ブラック企業勤めのアラサーが文学フリマ東京に出るタイプのアラフォーに成長するまでの話⑥
前回までのあらすじ
ブラック企業勤めで心身を病んだ山羊座の女(アラサー)は2019年、朗読と文章の学校に通い始めた。2021年、そこでできた友人である糸瓜曜子と「お題を出し合って、月に2000字以上の文章を書いて、10000字以上の作品を作る会(以下10000字の会)」を結成。お題の中に「シマエナガ」という無茶ぶりをまぎれこませていたところ、糸瓜曜子がすばらしすぎる短編小説を書いてきたので糸瓜曜子への尊敬の気持ちと自分も素敵な作品を書きたいという気持ちがさらに高まってゆく。
今はなき、朗読と文章の学校。その学校が抱えていた慢性的な問題と、そして解体について今回は語ろうと思う。
朗読と文章の学校が抱えていた慢性的な問題。それは生徒が文章の課題を提出しないことである。
もちろん皆勤賞の生徒もいる。のちに糸瓜と私が立ち上げた文芸サークル「声朗堂」のメンバーになる隼瀬灯火と星ノクターンがその筆頭である。それに続いて糸瓜と私が割とちゃんと提出するメンバー。そして木埜さん。あとはぼちぼち提出する方々と、あまり提出しない方々がいらっしゃった。特に2021年からは提出率が悪くて、文章の添削をしていたライターのKさんは、全員に提出させるために、あれこれと手を尽くしていらっしゃった。
文章の提出率が悪いのには、「忙しいから」以外に、根本的な理由があった。それは、そもそもみんな「朗読教室」を探して「朗読と文章の学校」にたどりついている、ということだ。
声を出すのは好きだし、文章を読むのも好き。だけど書くのはちょっと。
特に2021年あたりは、そういう方が多かったように思う。たぶん常に文章をノリノリで書いていたのは糸瓜、隼瀬、星、私の4名。
忙しくて書く時間がとれない方、基本的にあまり書きたくないという姿勢の方。それぞれいろんな事情で文章の課題を出せなかったのだ。
なお、朗読と文章の学校のすごい点、というか、朗読の効用かもしれないと思う点として、文章の課題に乗り気でない人もかなりおもしろい素敵な文章を書かれる、ということが挙げられる。しかし、今回はそれは本題ではないので、それは置いておいて。
2022年春。そんな朗読と文章の学校に転機が訪れる。
レッスンが終わったあと、先生とライターのKさんと生徒のみんなでエレベーターに乗り込んだ時、Kさんは突然言った。
「私、秋から産休に入ります」
下降するエレベーターの中で驚きの声が響き渡った。おそらくエレベーターもびっくりしたと思う。私たち生徒はKさんが結婚していたことも知らなかったので(2021年に結婚していたらしい)仰天してしまった。
そして数か月後、Kさんが産休に入るにあたり、「朗読と文章の学校」は文章の課題・添削をなくし、朗読教室として独立することになった。
それはつまり、みなさんの文章がもう読めないということである。
私は打ちひしがれた。自分自身は糸瓜と10000字の会をしているし、2022年2月からは日記屋月日の運営する月日会で短歌付き日記を書き始めており、「文章を書く場」がある。しかし、他のみなさんの文章が読めなくなるのは悲しかった。
そこで、糸瓜と私は「文章の課題をちゃんと出すタイプ」の隼瀬さんを勧誘した。ふたつ返事でOKをもらったので、しばらくその3人で活動し、その後また話し合って、「文章の課題をちゃんと出すタイプ」の最後のひとりである星さんをスカウトした。星さんもふたつ返事でOKをくれた。
「月2000字書いて10000字の作品を作って、文学フリマ福岡に出よう!」
そう誓って、我々は文学フリマ福岡(2022年10月開催)に申し込んだのだが、2022年夏。10000字の会のメンバーは大きな問題に直面する。
物語が10000字では終わらないのである。
文学フリマ福岡まであと3ヶ月ほどなのに、載せられる作品がひとつもない。なぜなら俺たちの物語が終わらないから。
そんな事態に陥って、私たちは頭を抱えた。そして悩みに悩んだ結果、これまで自分たちが「朗読と文章の学校」や「文章の学校」で書いてきた400字~800字の作品と糸瓜が10000字の会初期に書いた2000字の短編2編の計80作品を載せた作品集を作ることにした。
その名も、『声朗堂文集0 イチマンブンノゼロ』。
2022年の文学フリマ福岡は、その一冊で乗り切った。そして2023年の文学フリマ福岡では、新メンバーの松崎白身を迎えて満を持して10000字以上の作品集『声朗堂文集1 イチマンブンノイチ』を頒布した。
こうして軌道に乗った10000字の会(声朗堂)の活動であるが、2024年、再び「物語が終わらない」問題などが浮上しつつある。……今年の文学フリマ福岡、すでに出店が決まっているのですが、既刊しかなかったらすみません。
ところで。来週末に迫った文学フリマ東京である。
文学フリマ東京には、声朗堂名義ではなく、「山羊座のナンカ」という私個人の名義で出店する。
なぜ個人で?
どういう流れで?
そしてなぜ文学フリマ東京へ?
次回はその経緯についてお話しさせていただきます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?