身辺雑記12

子供のころ、ホテルのバルコニーから人が転落する瞬間を見た。それは流れ星を目撃するときのような突然の出来事であり、落ちたら死ぬ高さから人が転落したという事実をなかなか受け入れられなかった。その男はスーツを着たまま頭から血を流し、ピクリとも動かなかった。頭は半分ほど潰れており、体液で髪の毛が濡れていたが、顔の損傷は比較的少なかった。私は近づいていってその顔を覗き込んだ。男は笑っているように見えた。ちょうど横倒しにされたジェームズ・フーコンのような笑顔だった。あの日から刑事ドラマで人が死ぬのを見るたびに冷めた気持ちになる。それどころか、彼らの猿芝居に対し、冷たく尖った怒りのような感情すら込み上げてくる。死にリアリティがない。そういう私は、死の瞬間を生で目撃したことで優越感に浸っているのだろうか。きっとそうなのだろう。他人があまり経験したことがないことをたまたま経験したことで優越感に浸っているのだろうか。きっとそうなのだろう。自分が優越感に浸るためには人の死すら利用しようとするその浅ましさを。

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