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幽霊のSNS : 短編小説
私が死んでから3日後、スマートフォンの通知音で目が覚めた。そう、幽霊にもスマホがある。死後の世界では、生前のデジタルデータがそのまま引き継がれるのだ。
画面を見ると、「幽霊SNS」というアプリからの通知だった。「新しい幽霊生活、いかがですか?」
私は苦笑しながら返信した。「まあまあかな。壁すり抜けるのは楽しいけど、誰も見えないのはちょっと寂しい」
すると、友人リストに登録されている先輩幽霊から返信が。「新人さん、そのうち慣れるよ。それより、生きてる人たちの様子を覗き見するのが一番の楽しみさ」
好奇心に駆られ、私は元同僚のオフィスに向かった。そこで目にしたのは、自分の机に座る新入社員。彼女は私のパソコンで、私のSNSアカウントを操作していた。
「えっ、それって…」
すかさず先輩幽霊から通知が。「そうそう、今や企業は従業員が死んでもSNSアカウントを引き継いで宣伝に使うんだ。著作権?そんなの死んだら関係ないさ」
愕然とする私。しかし、その瞬間、画期的なアイデアが浮かんだ。
「ねえ、私たちも幽霊SNSで企業アカウント作って、生きてる人たちのSNSをジャックしない?」
提案するや否や、幽霊仲間から「いいね!」の嵐が。
こうして始まった幽霊たちの反乱。生前のデジタルスキルを活かし、私たちは次々と企業SNSを乗っ取り、皮肉に満ちたメッセージを発信し始めた。
「今すぐ買わないと幽霊になっちゃうよ!でも、幽霊になったら買えないけどね」
「死んでからが本当の人生。だって、会社に縛られないもの」
パニックに陥る企業。しかし、幽霊に対して法的措置を取ることはできない。
やがて、この騒動は社会現象となり、人々は自分たちの生き方、働き方、そしてデジタル遺産の扱いについて真剣に考え始めた。
皮肉なことに、死んでこそ私たちは、生きている人々の人生に影響を与えることができたのだ。
そして私は、幽霊としての新しい「人生」に、ようやく目的を見出した気がした。スマホの画面を見つめ、にやりと笑う。次は、どの企業を驚かせようか。
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