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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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「カムイ伝」と「カムイ外伝」の話と「百日のウツセ」が好きな話(ネタバレあり)

この記事を、故白土三平御大に捧げます。

開口一番これかよ!って感じなのですが・・・。
時代が時代ならというかもう少し対象年齢低かったら女児の初恋キラーになるだろカムイ・・・。

という事で、現代忍者のある意味「開祖」ともいえる故・白戸三平先生の作品で、ライフワークでもあった「カムイ伝」「カムイ外伝」の話をしたいと思ってこの記事を書きました。現代の忍者漫画はベースが全て「ココ」にある!っても過言じゃないよって感じ。

古い作品です。二作品の概要を簡単に述べると・・・。
「カムイ伝」は農民・非人・武士を中心とした多くの人々が交わる「群像劇」であり、「カムイ外伝」は伝の登場人物である忍者「カムイ」に焦点を充てたアクション忍者漫画モノです。

もしかしたら、地元の図書館とかにあるかもしれません。ぜひあったら借りてみて読んでほしい!!です。漫画なので読みやすいですし・・・(漫画のジャンル内では相当読みにくい分類になるとは思いますが・・・)。漫画喫茶とかにも絶対あると思う!!のでお願いします!!!よければ買ってほしい・・・。




〇忍者としての「カムイ」(ネタバレ+)


カムイ

忍者カムイは非人(えた、ひにんのひにん)の生まれです。江戸時代当時の身分階層としては最も下の人間というわけです。しかし・・・本人は「なんで同じ人間なのに非人として生まれたら一生を非人として蔑まれながら生きなければならないのか」と強く思い・・・。

「強くなれば・・・誰にも負けない強さがあれば、人に蔑まれることはなくなり、自由になれるだろう」と考え剣術をがむしゃらに鍛えていた際・・・忍者としての資質を見込まれ、忍者の道に入ることになります。

忍者としての師匠、赤目の師匠に厳しく忍術を仕込まれた後忍者として仕事(=殺人)を請け負うようになりますが、忍者というものは「上の命令が絶対」であり、命令に背くことは死ぬことと同義、また任務失敗も死ぬことと同義であり、また命令された任務には拒否権がない。自由を欲して強くなるために忍者になったのに、結局は掟だらけの縛られた世界で・・・。カムイは「これが俺の望んでいた世界なのか・・・?」と疑問に思うのです。

夢。憧れと、実際なってみると結構違う事多いですよね。

そして・・・「抜け忍」になることを選ぶのです。掟に縛られた忍者の里において、そこから逃げ出すという事はご法度にあたります。なぜならば・・・一人抜けてしまってそれを容認すれば、他の忍者たちを縛り付けている掟の意味が無くなり、逃げたもん勝ちになってしまうからなのです。だから執拗に執拗にカムイを追う追忍を里は派遣し、カムイを殺そうとするのです。カムイはそれに対して各地を転々とし逃げ回りながら追っ手を自分が生き残るために殺す日々を過ごす・・・。
といった内容が忍者カムイの生い立ちと、簡単な「カムイ外伝」のストーリーとなります。

結局望んだ自由は手に入らない

〇「カムイ伝」についてと正助

「カムイ伝」、正直「外伝」よりも現在の認知度は低いかもしれません。
此方の作品は第一部・第二部と現在作品が分かれているのですが、こんな記事を書いておきながら・・・第二部の方は方々の古本屋を探しても見当たらず・・・。手に入れることがまだできていません。なので第一部の情報のみ知ったうえで、できる限りネタバレを避け書きたいと思います。

白土先生のライフワークでもあるように、テーマは「差別」とそれに対する「抗い」であろうと思います。そのテーマが本当に色濃く出ているので、一巻一巻読むだけでもものすごい情報量で疲れる・・・のです。それ位読みごたえは半端ない。只、いわゆる群像劇となるので、読み手を選ぶ可能性があります。

基本的には、まずは「カムイ外伝」を読んでから興味があれば「カムイ伝」を読むことをお勧めします。理由としては、「カムイ外伝」は忍者の「カムイ」を中心としたどちらかというとアクション要素も強めのサクッとした形で読める漫画であるからです。
カムイ外伝はガロ連載ではなかったのもあり、比較的マイルド(?)に読めるかと思います。
「伝」のほうはテーマ性(差別とあらがい)が強すぎるので。

あと忍者カムイは殆ど出てこないです。というかタイトルの「カムイ」は恐らく・・・どちらかというとアイヌ語の「カムイ(神)」を指しているのではないかなと思っています。


