
先日、職場に新しく入った人が私の病気のことを知っていて、「自分で伝えるつもりだったのに誰かしゃべったんだな」と思ったら、許せないような気持ちになった。病気が見つかったとき、同僚達には「伝えたい人には自分で伝えるので、他言無用で」と伝えていたので、勝手にしゃべるってなんだよ・・・と思ったんだけど、しゃべった人を責めるこれほど強い感情に駆られるのは、ちょっと変だよなと感じている。他にもちょっとした場面で他人を責めたくなってしまうことがあり、私の心がちょっと病気っぽい。

舌の感覚について常に自問自答を繰り返しているような状態がつづいている。内省的な時間の密度がこれまで以上に濃いとでも言えばよいのか、常に自分の心身の状態を確認しているような状態がつづいているのではないか。
こういう状態って、あんまり長くつづくとよくないのではないかと、少し心配している。本当は運動するとかして、鬱々と積み重なったものをばーっと発散して、体を疲れさせて、ぐっすり眠った方がよっぽど心身によいと思う。

体の方は、手術をした場所の違和感・痛みが常にある。ごく弱いものだけど、常になにか感じ続けるというのは負担なのだなと感じている。
舌がんの原因となった自分の歯並び(歯が内向きに生えていて、舌の置き場所が狭い)がすごく気になるようになり、特に内向きの歯は削ってもらった。
噛み締めの強さを緩和するために、眠るときにはマウスピースをつけるようになった。
風邪を引いたり、胃腸炎になったり、よくわからない咳が半月くらい続いたり、めまいが出たり、小さな不調が増えた。これは精神的なものの影響が強いんじゃないだろうか。3月にフラッシュバックを経験したのが大きかった。

体の病気をすると、心も大きく影響を受けるのだなとつくづく感じている。
舌がんの治療による体への影響は最低限といえるものにも関わらず、心はこれほど影響をうけるものなのか。
心の状態によって体もまた影響を受ける。
なんと精密なことだろう。

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