蝦蟇が叫ぶ街3
マダム浙江省とその一派の中年女性が、公園の近くの広い道路で立ち話をしていた。マダムの側近である中年女性、磯野美園は、頬にできた赤いぶつぶつを気にしてみなに相談していた。美園は数日前、洗濯物を干すためベランダに出た。すると一匹の大きなヒキガエルが植木の横に鎮座していたので、カバっと素手で捕まえ、そのまま遠くに投げ捨てた。四肢を広げたカエルの身体が雲一つない青空に舞った。美園はその後、手を洗わず顔に触れ、ぶつぶつができたのだという。ぶつぶつは少しも治らず、むしろ顔全体に広がっているらしく、病院に行こうか迷っているという。病院に行ったほうがよいと別の中年女性が助言する。行っても無駄であるとマダム浙江省が言う。やがて美園の顔のぶつぶつは見る見るうちに大きくなり、そのうちの一つがプチっと破裂したかと思うと、割れた半球状のなかから小さなカエルがぴょんと跳び出してきた。ぶつぶつはなおも破裂しつづけ、そのたびにカエルがぴょんと跳び出してきた。美園は顔面崩壊のパニックで叫んだ。恐怖のあまり己の顔に触れることすらままならず、次から次へと跳び出してくるカエルになす術なく立ち尽くしている。マダム、助けてください。この気色悪いカエルどもをなんとかしてください。いくらマダム浙江省といえどもあなたたちと同じふつうの中年女性なのでこのような異常事態に直面したとき何か特別なことができるわけではないのです。マダムは自分の能力の限界を冷静に説明する。耐えなさい。いまあなたの前世のカルマがカエルとなって噴出しているのです。耐えて、カルマを落とすのです。
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