世界の名ボクサー:シュガー・レイ・ロビンソン④「史上最強の拳聖」

世界ウェルター級、ミドル級王者。三階級制覇に挑戦&世界ミドル級王座戦。ジョーイ・マキシム戦、ラルフ・ジョーンズ、ボボ・オルソン戦(三戦目)ほかを紹介します。

シュガー・レイ・ロビンソン(アメリカ)
身長180cm:オーソドックス(右構え)

①ジョーイ・マキシム 14R TKO シュガー・レイ・ロビンソン
(世界ライトヘビー級タイトル戦、1952年6月)
(感想:マキシムがタイトル防衛。ロッキー・グラジアノを完璧にKOして世界ミドル級王座を防衛したロビンソン。次の試合は三階級制覇挑戦。ターゲットは世界ライトヘビー級王者ジョーイ・マキシム。マキシムはオハイオ州クリーブランド出身の白人。アマチュアで活躍後、プロへ。1941年のデビュー戦は判定勝ち。三戦目で判定負け、初黒星。以後、連勝しては敗北。エザード・チャールズ(後の世界ヘビー級王者)に二連敗。第二次大戦では陸軍に所属し、役割は「ボクシング・インストラクター」。戦後、ジャージー・ジョー・ウォルコット(後の世界ヘビー級王者)に判定勝ち。ウォルコットに雪辱され、エザード・チャールズにはまたしても敗北。NBAライトヘビー級王座獲得。フレディ・ミルズ(英国)から世界ライトヘビー級王座奪取。エザード・チャールズの世界ヘビー級王座に挑戦して判定負け。世界ライトヘビー級王座の初防衛に成功。ロビンソン戦は二度目の防衛戦となる。ブロンクス「ヤンキースタジアム」での一戦。マキシム、次いでロビンソンの順にリング入場。互いにジャブ。ロビンソンが左フックからの右ストレート。接近戦ではフック連打、左ボディ打ち。ただ、動きのスピードに欠け、打ってはクリンチ。マキシムは左ジャブ、左フックといった左のテクニックが中心。しかし、畳み掛ける攻めは少なく、爆発力に欠ける印象。ロビンソンが距離を取ってディフェンスしながら時折右ストレートを当て、ポイント上優勢。7R、左フックをヒットさせたロビンソンだが、マキシムはダメージが無いかのように前進。この試合は6月だったが、ニューヨークは酷暑だったという。11Rにレフェリーが交替(暑さでルビー・ゴールドスタインがギブアップ。代役はレイ・ミラー)。ロビンソンは右ストレート、ボディ連打で攻める。13R、フットワーク、ジャブ、クリンチのロビンソン。渾身の力を込めた右ストレートを空振りして転倒。13R終了。ロビンソンがコーナーで意識を失ったような状態になり、レフェリーストップ。「勝利」にマキシムは大喜びだった。ロビンソンが初の「KO負け」(結果的に「唯一のKO負け」となった)。スコアカードではリードしていたが、暑さにやられてしまった(ロビンソン「試合の途中からの記憶が無い」と後、コメント)。しかしながら、「ライトヘビー級のロビンソン」はあまり魅力的ではなかった。スピードに欠け、「華麗なシュガー・レイ」ではなかった。ファンがロビンソンに期待しているのは「素晴らしい動きで勝利すること」であり「やっとこさベルトを獲ること」ではない。三階級制覇に失敗したのは残念であったが、ライトヘビー級は本来のベストウェートではないため「実力による敗北」ではない。ただ、大きい相手にクリンチする作戦は間違いだったような気がする(相手から体重を掛けられて余計スタミナをロスしてしまうのでは?)。後、シュガー・レイ・レナードがライトヘビー級のドニー・ラロンデをKOして五階級制覇を達成するが、レナードはこの試合を参考にしたのではないだろうか? 勝利したマキシム。左のテクニックはあったが、エキサイティングではない選手。次の試合でアーチー・ムーアに王座を奪われた。王座奪回を目指して二度ムーアに挑戦したが、いずれも判定負けだった。)

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