母に病気のことがばれかける

午後出社のため、昼ごろまで寝たり起きたりを繰り返す。体のだるさ、足の張りが日に日にひどくなる。
風呂に入り、簡単に食事を済ませて出社。地下鉄で座れたので、会議用のメモを書き出す。

出社して、インターンの学生にお願いしたい作業を伝えて、会議二つに入る。どちらも悪くない内容だったと思う。

夕方、母から着信。私の勤め先の正確な名前を教えてほしいという。理由を聞くと、自分の保険の支払が終わるので、私のがん保険に入ってくれるのだという。既にがんの既往歴があり、治療から一年半くらいしか経っていないので新たに保険に入ることはできないのだが、私の受けた手術ががんの切除手術であることを母は知らない。

「いいよ、私のまで入らなくて」「手術からまだ間もないから入れないはずだよ」などと断っても、「いいわよ」「がんでもなんでもなかったんだから大丈夫」と言って譲らない。私にあまり余裕がないから入ってあげようと思ってのことだろう。らちがあかないと思い、いったん電話を切る。

親に余計な心配をかけたくなくてここまで慎重に隠してきたのに、こんなきっかけでばれてしまうのだろうか。既往歴確認の段階でばれるかな。万が一、がんが再発したら、告知義務違反で保険はおりないな。などといろいろな考えが頭の中をめぐる。

焦り、反射的に兄にLINEで連絡を取る。すぐには既読にならない。既往歴確認の書類が私に届くはずだと思い、確認のために母に電話をかけた。
保険の窓口にいるらしい。「手術受けても、がんでもなんでもなかったんだから大丈夫だって」「お母さんが契約者だから、書いといたから大丈夫」と言っている。なぜ本人に書類が届かないのか食い下がって質問すると、保険会社の男性が電話に出た。
「今からお伝えすることは母にはわからないようにお答えいただきたいのですが。今日か明日、母がいない状態でお話できませんか? 私がそちらに連絡することは母には伝えないでください」と伝えると、「10分後にはお話できますよ」との回答。

10分後に私から男性の携帯にかけて話をした。一年半前に受けた手術は初期のがんを切除するものであったので保険には入れないこと、高齢の母に心配をかけたくなくてがんだとは伝えていないこと、絶対に母には伏せてほしいことを伝える。電話口で男性が絶句していた。

話を一通り聞いた男性は、加入の手続きが完了してしまっているので、いったんは通さないわけにはいかないのだが、支払開始と効力発生は半年くらい先なので、その間にやり方を考えてみてまた連絡します、と言っていた。

母からの連絡も含めて30分ほどのできごとだったが、すべてのやりとりを終えると全身がどっしりと重くなっていた。
自席に戻ってもすぐに仕事を再開することができず、コンビニに出かける。

油断しているつもりはないが、こうやって思いもよらぬときに思いもよらぬことが起きて、心が乱れる。なぜ、何に対してこんなに乱れるのか、自分でもよくわからない。

週末のイベントの準備のために2時間ほど残って仕事をして、隣の駅まで歩く。水辺を歩くと少し気持ちが落ち着く気がするが、ダメージが大きい。

ほとり日記(http://hotoridiary.hatenablog.com)から転載

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