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朝がくれば起きて夜がくれば眠る。

今日は起きてから昼過ぎまでぼーっとして過ごした。とうとう昼を過ぎ いよいよすることがなくなったので 図書館から借りていた月と六ペンスを読むことにした。サマセット・モームのベストセラーだが 今まで読んだことはなかったので今回初めて読む。

読み始めてすぐ 序章で書かれている一節が氣にいった。

だれの言葉だったかは忘れたが、人間は魂のために、一日にふたつはしたくないことをしたほうがいいらしい。なるほどと思ったわたしは、以来その教えを忠実に守ってきた。つまり、朝がくれば起き、夜がくれば眠る

月と六ペンス サマセット・モーム 金原瑞人 訳(新潮文庫)

この物語の語り手は さらに自分は生まれつき苦行を好むところがあると言い 自分の肉体にさらなる負荷をかけるため 週に一度『タイムズ』紙の文芸別紙を読むという。

モームはフランスのパリに生まれたが両親が幼い頃に亡くなり 南イングランドの叔父のもとで育ったらしい。わたしはこういった類の皮肉が好きだ。特にこのタイミングでこの部分が氣にいったのは わたしの心が最近の天氣のように薄暗く重い雲で覆われているせいかもしれない。

ここを読んだ瞬間 わたしの心は薄暗い雲間から一瞬太陽が顔を出し 世界が明るくなったようなそんな高揚感を感じた。それからわたしの心をわずかに照らした太陽が一瞬顔を出したのち 雲間にその姿を隠すようにその感覚はすぐに萎んでいった。 

とは言えこの一節はわたしに生きる力を与えてくれた。朝がくれば起きて 夜がくれば眠る。それだけでじゅうぶんではないか。
なんなら わたしは今日さらに買い物まで行ってしまった。これ以上なにかしようものなら来世の分の魂の修養までしてしまうに違いない。

当然そんなことはあり得ないのだが そんな空想をして自分を嗤えたのがありがたい。

この社会をまわしている皆さんにいたっては何を言わんやである。

ともかく人間一匹 起きて寝る。
そのことだけでもじゅうぶんではないか。

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