2015年10月 入院のための準備いろいろ

10/11(日)以降、入院のために細々とした準備をすすめた。

<物の準備>
ネットで入院に必要な物リストを見比べて、確実に必要そうな前開きパジャマ2着と下着を買った。
ふだんパジャマを着ないのでもっていない。あまりお金をかけたくなかったので、地元のスーパーの衣料品売場でボーダー柄のガーゼのパジャマを買った。肌触りがよくて、今も着ている。退院直後はあまり見たくなかったけど、今は平気だ。
ただ、後日、病院でうけた入院説明で、レンタルパジャマがあると聞いた。病院まで持っていったり洗濯したりする手間がないので、短期間の入院ならレンタルの方がよかったかもしれない。

<家族への連絡>
兄には早々に伝えて、実家の高齢の両親に伝えるべきかを相談していた。
当初、母のみに伝えて、父には伝えないでおこうと考えた。
80代の父は、思い込みが強いため、私からの説明をそのとおりに受け止めてもらえず、勝手に悲観される可能性が高いと思った。加えて、障害や病気のある人のことを一方的に「かわいそうだ」「不幸だ」と決めるつけるようなところがあって、あのまなざしが自分に向けられるのかと思うと耐えられなかった。

病状がごく初期であるとわかってから改めて兄と相談して、母にも詳しくは伝えないことにした。
私と兄は「ごく初期」という医師の話をそのまま受け止めることができるが、70代の母には、そのステージに関わらず、「娘にがんが見つかった」ということが大きなダメージを与えるだろうというのが、兄と私の一致した考えだった。
私が結婚するとき、夫に「娘は私の分身みたいなものだから」と伝えていたことを思い起こすと、初期とはいえ私にがんが見つかったと知れば、術後もずっと心配し続けることは目に見えた。
保険の手続きの関係で、入院して手術を受けることを母に伝えないわけにはいかない。母には「舌にできものができたので手術でとることになった。悪い物ではないけれど、放っておいてもよいことはないのでとって置いた方がいいらしい。1時間程度の簡単な手術だから」と伝えることにした。父には母から伝えてもらった。
母は10代から美容師として働いてきて、様々な病気でお客さんを見送ってきた。がんで亡くなった方も多かったので、ぴんとくるかもしれないけれど、がんであるとはっきり伝えるよりはましであろうと考えた。

夫の実家には、母と同じ内容を伝えることにした。
ふだん、実家同士が連絡しあうことはほとんどないが、入院と聞いて夫の母が私の母に連絡するように思われたので、両方の情報に差がない方がよいだろうと考えた。

どちらの実家にも、見舞いには来なくていいと伝えた。
来てもらっても話せないし、心配かけるのは嫌だし、夫の母はいろいろ手を焼きたい人なのでそれを受け止めるのも疲れるし、見舞いに来てもらってもいいことはないと考えた。

<友人・知人への連絡>
2週間程度の短期だし、見舞いにきてもらっても話せないので、友人には伝えないことにした。鼻からチューブを入れて過ごす生活というのがどんなものなのかわからなかったけれど、必要以上に心配されたり同情されたりするのも嫌だった。
近く会うことになっていた人たちには、入院・手術することを伝えて、約束を延期してもらった。

<保険の手続き>
これまで母任せだったので、これを機に自分で手続きできるようにするため、口座変更や給付手続きの書類の準備をした。


この時期は、入院・手術をめざして過ごして突っ走るような感じだったが、あまりきちんと眠れていなかった。
布団に入って目を閉じると、すぐ死ぬような状況ではないとはわかっているのに、この先自分が死んだら両親はどれほど悲しむのだろうとか、夫は寂しいのかなとか、考えても仕方のないことを考えてしまう。子どもの頃から、自分や身近な人の死をあれこれ考えては恐ろしくなっていたのだけれど、がんが見つかって、よりリアルに考えるようになってしまった。
自分が知らないうちにがん細胞が生まれていたというのであれば、今このときも増えているのではないのか、という恐怖感も生まれた。
夜眠れないので、日中は常に眠い状態で、休みの日には昼寝をしていた。

病気がわかって1週間は、感情面で起伏に富んだ毎日であっという間だったが、少し落ち着くと、現実のことに頭が回って来てお金の不安に襲われた。「手術が無事に終わっても、もし再発したらたくさんお金が必要になるんじゃないか」「定期的に平日に病院に通わないといけないと伝えたら転職は難しくなるんじゃないか」「転職できなくて私の収入が低いままで夫が病気になったら治療費が払えない」などと、あれこれ悪い想定が浮かんできて、不安がおさまらない。
この不安を抑えるために、小遣い制にすることと、夫の保険に入ることを提案すると、「治ったら二人とも収入を増やさないと」と言われ、どうせそう言われるだろうと思っていたのと、ふだんの不満もあいまって、「そんな先のことまで考えられないよ!」と答えたこともあった。

「今」のことではない、先々のことばかりを考えて、勝手に頭の中が悪い方向に回り始める。
今もまだそういう傾向があるけれど、病気になると体の不具合だけでなく、こういう心の不具合もでてくるのだな。

がんが見つかってから兄に最初に連絡したとき、心配して「なんでも自分のことのように感じるから、体がつらいって言ってるんじゃないのか」みたいなことを言われた。
たしかにそういう傾向はあるんだけど、これまでそうやって生きてきちゃって、これから先どう生きていけばいいんだろうか。物の感じ方は変えられるんだろうか。そんなことにも頭の中をもっていかれた。

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