世界の名ボクサー:ロベルト・デュラン①「パナマの ”石の拳”」

世界四階級制覇王者。世界王者になる前の試合&世界王座戦。エルネスト・マルセル戦、小林弘戦、ケン・ブキャナン戦、エステバン・デ・ヘスス戦(初戦)ほかを紹介します。

ロベルト・デュラン(パナマ)
身長170cm:オーソドックス(右構え)

①ロベルト・デュラン 10R TKO エルネスト・マルセル
(J・ライト級戦、1970年)
(感想:世界四階級制覇のデュラン。パナマの「石の拳」。強かっただけではなく数々のエピソードを持つ男。パナマシティのスラム街出身。強打者でニックネームは「Manos de Piedra」(英語で言うと「Hands of Stone(石のコブシ)」。母は地元の人だったが、父はメキシコ系アメリカ人(アメリカ陸軍所属でパナマに駐留)。父が家族を捨てたため、デュランは子供の頃から働きに。ケンカばかりで学校をクビになり、犯罪を繰り返す日々(ストリートファイトで腕っぷしがパワーアップ)。ある日、カネ持ちの家から梨を盗もうとしたところを見つかってしまう。そのカネ持ちはスポーツ界をバックアップするタニマチだったことから、デュランはボクサーの道に。アマチュアで経験を積んだ後、16歳でプロ入り(ある祭りで馬を素手で殴り倒したという逸話はプロ入り前の出来事らしい)。これまで全勝。マルセル戦はプロ19戦目となる。マルセルもパナマ人で黒人。パナマ王座を獲得しているが、その王座はバンタム級。体格的にはデュランよりも小さく、不利なのではないか? パナマシティで行われた後の世界王者同士の一戦。マルセルがフットワーク&ジャブで距離を取りながら時折右ストレート、左フックをヒットさせるなどパンチを当てるテクニックを見せる。デュランはタフ。エネルギッシュに前進し、速いジャブ、右ストレート、左フックで攻める。接近戦ではフックでの打ち合い。互いに譲らず、といった展開。10R、突然レフェリーが試合を止めてデュランの手を上げた。マルセルはダウンもしておらず、劣勢にもなっていなかったがTKO負けを宣告された。ただその時、デュランの腕をマルセルはホールドしていた。それを「戦意喪失」と見なされたのかもしれない。デュランが勢いで押し切って勝利。マルセルは負けたが巧さを見せるなど、デュランといい勝負をした。その後、マルセルは柴田国明の持つWBC世界フェザー級王座に挑戦して引き分け。アントニオ・ゴメスを破ってWBA世界フェザー級王座獲得(1972年)。後の三冠王アレクシス・アルゲリョを相手に四度目の防衛に成功して王座返上、引退。それは母の希望だった、とのこと。)

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