世界の名ボクサー:アズマー・ネルソン①「アフリカの野生児」

世界二階級制覇王者。WBC世界フェザー級王座挑戦。サルバドル・サンチェス戦、アービング・ミッチェル戦、アルビン・フォウラー戦、ウィルフレド・ゴメス戦ほかを紹介します。

アズマー・ネルソン(ガーナ)
身長165cm:オーソドックス(右構え)

①サルバドル・サンチェス 15R TKO アズマー・ネルソン
(WBC世界フェザー級タイトル戦、1982年)
(ダウンシーン)
7R:左フックでネルソンがダウン
15R:左フックでネルソンがダウン
(感想:サンチェスがタイトル防衛。ガーナ・アクラ出身の黒人ネルソン。「アフリカの野生児」などと呼ばれたが(他にもその実績、戦いぶりを讃えて「プロフェッサー(教授)」、その驚異的な強さを例えて「ガーナの魔神」などと呼ばれることも)、実際は豊かな家庭の出身。憧れのボクサーは父(アマチュアで活躍したそうだ)とモハメド・アリ。身長は大きくないが、その頑丈なコブシでWBC世界フェザー級王座、WBC世界J・ライト級王座を獲得。「アフリカ史上最も偉大なボクサー」と評価する識者もおり、それは彼のパンチ力、タフネス、倒しに行く姿勢が理由。アマチュアでは50勝2敗。ニューヨークで行われた1979年のワールドカップで銅メダル獲得。アクラでプロデビュー。連戦連勝。ガーナ王座、アフリカ王座、英連邦王座(全てフェザー級)を獲得。しかし、試合地はガーナ、トーゴ、シエラレオネ、ザンビア。ボクシングの本場アメリカではカリフォルニア州ベーカーズフィールドで一試合やったのみ。ガーナ国外では無名のネルソンにチャンス到来。王者サンチェス(メキシコ)は九度目の防衛戦でWBC1位マリオ・ミランダと対戦する予定になっていたが、ミランダが負傷。代役でネルソンが挑戦。これまで試合数は少ないが全勝のネルソン。プロ14戦目で初の世界挑戦。実力と人気の王者サンチェスを相手にどんな動きを見せるか? ニューヨーク「マジソン・スクエア・ガーデン」での一戦(レフェリーはトニー・ペレス)。ゴング前、リングアナのコールに笑顔で応えるサンチェス。試合開始。ネルソンが「エネルギーの塊」のように振りの大きい豪快な左フックを中心に攻めの姿勢。サンチェスは冷静にジャブで相手を観察し、右ストレート、左フックで迎え撃つ。パンチの正確さでサンチェスが上回る。7R、ネルソンが左フックでグラつき、さらに左フックでダウン。それでも勢いが止まらないネルソンだが、9R終了後、帰るコーナーを間違える(効いていたのか、単に間違えただけなのか)。最終15R、連打で足に来たネルソンが左フックでダウン。立ったが、連打でレフェリーストップ。サンチェスが正確な攻撃で勝利。経験で上回った。ネルソンには「野生のパワー」があったが、この試合の時点ではまだ荒削りなところがあった。その後のサンチェス。実力者を次々に破ってきたことから人気沸騰。「アレクシス・アルゲリョ(当時、WBC世界ライト級王者)に挑戦したい」と語るほどの自信。しかし、ネルソン戦の22日後、スピードの出しすぎ(と言われている)による自動車事故。23歳で死去。ネルソンが最後の対戦相手となった。)

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