見出し画像

Yコンビネーター 2021年冬デモ・デーの注目スタートアップ

2021年3月23日に、Yコンビネーターのデモ・デーが開催されました。Yコンビネーターは米国で最も人気のあるアクセラレーターの1つで、これまでに民泊プラットフォームのAirbnbやゲームのストリーミングに特化したTwitchなど、数多くのスタートアップを育てて送り出しています。

前回に引き続きオンラインでの開催となった今回のデモ・デーでは1チーム1スライド、持ち時間約1分で自社サービスを発表するという形になりました。今回は参加した283社の中から、ビジネスアイデアが面白く、日本市場でも受け入れられそうなスタートアップ8社を取り上げてご紹介していきたいと思います。

Taloflow
Taloflowはクラウドの利用コストを可視化するソリューションを提供するFinOps(Finance and Operations)スタートアップです。特徴はコストが大きく変動した際にその原因を深掘りして分析できる点と、信憑性のある将来のコストを予想できる点です。エンジニアにとって負担となるコスト管理をカバーすることで、開発に集中できる環境をサポートすることを目指しています。またFinOpsのツールだけではなく、その企業に適したクラウドやアプリを提案するサービスなども提供しています。

FlutterFlow
FlutterFlowはモバイルアプリに特化したノーコード開発のスタートアップです。ユーザーはプログラミングコードを書く必要がなく、パワーポイントと似たような感覚で主にドラッグ&ドロップの操作でモバイルアプリを構築することができます。その裏で動いているのはFlutter(モバイルフレームワーク)、Firebase(モバイル&ウェブアプリのバックエンドサービス)、Algolia(検索APIサービス)、Codemagic(テスト・ビルド・配信の自動化ツール)です。特にFlutterによってiOSとAndroidの両方をカバーでき、各OS用にそれぞれサービスを構築する必要がないため、効率よいモバイルアプリの開発が期待できそうです。

Runway
Runwayはモバイルアプリの開発プロセスを可視化するツールを提供します。開発プロセスを可視化して管理することにより、プロジェクトの見える化、リスク軽減、効率的な開発につなげることができます。

Chums
Chumsはソーシャル機能を持つオンラインショッピングプラットフォームを提供します。特徴はChumsプラットフォームで繋がっている友人から紹介された商品を購入することで、紹介した友人側にチップが支払われるという点です。友人同士、家族同士が活発にお互いのおすすめ商品を紹介し合うソーシャル機能によって、Chums上の取引を活発にするという仕組みです。

Splitsub
Splitsubはストリーミングや音楽など様々なサブスクリプションサービスのアカウントを共有できるサービスを提供します。共有方法は2つあり、1つは自分でグループを作成し、自分のアカウントをグループ内のユーザーに共有する方法、もう1つは自分が既存のグループに参加してアカウントを共有してもらう方法です。これによってサブスクリプションの支払い金額を節約できることが魅力的である一方、各サブスクリプションサービスのポリシーに抵触するのではないかという不安があります。その点がクリアになればユーザにとって魅力的なサービスになる可能性がありそうです。

Alltruists
Alltruistsは自宅で子供と一緒にボランティア活動ができるキットを届けてくれるサブスクリプションサービスを提供します。ボランティア活動は教育の一貫として大切だと認識されている一方で、それらを体験する機会を与えることができていない家庭に向けて手軽にボランティア体験を提供することをサポートします。月額$59のサブスクリプションで月1回ボランティア体験ができるキットが自宅に届き、テーマは気候変動、きれいな水、飢餓などさまざまなものが用意されています。

Charge Running
Charge Runningはランニングならびにウォーキングに特化した音声トレーニングを提供するスタートアップです。音声でトレーニングが提供されるため、ユーザーは走りながらトレーニングを受けることが可能です。35分のインターバルトレーニングや45分のウォーキングとランニングを組み合わせたトレーニングなど、様々なメニューが音声で提供されています。

著名ベンチャーキャピタルLightspeedが予測する2021年の10大トレンドでも「音声からの情報収集」が入っていたように、音声に関する様々なサービスが今後も注目を集めそうです。

Popl
Poplは次世代の名刺交換の仕組みを提供するスタートアップです。PoplのNFCステッカーをスマホに貼ることで、EメールアドレスやLinkdInなどの連絡先だけではなく、FacebookやTikTokなどのソーシャルメディア、PayPalやVenmoなどP2Pペイメントの情報などを非接触で手軽に共有することができます。ビジネスの情報発信でソーシャルメディアを活用する人が多くなる中、Poplのような製品が普及すれば従来の名刺交換の場でも、ソーシャルメディアのアカウントも当たり前のように交換されるようになりそうです。

注目ポイント

私が今回のデモ・デーで注目をしたのがFinOpsを提供するTaloflowです。クラウドの活用では利用した分だけ課金されますが、実際に支払っているクラウドの費用について、支払っている金額の妥当性や、削減できるポイントの有無、また普段より請求額が高い場合の正確な原因など、多少なりとも疑問に思っているユーザーは多いのではないかと考えるからです。

とはいえFinOpsはクラウドを活用しているエンジニア、財務、その他営業などの部門が組織の枠組みを越えて連携する必要があります。そのためTaloflowのようなツールを導入してすぐに解決できるわけではありませんが、今後クラウドを導入している企業にとって必要になってくる考え方でしょう。開発手法でDevOpsが浸透したことと同様にクラウド運用でもFinOpsが浸透していくことが予想されるため、それらをサポートするスタートアップについて今後も注目をしていく必要がありそうです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?