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NN月報 ~2020年1月~           ~ふぃめーるらっぷ~


はじめに・・・

この度、月一で(とりあえず)音楽についてまあ適当にnoteで書いてくか、
と思い至った。軽い判断だ。でもなるべく一定のテーマ性みたいなのが透けて見えると、いいなというのも狙いだ。
私、Not iN serviceによる月一報告だから、月報。
という感じである。
そして、このタイトルは、具体的には、まーったく「俺期待されてねーから」という理由だがなんだかで更新しない
あるweb記事へのあてつけになってるし
(俺は待ってるんだからサッサと書けよ!)、
あんまり最近音楽のプレイリストを記事を上げず映画ばかり挙げている、
ある音楽webへのあてつけである。



①CHARLES/金返セ


はい、2020年、男だの白人だの恵まれた表現みてもしょうがねーでしょーといきなり不穏なこというわけじゃないですけど、
まずはレディーズラップぐらいから聞きてえよ、という気分にドンピシャなトラックだったのがこれでした。
このラッパーの紹介なんですけど、実はおそらく昨今の、
ある程度一定の支持層を得て定着したMCバトル番組とかにも出ていた、
ACEというラッパーがいるんですけど、その元彼女で、ずっとACEと一緒にサイファーとかをしていたフィメールラッパーでした。
でも、どうやらその後ACEとの子供である第一子を得た後、
なんかあまり音沙汰ないなーと思ってたら、
どっかのラップバトル動画でACEが
「別れたよ、なんなら別の男にも抱かれたよ」とラップしてたんで、
まあ別れたみたいですね。
そしたらこの曲が飛び込んでくるときにはなんと、
一児ではなく二児の母となっていました。

で、曲ですが、トラップの旋律にのってくるあまりにもシンプルでキャッチーな「金返せ」というフック。
それと対照的に、言葉数多めのヴァースは、やはりMCバトルの影響もあるんでしょうが、こと関して強烈な生活のしみついた言葉が
バスバス聞こえてきます。
「フロウがどういう前に風呂に入れ そしてソファーで寝るな布団に入れ」
 
「何が女子力?女感じよくしとけ?うるせー口くせー男子力磨け 
 なんで俺が日陰?知らねえ 自分磨けあとは洗濯しろ
 育児に家事は見学希望 ってお前の狂った生活理論
 いる意味ある?存在価値に疑問 があるなら頂戴先に二本
(200万のことか?)」

この連発には男全員沈黙するんじゃないでしょうか。

素朴すぎ? 
僕はこの曲から2020年の狼煙をあげてくのがいいのではと思います。
女子の賃金の低さ、高等教育無償では間に合わない少子化、
いまだに日本の女子はモノ言えなすぎだし、
モノ言ってる女子も男の蓑被りが散見するのも確か。
さまざまな暴力におびえてるのも確か。
八代亜紀が女子刑務所慰問公演で「みんな此処にいるのは男のせいよね!」と絶叫すると全囚人は咆哮し看守も泣きながら刑務所は爆発したような騒ぎになるそうだ。…という話をtwitterでも見たような。
もうこのままではマジでずっと昭和なんでこの国は。
全女子今こそ男どもに言うべき、今まで奪われてきたことを返せと。
「金返セ!!!!」、と。

1st album「GO」は2020/2/12にリリースするらしいです。


②chelmico/Eazy Breezy


最初っからヘビーだと思った方もいるかもなので、
一気にポップに振り切って、
みんなが大好きchelmicoの最高のmvでも見ましょう。
アニメ「映像研に手を出すな!」のopでもあり、
そのアニメからも刺激を受けたようなCGグラフィックあふれる映像は見てて本当に楽しい。
bpm160越えのサッサカしたトラックの上を飄々とラップする、モデル兼ラッパーの二人は、本当にラップが「できている」ので、
すごく聞きやすく、彼女達の憧れであったRIP SLYMEの「joint」を彷彿、
いや凌駕しているとも思えます。
何よりバカ騒ぎで腰が抜けているわけではなく、彼女らがラップするのは、大好きなものに夢中になった人間の、
(勿論ここもアニメとリンクしてますね)
加速していくドキドキする内面と外面のあれこれ。

