2015 東京学芸大学 E類教育支援専攻 多文化共生教育コース 小論文 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」



問1
 グローバル化とは、世界の共通性の促進、普遍化の動きという側面を持つ。たとえば、西洋に由来する時間概念が世界において標準化されたり、資本主義にもとづく貨幣経済の原理が常識化してきたこと、さらにメディアや交通手段の発達による他国の文化・社会事情を知ることができるようになり、インターネットによる情報の自由化は、文化を超えた意識的距離感を縮めてもいる。また、環境保全の問題が全人類に共通の目的になることによって、文化の違いを超えた全地球レベルの協調体制を必要としている。それゆえ、グローバル化とは、世界的な共通項の増大化だと言える。他方で、世界の中で人々や社会の中に共通項が増大し、共通のシステムや意識のなかに組み込まれると、ある地域で起こった問題が連鎖反応をおこし、他の地域に波及するという問題もある。つまり、グローバル化とは、やっかいな諸問題もまた共通化、共時化されることを意味する。(391字)


問2
 グローバル化による共通性の促進や、普遍化の動きが、文化を消滅させる可能性もあると考える。なぜなら、先進国が発展途上国の労働者を雇用する場合などに、先進国の方法がそのまま適用されることも多いため、それまでにあった文化や風習などが消滅していく可能性があり、人々の知らないところで世界が均質化していく傾向があることを指摘できると考えるからだ。したがって、わたしの文化が他者にとっての異文化としてあるためには、異文化社会が、どのようにしてグローバル化の影響に抗しているのかを知る必要があると考える。それゆえ、異文化社会を知ることが、自分たちの文化を保持することにもつながると考える。
 それゆえ、異文化に対する世界の均質化について、グローバル化において多様な文化の影響にさらされながら、いかにして自己の文化や風習を維持するかが課題となると考える。そのためには、世界から隔絶している異質なものを異文化として考えるだけでなく、グローバル化がもたらす均質化に加えて、同時代にある多様な文化と緊密に結び合うなかで生まれる独自性や固有性に着目することが必要だと考える。なぜなら、われわれにとって異文化と呼ばれるものが異文化として成立している、根本的な要素を見出すことが、翻って自己の文化を維持するために必要だと考えるからだ。以上より、異文化を知ることが自分の文化を維持することに役立つと考える。(586字)



問1
経験/敬虔
経験:経験豊富なベテランの医師がこの手術を執刀する。
敬虔:敬虔なカトリック教徒である彼は、毎晩祈りを欠かさない。


問2
本来、言語の実体は音声であるのに対し、日本語は文字が言語の実体である点で、本来のことばのあり方とは順序がさかさになっている言葉であるということ。


問3
 日本語における漢字の役割は大きく三つあると考える。第一に、これまでになかった新しい概念や事物を表現する役割があると考える。というのも、幕末や明治期に欧米諸国から入った概念・用語を日本語に取り入れるために、漢字によって新しい語彙が生み出されたからだ。たとえば、「自由」、「科学」、「哲学」といった学問や思想にかかわる言葉に加えて、「野球」といった言葉も明治期に漢字を用いて表現され、現在もこうした漢字による造語は生み出されている。
 第二に、課題文でも述べられているとおり、かな表記では誤解を招くことばでも、漢字表記によって一意に決定づけることができることである。たとえば、「かぜ」という言葉は、かな表記では意味を特定できない場合でも、「風」や「風邪」と漢字で表記することによって、一意に意味が決定される。
 第三に、漢字は一字でも意味を表すことができるため、情報伝達効率を上げる役割を果たしていると考える。たとえば、「正」という字はこの一字で、「正しいこと」や、「表向きのもの」、「真ん中にあるもの」という意味を表現する。たしかに、他の言語においても、ある言葉が複数の意味を持つことはよくある。しかし、一字でもって複数の意味を担うことができる点は、漢字に固有の特徴であるため、漢字は情報伝達効率が高い言葉だと考える。以上が日本語のなかでの漢字の役割だと考える。(577字)


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