世界の名ボクサー:ジョージ・フォアマン③「巨象&戦う牧師」

世界ヘビー級王者。世界王座防衛戦、そして「死」を経験した試合。モハメド・アリ戦、ロン・ライル戦、ジョー・フレージャー戦(再戦)、ジミー・ヤング戦ほかを紹介します。

ジョージ・フォアマン(アメリカ)
身長192cm:オーソドックス(右構え)

①モハメド・アリ 8R KO ジョージ・フォアマン
(世界ヘビー級タイトル戦、1974年)
(ダウンシーン)
8R:右ストレートでフォアマンがダウン
(感想:アリがタイトル奪回。「ランブル・イン・ザ・ジャングル」(Rumble in the Jungle、ジャングルの決闘)と銘打たれた試合。全勝フォアマンの三度目の防衛戦。挑戦者アリは説明不要の元王者。ベトナム戦争に対する態度で当局から「アメリカの敵」扱いされ、最終的には兵役拒否で王座剥奪。三年のブランク後、王者ジョー・フレージャーに挑戦したが、太ってしまった身体ではフレージャーの必殺の左フックをかわすことができず、ダウンを喫した末に判定負け、初黒星。その後もケン・ノートンにアゴを割られるなど苦戦続き。北米王座を奪回、防衛。そしてこのフォアマンへの挑戦。試合地はアフリカ・ザイール(意外なことにフォアマンはアメリカでの世界戦はこれまで無し。王座を獲った試合はジャマイカ、初防衛戦は東京、二度目はベネズエラ。なぜ海外ばかり?)。アリが苦戦したフレージャー、ノートンを粉砕したことから予想は圧倒的に「フォアマン有利」。しかし、フォアマンにとってアフリカでのトレーニングはかなり苦痛なもので、しかも試合前に負傷し、延期。アフリカから一刻も早く逃げ出したい気分で試合。どんな内容となるか? 左右フック連打で前に出るフォアマン。アリはフォアマンの重いパンチをブロックしながらジャブと右ストレートで迎え撃つ(いわゆる「ロープ・ア・ドープ」。攻めさせて相手を疲れさせてから反撃する戦法。余程の打たれ強さとディフェンスのテクニックが必要)。フォアマンがまるでディフェンスを気にしないかのような大振りの左右フックを闇雲に連打。そして、スタミナをいたずらにロス。8R、バランスを崩したフォアマンにアリが一気に連打。右ストレートでフォアマンがダウン、KO。衝撃の番狂わせ。フォアマンが初黒星。この試合は後に「キンシャサの奇跡」と呼ばれることとなるが、フォアマンには気の毒な試合。フォアマンの世界戦は海外ばかり。疲れ切っていたのだと思われる。それに加え、ディフェンスのテクニックに大きな差があった。)

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