世界の名ボクサー:マイク・タイソン⑬ラスト「強打の鉄人」

世界ヘビー級王者。最後の世界戦とその後の試合。レノックス・ルイス戦、クリフォード・エティエンヌ戦、ダニー・ウィリアムズ戦、ケビン・マクブライド戦を紹介します。

マイク・タイソン(アメリカ)
身長178cm:オーソドックス(右構え)

①レノックス・ルイス 8R KO マイク・タイソン
(WBC・IBF世界ヘビー級タイトル戦、2002年)
(ダウンシーン)
4R:ワンツーでタイソンがダウン
8R:右ストレートで2度、タイソンがダウン
(感想:ルイスがタイトル防衛。本来ならばもっと前に対戦していたはずの二人の試合がこのタイミングで実現。以前、刑務所から復帰したタイソンは再起三戦目でフランク・ブルーノをKOしてWBC王者になったが、WBCからのルイスとの対戦指令を無視して王座剥奪。タイソンはWBA王者ブルース・セルドン(当時)と戦い、KOで王座奪取。ところがイベンダー・ホリフィールドにKO負け、王座陥落。再戦でホリフィールドの耳を噛み切る蛮行、ライセンス停止。ルイスと戦うことはなかった。王者ルイスは多くの実績。ロンドン生まれ。カナダに移住し、ボクシングを始める。ロス五輪(1984年)に出場したが、メダル獲得ならず。そして、4年後のソウル。スーパーヘビー級決勝戦であのリディック・ボウを破って金メダル。プロでは右ストレートを武器に連戦連勝でWBC王者に。ところがオリバー・マッコールに「ドカン」と倒されて初黒星。トミー・モリソン、レイ・マーサーといった当時の人気選手を破った後、マッコールに雪辱して王座奪回。ホリフィールドらを相手に防衛したり、王座を統一したりしたが、今度はハシーム・ラクマンに「ドカン」とやられて王座陥落。ラクマンから王座を奪回し、今回のこのタイソン戦。しかしながら、やっぱりトラブルのタイソン。試合前の記者会見で蛮行。ルイス陣営とモメただけではなく、WBC会長ホセ・スライマンを負傷させてしまった(タイソン「薬物による錯乱」と後年、このときの出来事を語っている)。この出来事によりネバダ州で試合をすることができなくなり、延期に。テネシー州メンフィスで行われた一戦。35歳のタイソンは前回の試合ではデンマークのブライアン・ニールセン相手に良い試合をしたが、この試合ではどうか? 「特別な試合」ということでリングアナはジミー・レノン・ジュニアとマイケル・バッファの二人。リング上に対角線上に黄色いシャツのスタッフが並んで「防波堤」を作り、両陣営がゴング前に衝突することを阻止。1R開始。タイソンが全盛期のようにダッキングしながら前進し、ジャブ、右ストレート、左フック。ルイスは距離を取ってジャブ、ワンツー、右カウンター、クリンチ。アッパーでカウンターを取る器用さを見せるルイス。タイソンはパワーを込めてパンチを振るうが、空振りやブロックされて疲労が増していく。4R、ワンツーでタイソンがダウン。5R、クリンチ中にルイスが右フックを放ってレフェリーから警告。その後、ワンツー、ディフェンスでルイス優勢。8R、左フックからの右ストレートでタイソンがしゃがむような体勢に。「ダウン」扱いされてカウント。そしてとどめの右ストレート。倒れたタイソンは立てず、KO。ルイスが圧勝。「タイソンにはスタミナがない」と踏んだか、クリンチしながらタイソンを疲れさせたうえで仕留めた。タイソンは目の腫れと出血でエラい目に。引退を勧めたくなるような負けだった。その後のルイス。タイソンを破った次の試合でビタリ・クリチコを下して王者のまま引退。タイソン、ホリフィールドを破り、負けた相手にはキッチリ雪辱するなどほぼパーフェクトなリングキャリアとなった。)

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