なんで忍者カムイ出てこないの?って話になるのですが、忍者としてのカムイは「抜け忍」であり、里からカムイを殺すための追忍がどんどん派遣されてくるわけですね。
「カムイ伝」は群像劇であり、舞台となる地は「日置藩」という場所で第一部は進みます。一方カムイは方々を転々として追忍から逃亡しているため、実際に「日置藩」に定住することが困難だからという理由です。

じゃあメインキャラって誰になるんだ?って話で・・・見出しにある「正助(しょうすけ)」という農民(農民の中でも身分の低い下人)のキャラクターが主人公になります。頭がよく要領も良い聡明なキャラクターですが生まれが下人故・・・「何故生まれで全てが決まってしまうのだろう?」とカムイと似たような考えを持ちます。

只カムイのように自由を欲し力を手にするというよりは、持ち前の頭の良さを活かして少しずつ少しずつ身分関係なく協力する、という事を説いて回り・・・うまく物事を進めようと努力していきます。

正助を中心に話が進むため、巷では「正助伝」でよくね?って声も上がるほどで。只やはりカムイのような忍術を使ったりするわけではなく、あくまで「テーマ」である「差別に対する抵抗」が前面に押し出されているので、結構読むのは大変だと思います。それでも第一部のラストはぜひ、見てほしいなって思います。

武士は武士で、お上(=幕府)に力を示す〇万石(米の量)で悩み・・・、その武士は農民へ重税として重い年貢(=米)を課し、不満を持った本百姓(土地を持っている百姓)は身分が下となる下人(土地を持たない小作人扱いの百姓)を差別・虐げ・・・、さらにその虐げられる下人でさえ、さらに弱いものである非人(=農業が許可されておらず、動物の死骸などを解体することを仕事としていた為忌み嫌われた)に対して差別・虐げるわけです。まさに弱いものがさらに弱いものを虐めてうっぷんを晴らす世界・・・。

現代社会にも通ずると思うのですが、今も昔も変わらないのだなあと思うのです。今の時代は・・・、パッと見た限りの生まれの身分差は無いけれど・・・。実際蓋を開けてみると流行りの「親ガチャ」という言葉であったり、生まれの差はあったり、弱者男性煽りであったり・・・性別の差であったり・・・今は今で、見えなくなった分より卑劣化しているような気がします。悲しいですよね。とても悲しい。結局人間は変われないんだな・・・って思うのです。
もちろん、自分自身も含めて・・・。

〇「カムイ外伝」と忍術とインフレしない必殺技

上述したようにカムイ外伝は読みやすい方になります。
第一話から既に設定などいきなりなく「抜け忍」として追っ手となる追忍から逃亡しつつ・・・戦いが避けられないとなると戦うといった形で物語が進みます

基本的に一話完結で最初は進んでいくのですが、スガルの島編から単行本1巻-2巻程のまとまった長編ストーリーとなります。

そしてこの作品の特徴というべきか・・・カムイは忍者ですが、いわゆる忍術らしい忍術が出てこないところが「イイ」です。
例えば・・・分身の術みたいな絶対に実現は無理だろう・・・と言ったような忍術が出てこないのです。
忍者漫画「サスケ」にあったような「微塵隠れの術」みたいなやつも出てこないです。
また、手裏剣を投げたり、マキビシをまいたりはしますが、水の上を走ったりはしません。

剣戟シーン 外伝より 躍動感すごいですよね 切っているのはウツセ。


このように、基本的に再現は「絶対無理だろう」って言う術は(ガチ初期に神通力はあったが・・・あれも言ってしまえば豊富な経験と勘と催眠能力によるものと解釈できなくもない・・・)無いのがこの作品のいい所なのかなあと思います。

手裏剣や千本針投げたり、カブト割り投げたり、それを鎖帷子で防いだり・・・刀で切りつけたりはします。あと結構「刀」で勝負するシーンが多いイメージです。
忍術だと・・・おぼろ影とか、春花の術(風上から麻痺や毒の粉を気づかれないように撒く)であったり、いちょう返し(投げた手裏剣をそのまま掴んで投げ返す技)だったり、隠月(カゲリ 葉っぱや動物などで敵の視覚を遮りその対象物ごと敵を投げたクナイで仕留める技)であったり単純な剣術から単純な棒術などが出てきます。実際に再現できそうな感じがありそうな術が多いですね

