世界の名ボクサー:マイケル・スピンクス⑤ラスト「スラム街出身の二冠王」

世界L・ヘビー級、ヘビー級王者。ついにヘビー級に挑戦。ラリー・ホームズ戦(初戦・再戦)、ステファン・タングスタッド戦、ゲーリー・クーニー戦を紹介します。

マイケル・スピンクス(アメリカ)
身長188cm:オーソドックス(右構え)

①マイケル・スピンクス 15R 判定 ラリー・ホームズ
(IBF世界ヘビー級タイトル戦、1985年)
(感想:スピンクスがタイトル獲得。これまで27戦全勝(19KO)のスピンクスがついに大きなチャレンジ。ライトヘビーに敵がいなくなり、階級を上げてヘビー級に挑戦。「L・ヘビー級王者はヘビー級王者にはなれない」という歴史的事実(古い時代の選手で三階級制覇王者のボブ・フィッシモンズがいるが、世界ミドル級王座を獲得後、世界ヘビー級王座獲得。そして世界L・ヘビー級王者に。世界L・ヘビー級王者が世界ヘビー級王者になったケースはないが(当時)、世界ミドル級王者が世界ヘビー級王者になったことはある)。体重を増やすために多めに食事を摂ったというスピンクス。「勝てるとは思えない」と自分でも試合前は思ったそうだが、どんな試合を見せるか? 王者はあのラリー・ホームズ。これまで48戦全勝。かねてから「引退」を口にしていたが、試合に勝ち続けるにつれてロッキー・マルシアノの「49戦全勝、無敗で引退」の記録を意識。ホームズはこの記録を更新して引退するつもり。元WBC王者でもあるホームズ。今回はIBF王座を懸けて行われることになったが、WBC王者時代にスピンクスの兄レオンをKOして王座防衛。スピンクスは兄の仇を討つことができるかどうか? ラスベガスでの一戦(TV解説者はシュガー・レイ・レナード)。共に白のトランクスに縞模様のソックス。ベルトラインとソックスの縞の色がお揃いで、ホームズは赤、スピンクスは黒。試合開始。ホームズが重そうなジャブ。速さはそれなりにあるが、かつてのようなパワー、キレに欠けている。スピンクスもジャブ。ただ、パワーではホームズ。接近して独特の右を狙うスピンクス。4R、スピンクスが連打。ホームズはジャブは良いが、畳み掛けるような攻めができず、スピンクスの連打を持て余す。6R、ホームズがモハメド・アリばりのフットワーク&ジャブを使うが、一時的なものに終わる(スタミナ不足?)。ジャブで相手を追うホームズ。しかし、スピンクスが速いジャブ、そして意表を突くタイミングで斜め上からねじ込むような右パンチ、左右フック連打で優勢。11R、スピンクスがちょっとしたことでエキサイト(心理作戦?)。15R、ホームズの右ストレートがついにクリーンヒットしたが、追い掛けることができず試合終了。判定は僅差の3-0(二人のジャッジは1ポイント差だった)。勝って大喜びのスピンクス。「連打するが打ち合いはしない作戦」が成功。ホームズは意気消沈。判定に不満だったそうだが、モタモタしてエンジンがかからないといった感じの試合ぶり。「世界ヘビー級王者」としての強さを見せることができなかったのは否定できない。)

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