木の根

 大きな道のちょうど真ん中。あっちの車線とこっちの車線を区切るためにコンクリートのブロックが並んでいる。そしてそれはずっと続いている。

 ある日、仕事が終わっての帰り道の話。ブロックの近くで野良犬が死んでいた。血もでていなく、目も閉じられていた。可哀想にな、と思いながらもそこを通り過ぎた。

 次の日もその死体はそのままだった。その次の日もそのままだった。ここは毎日乾燥している。朝方は冷えるとはいえ、日中はそれなりの温度になる。

 今日もその死体はそのままだった。ハンドルを握り通り過ぎるほんの少しの間だけ観察してみる。その死体は横たわってはいたが、すこしずつ前足と後足が上がってきていた。

 空は今日も抜けるような青だった。

 その死体がある車線の路肩には大きな木があった。その距離は10メートル少々。

 できるならその木の根元に埋めてあげたかった。

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