そして何より技の「インフレ」が起こらないのです。
基本的に登場する忍者(追忍含む)は、一撃必殺の「術」を持っていることが多いです。そして・・・基本的にその一撃必殺ともいえる術は門外不出、自身のみが知っている秘術になるわけです。その技を披露した相手は死んでもらうしかない。なぜならばその術が他人に知られてしまえば、対策を編み出されてしまい必殺技としての価値がなくなってしまうからですね。
カムイはいくつか自身が編み出した秘術を持っています。代表的なものとしては「夙流(しゅくりゅう) 変異抜刀 霞切り」と「いず(づ)な落とし」ですね。外伝の物語初期から終盤までずっと「必殺技」の地位を保ち続けているのです。(編み出した経緯は「伝」で語られます)。
基本的にこの技は披露した時点で敵は「死」ぬのです。文字通り一撃必殺の技で、追忍側も「霞切りには気をつけろ」とは言うものの、その技自体の実体ははっきりしていない・・・からこそ気をつけろと念を押すんですね。
ただし一部の強キャラ(名張の五ツ、スガル、不動、ウツセ)は必殺技の「霞切り」で殺せなかったりします。只・・・味方となったり、「十文字霞くづし」などのいわゆる霞切りに対するカウンター技で対応したりして、特段インフレが起こらないまま物語は進んでいきます。インフレが起こらないのはイイですよね。


カムイ

〇忍者「不動」とカムイ (以下ネタバレ超+)


超ネタバレを含みます。 

ストーリー「スガルの島」にて登場する、「不動」という忍者について書きます。
このキャラは恐らく、物語の中でも五本指に入るくらいには強い忍者になります。

まず、霞切りは何度か作中で破られている話から・・・。
カムイ外伝1巻に「名張の五ツ」というキャラクターが出てきます。アニメ版にも登場しているのですが、このキャラクターは外伝で「初めて」カムイの霞切りを破った男になります。只・・・実力そのもので打ち負かしたわけではなく、名前にある「五ツ」の通り、五ツは先天奇形児であり生まれつき腕が3本ある(普段は1本隠してる)人間だったのです。だからこそ虐げられ差別され・・・だからこそ忍びの道に入るしかなかった。だけれど忍びの世界ではその3本目の腕が必殺技として敵に対して有意に使えた。皮肉ですね。
だからこそ「1回目」の霞切りはかわすことができたのです。カムイもそれに気づいた際とても驚きますが、「だが2度目は効かぬ、どうする?」と問うており二回目は普通にカムイは五ツを殺せたでしょう。しかしお互い差別された者同士・・・思うところがあったのか、五ツも「抜け忍」になることをきめ、カムイに別れを告げて去っていく・・・というエピソードがあります。

このように「ちょっと特殊」なパターンで霞切りを破ってくるキャラが出てくる程度で初期は進みました。

しかし、スガルの島に出てくる抜け忍くノ一である「スガル」はカムイの霞切りを初見でかわしています。初めて多分実力で霞切りをかわしたのはスガルが初だと思うのです。しかしその「スガル」さえ殺した不動という忍者は・・・、
「自身に霞切りが披露される前に、霞切りを見て盗み完全にコピーする」のです。
カムイは作中である夜に、顔を隠した忍者(=実は不動)に「霞切り」を喰らいます。しかし自身の編み出した術であるからこそかわせたわけですが、
「おいらの他に霞切りを使うやつがいるとは・・・」と驚愕するわけですね。
その時霞切りを打ち破ってきたスガルに対して「まさかスガルが・・・?」と頭をよぎり疑うわけですが、その実コピーしていたのは霞切りを直接披露したこともない「不動」だったわけで。

不動は元々、「抜け忍」というウソをついてカムイの懐に入って来た追忍でした。不動は表向き、「渡り衆」という抜け忍が集まって作られたサメ狩り集団の組織を束ねる頭領でした。抜け忍を束ねて「追忍」であることをカモフラージュしていたわけです。
そして抜け忍集団であることを証明したうえでカムイの信用を勝ち取り、スガルの島に滞在するようになります。
そして「霞切り」を披露したカムイを見て、その術を「見ただけで」完全コピーしたわけです。見ただけで、しかも短期間に完全コピーは相当な「猛者」だったと思います。
そしてカムイに対して夜な夜な闇討ちをトライしてくるわけです。

霞切りをコピーされたカムイは「このままだとやられる・・・」という事で「霞切り」を使ってくる相手ならば、「霞切り」に対しての対特攻カウンター技が必要と考え、「十文字霞くづし」を編み出します。

