オンライン修士の学校選び(経営学・会計学)

遠方への移動中、勉強道具を忘れてしまい暇になったので、経営学・会計学領域における米英のオンライン修士プログラムについて書いてみることにしました。今回は主に選び方について。はじめに書いておきますがいわゆる穴場のようなものはなく、低コスト(3万ドル程度)と一定程度のレベルの均衡点で学校を選ぼうとすると、米英広しと言えど片手で数えられる程度の数の中から選ぶことになるのではないかと思います。

まず前提として、オンキャンパスで行く機会と余力があるのなら、私はそちらの方がいいと思います。なぜオンラインで取るのかと言えば、①取得にかかるコストを大幅に抑えることができ、②在学中にフルタイムで働くことを止めなくて済むからです。
日本で働く人にとっては①の要素は特に大きいものになるでしょう。日本にいながら学ぶことができるので渡航や現地での生活に必要なお金をセーブすることができます。加えて、MBAのランキング上位校は学費だけで概ね10万ドル以上の場合がほとんどなので、社費留学や公費留学、気前のいい奨学金などのパトロンがなければ一般庶民には厳しいのではないかと思います。対して、オンラインのプログラムであれば3万ドル前後からある程度の大学の教育を受けることができます。ここでいう「ある程度」というのはQSやTHE、ARWUの世界ランキングで100位以内に入る程度です。適当です。なお、最近はUCBやUPenn、UMなどのいわゆる名門校のMBAもオンラインプログラムを開講しているようですが、それらはやはりオンラインであっても高いので今回の記事のスコープ外です。
②の要素も無視できません。特定領域での実務経験を早く積みたいと考えている場合、専業オンキャンパスだとその意味でキャリアは一度中断します。現地で永住権を持っていればオンキャンパスで通いながら働くこともできるでしょうが、日本から留学という形で行くならビザの都合でそういった立ち回りは厳しいと思われます。パトロン付きの留学でなければ専業で学ぶことに伴う精神的不安や、家族や周囲とのハレーションなども少なからず起こるでしょう。オンライン修士という選択は、そういった困難を一定程度回避することはできます。

さて、前置きが長くなりました。そこまで費用は出せない(学費3万ドル程度)、在学中・修了後のことを考えるとある程度のレベルは確保したい、という前提での学校選びにあたっていくつか参考になりそうな視点があります。

認証制度
AACSBやAMBAなどが有名どころでしょうか。ただこれは、世界的な知名度の低い大学がそのプログラムの品質を対外的に示す際に使われる指標という側面が強い気がします。たとえばBoothやKelloggがきちんと認証を取っているか気にする人は皆無だと思います。学校選びなどに特化したサイトでスクリーニングを行う際に便利な場合があるのでご紹介したまでです。

大学ランキング
これ、色々ありますよね。まず作成している主体が色々ある。QS、THE、ARWUなどのランキングがメジャーなところでしょうか。さらにそれぞれの発行主体が領域ごとのランキングを作成していたり、MBAにいたっては専攻ごとのランキングがあったりもします。オンラインに特化したランキングも勿論あり、上位の顔ぶれはオンキャンパスのそれと大分違ったものになっています。自分が将来的に履歴書やLinkedinにそれを書いたときに、既にその大学の価値を知っている人は、ランキングなぞ気にしないでしょう。ランキングが参照されるのは読み手がよく分からなかったときです。その際に、その人がわざわざオンラインのランキングまで見に行ってくれるのか、特定領域のランキングまで見に行ってくれるのか、考える必要はあると思います。私はそういうわけで、大学全体の世界ランキングを重視しています。

STEM(アメリカの場合)
言うまでもなく、オンライン修士の場合修了後にSTEM OPTが申請可能かは直接関係ありません。しかしながらデータアナリティクスなど数理系に強いプログラムをご所望の場合には参考になるかもしれせん。ビジネススクールでSTEMを取得している大学は全体の数から言うとそう多くないと思います。

MOOCプラットフォーム
edXやCourseraといったMOOCプラットフォーム上でオンラインの学位プログラムを提供している大学があります。私の思う利点は、大学側がオンラインという媒体に慣れていることです。管見の限り、一口にオンライン修士プログラムと言っても色々あります。録画したビデオを並べておいて選択式の期末試験にパスすれば単位取得といったようなものもあれば、グループワークやライブディスカッション豊富な双方向の学び重視のプログラムもあります。効果的な学びをオンラインで実現させるのには大学側に相応の技術が必要です。その意味で、大手MOOCと連携しているプログラムには一定程度の比較優位を見込むことができると思います。

学位の種類
経営学/会計学の学位というとまずMBAが頭に浮かびますが、意外とバリエーションがあります。特定業界に特化したもの、SCMやファイナンスなど特定の職種に特化したもの(学位としてそもそも別なケースもあれば、同じ学位でconcentrationが違うというケースもあります)、実務経験~3年程度の若者にフォーカスしたもの、反対にexecutivesに向けたもの、CFAやCPAの合格あるいは学部時代にビジネスを学んでいたことを前提に短期間でプログラムの組まれているもの、他領域とのジョイントディグリー……挙げればキリがないのですが、強調したいのは学費などをまとめた学校選びのサイトなどの外部情報に記載されている学費はその大学の代表的なプログラムのものであることが多いということです。ニーズによっては掘れば案外……ということもあるかもしれません。

学位記上の表記
Poshな大学で特にその傾向が強い気がしますが、オンラインプログラムで取得した学位を敢えてオンキャンパスのものと区別して表記している大学があります。世の中には色んな人がいますので、気になる方は気にされてください。

あとは修了後のジョブオファー取得率、修了後の昇進昇給率、ethnic diversity、平均年齢、GMATの点数、必要なTOEFLの点数、acceptance rateなどなど、比較可能な要素は色々あると思うのですが、入試系の指標はクリアできるところに出願するしかないですし、修了後の進路に関しては学位取得で実利があると判断した人々の集まりだと思いますのでそらよくて当たり前と言いますか、あまり学校選びの参考にはならないのではと個人的には考えております。

以上の観点から総合的に、低コストと一定程度のレベルを両立できそうだと私が抽出したのは下記の大学です。実際、今の学校に入る前は併願先にもなりました。ただ、これらだけ絞っても、プログラムの数は結構あります。

Boston University(米)
University of Illinois at Urbana–Champaign(米)
University of Birmingham(英)
University of Warwick(英)

Warwickは今のレートだと3万ドル台に乗らないと思われます。英語圏ということで対象をカナダやオーストラリアなどにも広げると該当するものがもう少しあるかもしれません。それからリベラルアーツカレッジのビジネススクールでオンラインのプログラムを提供しているところもあるので、そこら辺はノーマークのところもあるかも。当然ですが、10万ドルは出せないけど5万ドルなら…ランキングは200位ぐらいでも気にしない…など、条件を変えれば該当するものは増えていきます。

繰り返しになりますが、経済的な制約がないのであれば、当然もっといい学校はあります。要は学位を使って何をしたいのかが全てでしょう。日本の組織にいると修士号を持っていることそれ自体が評価の対象になることは驚くほど少ないですが、海外だとビザが取りやすくなったり、そもそも昇格や採用の要件になっていたりするので、自分でビジネスをやらなくてもわりと活躍するシーンはあるのです。修士号が入り用になったけど、色んな制約の中で生きている勤め人に向けて、何かのヒントになればいいなと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?