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人間の生活はライブたりうるか─2024.6.28 高円寺で「入れるVlog」をやる

自分で言うことじゃないのだろうけど、僕は芸人として、だいぶ変わったことをやってきた。「事務所に所属しない芸人」というのもマイノリティ的な選択なのかもしれんけど、たぶん問題はそんなとこじゃない。

どっちかというと、制作会社が企画するあらゆるライブに自分から出ず、自分から業界と絡むことなく、ただただ勝手に単独公演をやり続けるというのが、かなりめずらしいご飯の食べ方なんじゃないかと思う。

でも実際、事務所無所属でお笑いで生きていくには、これはつまり、芸人としての自分のコンテンツで生きていくにはということだけど、単独ライブをやりまくるのが一番手っ取り早いと、直感的に思ったのだ。

なんせ僕にはコネとかカネとかツテとかが全くない。だから、とにかくファンをたくさん作って、みんなに会いに行きまくるしかないと思ったのだ。

今思えば、業界でのツテとかコネとかは、別に後からでも作れた。作れることを知らんかった。めっちゃアホだったと思う。3年くらいかけてちゃんと挨拶とか回ってたら事情が変わってたんやと思う。が、知らんかった。

ということで、僕は単独ライブをやりまくった。会場を借りて、受付もスタッフも全部自分でやって、ひたすらコントばっかした。たまにトークばっかした。とにかくやりまくった。

ここで「やりまくる」というのは「なるべく尋常じゃないペースでやりまくる」ということだ。年に一回とか、季節に一回とかじゃ、ライブだけでは食べていけない。僕がもう既に日本を代表するコメディアンだったら別だけど、まったくそうじゃない。

だから、月に4〜7回くらいやった。一回一回のお客さんは少人数でよくて、10人〜30人くらいの規模の公演を、とにかく大量にやり続けた。それでのみ、事務所無所属の芸人はお笑いで飯を食えると直感的に思った。

実際、そうだった。現状ギリ食えている。でもそうは言っても、僕の場合は書き物の仕事とか、インタビューがどうとか、そういうのでかなり上乗せがある。それでやっとこさという感じである。ここにはかなりのラッキーもある。僕は自分の文章が仕事になるレベルだということに、コロナ禍あたりまで全く気付いていなかった。本が出たこととか、今でもたまに驚く。なんでだよって思う。

で、なんだけど、最近ぼくは自分の活動についてちょっと疑問を感じ始めている。ある種の軌道にはどうやらものすごくちゃんと乗ったし、たぶん体力と人気の続く限りは、北は札幌、南は福岡、もしかしたら沖縄まで、ライブをして回り続けることができるのだと思う。今の感じのライブはたぶん永遠にできる。コントとおしゃべりと書き物のしごとで、生活はじゅうぶんできそうだ。

でも、疑問なのだ。それって結局は王道とされる芸人さんのやり方をものすごく細かく微分しているだけというか、僕を積分したら全然オーソドックスなお笑い芸人になってしまうなと思うのだ。

要するに、僕がやってることを50人ぶん集めたらそこそこ大手の事務所になっちゃいそうだし、僕がやってることを1000人ぶん集めたら、最大手事務所になっちゃいそうなのだ。

もしそうなら、せっかく一人で勝手にやってる意味、あんのかなって思う。

自分の人生における仕事は、オルタナティブ的なことをひらめくこと、僕がいなかったら草むらのままだったところに足跡をつけること、その全てを自分らしく楽しみながらこなしきること、だと思っている。

だったら、もう少しおおざっぱで、もう少しユニークなことができてもいいのにな、と思う。

「おおざっぱさ」とは捨象から生まれるおおらかさのこと、なんだと思う。何かを捨てなきゃいけない。既存の、いままで僕がやってきたライブから何かを捨てるとしたらなにか。もともといままでのライブ、僕はネタしかやってなかった。ということは、ネタをやめるしかないのだ。

そこで僕は、今日6月28日の丸一日中、ただ暮らすことにしようと思う。高円寺駅から歩いて5分ほど、きっと新高円寺駅からも同じくらいの距離にある、オフィスunbuliltさんというシェアスペースで、ただ生活をすることにする。入れるVlogである。

そこには、どんな人が来てもいい。ただ僕は生活をしている。仕事をしたり、休んだり、たばこを吸ったり、本を読んだりする。入場料1000円としているけれど、ぶっちゃけ払いたくないというなら払わなくても一向に構わない。生活をしていたら、誰かが無料で入ってくるということは、まったくもってありうることなのだから。

これは一周回って現代アートとか、パフォーミングアーツの何かと完全にぶつかってしまっている気もするが、あるいはそういう界隈でやられてる気もするが、別にそんなことはどうだっていいのだ。

僕はただ自分の好奇心として、人が暮らしているところに人が来たとき、何が起こるのかを見てみたくなったので、やってみたいのだ!

同じような好奇心のある方はいらしてみてください。僕はまったくもってふつうに生活をしています。

6.28(金)「第177回単独公演 九月の生活ライブ」
時間:0:00‐24:00
場所:オフィスunbuilt
(東京都杉並区高円寺南2-22-6 2F)
料金:1000円

九月の生活ライブ

ちなみに、土日は同じく高円寺で、10時間✕2のめちゃくちゃコントするライブをします。そちらも是非どうぞ。こっちはめっちゃネタです。

6.29−30(土・日)「第178回単独公演 高円寺九月展・初夏」
時間:各日12:00‐22:00
場所:高円寺BLUE MOON
(東京都杉並区高円寺南3−23−16 2F)
料金:入場1000円/応援入場2000円
内容:ギャラリーを舞台に、壁一面にコントタイトルを張り出し、まるで脳内に入り込んだかのような臨場感ある魔界演出のコントライブです。20時間かけて200本のコントを上演します。予約不要。開催期間中はいつでも入退場可です。

サポート頂けた場合、ライブ会場費、交通費などに宛てます。どうぞよろしくお願いいたします。