そして終盤に入ると・・・カムイの討伐のため、不動はスガルも含めたカムイの味方を全員殺し・・・、渡り衆として従えていた抜け忍達も皆殺しにします。
そして不動はカムイに姿を晒し、最後の1VS1が始まるわけです。
カムイは抜け忍達とスガルとその一家に情が湧いていたのもあり、珍しく激高し不動に一騎打ちをしかけます。カムイに対して不動は「カムイより体術の優れた」霞切りを披露しますが、カウンター技である「十文字霞くづし」の存在に気づけず、負けてしまいます。そして四肢(腕2本と足1本?)を切断された不動は、激高したカムイによって「生きたまま」サメにゆっくり食われるよう船につる下げられ、カムイの手で残酷にいたぶられサメに少しずつ四肢を喰われながら息絶えます。ここまで凄惨な復讐を果たしたシーンは外伝史上初でしたし、ここまでカムイが激高したのもここだけだと思います。
そして不動は「死んだ」わけです。そして物語は進んでいくのですが・・・

「不動」には息子がいたのです。


〇「百日(ももか)のウツセ」と「夙(しゅく)のカムイ」

前見出しに書いた通り、「不動」には義理となる息子がいたのです。

百日のウツセ


その名前は「百日(ももか)のウツセ」。名前の理由は・・・、百日も経たずに食い扶持が確保できないという理由から捨てられた捨て子(ルビをうつせと読む)であったから。百日も経たずに捨てられた捨て子を、たまたま見つけた不動は「何か思うところがあったのか」拾って育てるのです。そして父親兼忍術の師匠として、ウツセを育てます。ウツセも厳しいながらも不動を父親と師匠両方の意味で慕い、父の技術を吸収していきました。ウツセには天分(=才能)もあったことから、メキメキと強くなり、下忍ながらエリートとして、特に剣術の才能があったため柳生に表向き下働きとして奉公に入ります。
しかしその実目的は「柳生の秘太刀」を盗む事。しかもそれを簡単に「見て盗む」くらいにはやってのけたのです。父親似ですね。
そんな形で表向きは忍術も剣術もできない只の「奉公人」を演じながら・・・裏では「柳生の剣」を盗んでいる最中に、小頭がウツセの元にやってきます。

そして「不動が死んだ」と伝えるのです。当然ウツセは驚愕し、「ゲッ、親父が!?」と驚いた後涙を流すのです。そして「だれが殺した」と・・・。

そりゃあ自分にとっての命の恩人でありかつ父親でありかつ師匠が殺されたら、そりゃショックを受けるわけで・・・。そして秘太刀を盗んだ柳生を抜け、仇討ちとしてカムイを追うようになるわけです。


百日のウツセ カムイに比べると2.5枚目って感じがイイ


不動のあだうち そりゃキレるよね あの最期は

ウツセのブチギレシーン。ちなみに決闘は作中で「2回」行われます。上記のシーンは「1回目」のシーン。
1回目の決闘時は明らかに力量としてはウツセ>>>>>>>カムイだったのです。
霞切りも効かなければ体術も効かない。すべてにおいてウツセが勝っており、作中で初めて明確に「死」が見える明らかな敗北をカムイが喫したシーンでもあります。奇跡的にカムイは助かるわけですが・・・。
並行世界が10個あったとしたら、多分8個の世界線ではカムイ負けて死んでると思う。それ位の奇跡だったと思います。


1戦後、ちょっとカムイに対してビビるウツセ

そして紆余曲折を経て・・・「カムイ」が作中で「一緒に抜けないか」とも誘うのです。これがすごい良いシーンで。1回目の決闘後カムイは指導者(=阿多棒庵)ができたこともありメキメキと実力を伸ばす中、ウツセは秘太刀を盗んだとして柳生から追われる立場になり逃亡の日々を重ね実力をあげるどころではありませんでした。
ふたりの実力がイーブン位になった時に、カムイはウツセに対して「一緒に抜けて共に旅をしないか、二人なら俺達最強だぞ」ってカムイにしては珍しく「すげーーーーーーーー珍しいお誘い」をかけるのです。ウツセはこの時点でカムイの実力はまだ自分より下と思っているので「ふざけんな」って一蹴したわけですが・・・。

ここで思い返すと、二人ってすごい境遇から何からが似てるんですよね。年代というか、おそらく年齢もほとんど変わらない。
カムイは非人であり力が欲しくて忍者になって、その忍者の世界の掟が嫌で抜け忍になったわけだけれど、赤目の師匠の指導のレベルや天分もあったことから強い忍者となった。
ウツセは捨て子であり不動に拾われ育てられながら厳しく忍術を指導されて、不動という良い指導者に育てられ天分もあったことから強い忍者となったわけで。二人の違いは「抜け忍」か否かだけのような気がするのです。
ウツセは拾われていなかったらとうの昔にこの世にいないわけですから。

