世界の名ボクサー:アレクシス・アルゲリョ①「ニカラグアの貴公子」

世界三階級王者。フェザー級時代の試合。エルネスト・マルセル戦、ルーベン・オリバレス戦、リゴベルト・リアスコ戦、ロイヤル小林戦ほかを紹介します。

アレクシス・アルゲリョ(ニカラグア)
身長178cm:オーソドックス(右構え)

①エルネスト・マルセル 15R 判定 アレクシス・アルゲリョ
(WBA世界フェザー級タイトル戦、1974年)
(感想:マルセルがタイトル防衛。「ニカラグアの貴公子」と呼ばれたアルゲリョ(実際は傷だらけの顔。紳士的な試合ぶり、普段の穏やかな物腰から「貴公子」と例えられていた)。ニカラグア初の世界王者(WBA世界フェザー級王座、次いでWBC世界J・ライト級王座、WBC世界ライト級王座獲得)。ニカラグア・マナグア出身。実家は貧しく、14歳の時に学校を辞めた。働く場もなく、義兄(ボクサー)に勧められてリングに。1972年の「ニカラグア大地震」では危うく命を落とすところだったという。身長は軽量級にしては長身で、178cm。左ジャブで距離を取って必殺の右ストレートを叩き込むのがKOパターン。慎重に試合を進めるため「スロースターター」という評価もあるが、本人に言わせるとそうではなく、「チャンスをじっくり作るのが自分のスタイル」ということらしい。デビュー四戦目で判定負け、初黒星。しかし、毎月のようにリングに上がり、いつまでも負けを気にしている余裕は無い。23戦目ではTKOで二敗目。その後も精力的にリングへ。38戦目で元世界王者ホセ・レグラを1Rで始末するなど連戦連勝で初の世界挑戦のチャンス。王者マルセルはパナマの黒人。ロベルト・デュランにTKO 負け後、柴田国明のWBC世界フェザー級王座に挑戦して引き分け。アントニオ・ゴメスからWBA世界フェザー級王座獲得(ゴメスは西城正三をKOして王座を獲得したことで日本でもおなじみ)。これまで三度の防衛に成功している。パナマシティでの一戦。スタイルが完成しているアルゲリョ。ジャブを連打して、長い右ストレート、左フック、ボディ打ち。マルセルは足を使いながら得意の右ストレート、左フックを意表を突くタイミングで打ち込む。アルゲリョの端正な攻撃をディフェンスするマルセル。逆にアルゲリョをロープ際、コーナーに追い込む。中盤はアルゲリョ。コンビネーションで勢い良く攻撃し、KO寸前というところまでマルセルを攻撃。しかし、終盤はマルセル。アルゲリョは距離が空くと強い、と考えたか、マルセルは接近戦を仕掛け、序盤のように右ストレートをヒットさせる。15R終了。判定は3-0。マルセルがパンチを当てる巧さとディフェンスで勝利。アルゲリョはマルセルを強打するシーンもあったが受け身の姿勢になるシーンが多く見られた。この時点では「試合運び」の点でやや経験不足だったか。試合後、マルセルはアルゲリョに「君は世界王者になれる」とコメント。そして、王座返上、引退。それは彼の母の希望だった。)

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