「こっちへおいでよ 一面からではみせらんない」

という言葉はすごく現代をキャッチしていると思います。
そもそもmaltineのトラックメイカーと長く付き合いもありトラックも数曲提供され、初期はtrekkie traxからもリリースされていて、
日本の2010年代を圧巻し、
今もし続けるシーンとの強いつながりがある彼女ら。
発表から間もなくsoundcloudではbootlegが乱造されてて、
人気ではなく、ムーブメントすらうかがえます。
余裕で紅白を射程圏内にとらえてほしい。

③Roska /Pree Me ft なかむらみなみ


trekkie traxの名前が出たので、最近そこから出たリリースを。
しかも国内から海外へとコネクトする一曲。
急ピッチで撮影&作成した、という話なのですが、
Roskaというukファンキーの有名なトラックメイカー +TREKKIE TRAXとゆかりあるラッパーというコンセプチュアルなEPで、
抜擢されたのは、元TENG GANG STARRのなかむらみなみ。
相方だったkamuiも、昨年個人的にはvince staplesを想起させる
ようなEPを出していたので精力的に活動していますが、なかむらみなみは、TREKKIE TRAXとの接続をより強くし、
昨年は「Reiwa(令和)」をリリース。
一気に次はRoskaのトラックの上で踊ることになりました。
「鯨が跳ねた」という言葉に特徴的な、ちょっとあまりない言葉選びと気合のこもったシャウト&パフォーマンスの対比は、
ありがちなラッパーを見るより全然楽しく、
いつもクラブで楽しませてもらっています。
中国風の服やスト2(ストリートファイター2)の言葉が出るのは狙いなのかどうか。


④Awich/Open it up

国内がどうした、こっちは世界と言わんばかりのアクトがもう一つ。
yentownからAwichのアルバム「孔雀」と、
この曲のmvが2020年早々届きました。
トラックは、あの「Herlem shake」で一世を風靡したクラブトラップサウンドの第一人者、Baauer。
いやこれは驚きました。
セクシャルボースティングも飛び出すリリックですが、
知ってる人は勿論知ってると思いますが、彼女も一児の母。
で、ありながらここまで世界基準を狙う曲を放つ挑戦を買いたいですよね。去年みたフェスでのライブでは、
最初に日本語で、次に英語でオーディエンスにmcをしていたので、ホント世界に出れるんだよなーと思っていました。
彼女は88risingのドキュメンタリーにもjinn doggと共に長めの枠をもらって出演しています。

⑤valknee - NUNA 누나


こちらのインタビューでは、幼年期に韓国にいたということで、
へーと思いました。
でも、この曲を別文脈から考えることもできそうです。
上の四曲とも遜色ないこの曲から感じられるのは、
女性、そして女性アーティストが海外への接続に、より意識的であるという健康的な回路の発見である、とでも吹いときましょうか。
爆発するkpop産業を日本の女の子の一定層は自然に取り込み、新大久保駅は、日本を代表するkpopショップタウンになりました。
この曲では、真摯にkpopのアイドルの男の子を愛する日本の女性が
喋ってるようで、そしてその愛でもって、韓国語という、
この、世界で最も安全で信頼あるパスポート評価を与えられながら、
それを持っている国民がとても低いこのナチュラルに鎖国ライクな日本の中で、外の言葉を習熟しながら思いを述べていくという構図になっているのが感動的です。別に中国でもビルマ語でもスワヒリ語でもいいのですが、
「愛に国境なし」というイギリスの詩人バイロンの言葉を思い出します。
彼女はvalknee+ANTIC名義で「SMOLDER」というEPを去年出し、
注目された神奈川のフィメールラッパー。
「人生最高のSSS」「折衷案じゃん」といったフックあるワードを独特のフロウでラップし、
去年僕が知ったフィメールラッパーの中でトップクラスに注目しました。
EPはすべて、ANTICのビートで統一していましたが、
この曲は別のトラックメイカー。
しかし後半にキャッチーなフックを用意するなど、
彼女の歌い方が光ります。
そしてなんと、そんな彼女が出演してくれる、東京の恵比寿baticaという箱の共催イベントに、この私も参加しています。
是非2020年のフィーメルギャルラップを聞きに来てください。はい、宣伝もします。


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