だからこそカムイはウツセを「誘った」のではないかと思うのです。エモい。
まあ断られちゃうんですが・・・。

2回目の決闘シーンでは、明らかに実力をつけたカムイがウツセを圧倒しちゃうんですよね。只「殺しはしない」のです。足の裏切っておしまい。そして最初の決闘の時に「この程度かよ」ってウツセから言われたセリフをそのままお返しして、踵を返してカムイは去るのです。ウツセも「殺さないのか」といった表情で。その後ウツセの描写は少なくともカムイ外伝中には語られていないのですが、まあ恐らく・・・「抜け」たのかなあって思うのです。任務失敗=死ですし・・・。ウツセほどの実力者なら余裕で抜けられると思うし・・・。

以降ウツセは出てこないのですが、作中として「カムイ」の年齢的にも出自的にもすべてが割と鑑写しでカムイ本人が「ライバル」と認めた唯一の相手でもあるので・・・私はウツセが好きなのです
ウツセは実はカムイが出てこないところで色々とエピソードが書かれていて、なんだかんだ子供に甘かったり子供に忍術を親父(=不動)のように教えたりその成長を嬉しそうに眺めたりその成長を見ながら自分の子供の頃を思い出したり・・・、そういったエピソードが「あえて」漫画に書かれているのです。ウツセの人間味・・・。そして若いが故の「甘さ」も描写されてて、完全に任務一筋であった「不動」の親父に比べると、まだ若さゆえの甘さがあって

子どもを気にかけてちょっと眠るのに困ってるウツセ


そこがすごい好きで・・・。カムイほど明らかにイケメンとしては描かれていないけれど、普通に整えたらめっちゃかっこいいビジュアルで・・・。何となく人助けとかもしちゃうタイプの人で・・・。そんなウツセがとても大好きなのです。

ネタバレはしてしまったけれど、ぜひ・・・アクションシーンもものすごい迫力でかっこいいのでぜひ読んでほしい・・・です!!!!!!!!!


〇白土三平先生の生い立ちについて

前提として、白土三平先生の作品は基本的に「差別(特に身分差別)」とか「生まれ」の不自由さをテーマに取り扱われることが多いです。そして登場人物たちが「差別」などにあらがうんですよ。そして・・・強大な力(権力とか、制度とか)には勝てず結局BAD END・・・みたいな作品が多いのです。これは白土三平先生の生まれが関係しているのかなあって思うのです。
白土三平先生のお父上はプロレタリア画家の「岡本唐貴(おかもととうき)」さんです。この方もとても有名なプロレタリア画家で。
蟹工船の作者の、小林多喜二さんをご存じでしょうか。あの方もプロレタリア派であり、その影響で特高警察に捕まり拷問を受け、凄惨な拷問の結果亡くなってしまった方です。岡本さんは小林多喜二さんの友人であり、また亡くなった際腫れあがった顔を遺影にするのは・・・という事で多喜二さんが元気であった頃の顔を絵に描いた人でもあります。

もちろん岡本さんもプロレタリア派であるため、特高警察に追われる身であったほか、拷問も受けたようで拷問の後遺症で「脊椎カリエス(結核性脊椎炎)」を発症、まともに働くことができなくなってしまいました。
家族一同追われる身であったため、戦後の時代まで各地の外国人集落であったり、被差別部落に身を寄せていたようです。(外国人集落であったり、被差別部落の人々は差別されるがゆえに結束力が高かった)。その時の経験が上述した漫画の作風に出ているのだと思います。また働けなくなった父に代わり、長男として畑仕事や力仕事などをして過ごしていたほか、食べるものにも困っていた分、野生の植物や動物を食べていたりしていたようです。カムイはじめ白土漫画のところどころに「食べられるもの」としてカエルなどが挙がりますがこの時の経験があるのかなあって思っています。

戦後は紙芝居や貸本漫画をしつつ過ごし、そののち雑誌で漫画連載を始めます(忍者武芸帳)。結果人気漫画家となり、漫画ガロの設立者である長井社長が青林堂を設立し、そこで「カムイ伝」連載の為にコミック「ガロ」を作るのですガロって元々はカムイ伝連載の為に作られた雑誌なんですよね。そこに水木しげる先生やつげ先生も連載していた形になります。ガロは「原稿料」が出ない(雑誌の印税は出る)ので白土先生は赤目プロダクションを設立し、スタッフの給料など養っていくために「カムイ外伝」や「ワタリ」などを並行して書き続け、現代の忍者漫画の開祖になります。
作風は上述した通り、生まれや過去の経験が来ているのかなあと自分は解釈しています。

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