世界の名ボクサー:ジャック・デンプシー②ラスト「マナッサの殺し屋」

世界ヘビー級王者。1920年代の試合。防衛戦と世界再挑戦。トミー・ギボンズ戦、ルイス・アンヘル・フィルポ戦、ジーン・タニー戦(初戦・再戦)ほかを紹介します。

ジャック・デンプシー(アメリカ)
身長185cm:オーソドックス(右構え)

①ジャック・デンプシー 15R 判定 トミー・ギボンズ
(世界ヘビー級タイトル戦、1923年)
(感想:デンプシーがタイトル防衛。前回の防衛戦でジョルジュ・カルパンチェを下したデンプシー。その試合はカルパンチェが人気者だったため、ビッグマッチとなった。しかし、カルパンチェは一階級下の選手。ヘビー級にはもっと手強い選手がいる。当時、名を上げていたのは黒人の強豪ハリー・ウィリス。デンプシー本人はウィリスの挑戦を受ける意向。しかし、ボクシング関係者は「ジャック・ジョンソンの再来」を嫌った。「世界ヘビー級王座は白人のもの」「もしデンプシーが破れたら、また黒人に大きな顔をされてしまう」と考え、結局、ウィリスは世界に挑戦できず。そしてデンプシーの四度目の防衛戦。挑戦者ギボンズはミネソタ州出身。「伝説のミドル級」ハリー・グレブといった選手と対戦(グレブはミドル級でありながらヘビー級とも試合。度胸がある男だった)。このところ連勝中。試合地はモンタナ州シェルビーという小さな田舎町。「町を有名にしたい」ということで町の偉い人がデンプシーの世界戦を誘致。どんな試合となるか? 選手入場。ボディガードに囲まれるデンプシー(試合前に脅迫されたデンプシー。シカゴの警官がボディガードに付いた)。ゴング前、新聞用の写真撮影(両者がファイティングポーズ)。リングアナが大きいメガホンで選手紹介。そしてゴング。攻めるデンプシー。接近して左右フック。打ち合いを避けたいギボンズは時折反撃しながらフットワーク、クリンチ。ギボンズを捕まえられないデンプシー。攻めるが時間は過ぎていくばかり。15R終了。判定はPTSでデンプシー(「PTS」とはレフェリーまたはジャッジが一人で試合を採点するシステム。採点結果は公表されないことになっている)。攻める姿勢で勝利。ギボンズはよく頑張って粘ったが、そこまで。ファンの不評を買った「大凡戦(デンプシー自身がそう語った)」となった。町を有名にして盛り上げる作戦の方はどうだったか? この試合にカネをかけすぎて町の銀行が破産し、町はすっかり寂れてしまったという。その後のギボンズ。ジョルジュ・カルパンチェに勝利するなどの活躍。ジーン・タニーにKO負けしてそれがラストファイトとなった。)

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