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モーゼになって「どうもー!」って言いたい

お笑い芸人は「どうもー!」と言いながら舞台に登場する。

漫才師は常にそうだし、コント師もライブのオープニングでは「どうもー!」と言いながら登場する。僕はあの瞬間が好きだ。芸人の色気が出る瞬間の一つだと思う。

緊張感と期待感がある場の空間を、声一つで切り開いて、自分のものにしてしまう感じ。上手い人だと、本当に声が空間を切り裂いていくのが見える。そのたび、なんか「モーゼだな」と思う。

お笑いに限ったことじゃないけれど、好きなものをライブコンテンツで見るのは結構凄いことである。「生の人間が目の前で何かをする」っていうのは、生命力の根源に触れるみたいな、結構すごい意味があると思う。

それはたとえば、「クラスメイトとして出会うこと」よりも、ずっと本質的にその人と出会ってるのだと思う。そういう濃密さがある。

そのぶん、お客さんだってちょっと緊張する。構えてしまったり、怯えてしまったり、空間の情報量にそわそわしてしまったりする。その状況全体を切り開いていくのが、あのモーゼを思わせる「どうもー!」である。

あるいは、モーゼ本人も海に向かって「どうもー!」と言っていたのかもしれない。海に向かって「どうもー!」から始まるモーゼの単独ライブ、盛り上がっただろうな。海が開くのはさすがに人類史上最高のオープニングだもん。

僕もそういうふうな、凄い「どうもー!」を言ってみたい。どうやっても海は開かんだろうが、素質がないではないと思う。なんせ僕は声がデカい。これは嬉しいことである。

僕の声はマジでデカい。なんせ野球部で一番声がデカい奴だったので、圧倒的にデカい。声がデカいだけで背番号をもらったこともある。声がデカいだけで体育祭の応援団長をやったこともある。声がデカいだけで目上の人に嫌われていたこともある。声量には自信と定評と功罪がある。

もちろん、声がデカいだけじゃだめだ。音程とか、長さとか、首の向きとか、立ち振る舞いとか、色々なものが乗っかってのモーゼである。技術と経験とオーラが要る。僕がモーゼの背中を見るまで、短くともあと10年はかかるのだろう。その時が来るまでは日々の「どうもー!」を大事にしたい。

が、だが、残念ながらというかなんというか、僕には「どうもー!」と言える場面が少ない。ライブ自体は相当数やっているのだけど、ほとんどが単独公演であり、さらにあらゆるスタッフも僕が一人でやっているのだ。こんなにピン芸人の奴いねえだろってくらいピン芸人なのだ。

結果、僕のライブでは「僕が先に待機していて、お客さんが会場に入ってくるパターン」が圧倒的に多い。モーゼはたぶん、会場準備とか点呼・整列をやらないのに。それをやってしまった時点で、モーゼではないのに。

なんなら、僕のライブ会場では、第一声をお客さんが言うことさえ多い。開演までの間に、ぽろぽろと話しかけられるのだ。「もう入れますか?」とか、「ここで合ってますか?」とか、「ごめんなさい、トイレどこですか?」とか。

それを受けて、僕はたいてい「入れますよ、お好きな席に座ってください」とか、「ちょっと迷っちゃいますよね」とか、「廊下に出て右の突き当たりです」とか言う。愛想がいい性格も相まって、そこから談笑が始まることも少なくない。そんなのモーゼじゃない。クラスメイトだ。

もちろん、そういうタイミングで野球部フルパワーの「どうもー!」を返すことも可能ではある。やろうと思えばできる。

「もう入れますか?」
「どうもー!」

「ここで合ってますか?」
「どうもー!」

「トイレどこですか?」
「どうもー!」

問題は会話にならないことだ。そんな奴が眼の前に表れたら、誰だってちょっと後ずさって行くだろう。僕の「どうもー!」に合わせて潮が引いていく。なりたい感じのモーゼじゃない。


6.9 兵庫県三田市での公演。僕は「どうもー!」と言うに言えない形式。予約不要。
6.15 静岡県三島市での公演。僕は「どうもー!」と言うに言えない形式。予約不要。
直近のライブ予定。予約方法などは以下を参照。

6.7(金)「第170回単独公演 名古屋公演 森は滝の1000倍#2」
時間:①18:00‐19:30②19:45‐21:30
場所:森の会議室
(名古屋市中区丸の内三丁目16−19 丸の内ニューネットビル9階)
料金:各2000円
内容:3ヶ月ぶりの名古屋遠征。名古屋のだいぶど真ん中にある「森」で行う90分のコント公演。絶叫してもいい会場なのでパワー系の内容になる予定。なお、1公演目と2公演目は別内容。
https://tiget.net/events/311746

6.8(土)「第171回単独公演 門戸公演 Vol.1」
時間:①13:00‐14:30②15:30‐17:00
場所:門戸寄席 J:SPACE
料金:各1500円、通し2000円
内容:兵庫県西宮市の会場、門戸寄席さまから招待して頂いての定期公演。この時点でめっちゃよくないですか。初めて九月を見たい皆さんや、いい加減に寄席小屋でも九月を見たい皆さんどうぞ。予約は門戸寄席の安田さま(jspace_event@yahoo.co.jp)まで。

6.8(土)「第172回単独公演 九月の『飲む』ラジオ WEST」
時間:19:00‐27:00
場所:兵庫県三田市 Child-Child
料金:1500円(+1drink)
内容:ボドゲバーChild‐Child主催イベント。九月を囲んでお酒を飲みながら、トークをしたり、コントを観たりする「読むラジ」のオフ会です。YouTubeの企画動画撮影、秘蔵動画の上映なども行います。会場にて宿泊が可能です。

6.9(日)「第173回単独公演 三田の15時間」
時間:14:00‐29:00(翌朝5時)
場所:兵庫県三田市 Child-Child
料金:入場1000円/応援入場2000円
内容:予約不要、開催期間中はいつでも入退場可能なデタラメのコントライブ。九月はずっと何かをやっています。僻地と思えますが意外にも梅田から40分。

6.13(木)「第174回単独公演 九月の話芸 自由形 #7」
時間:19:00‐20:30
場所:オフィスunbuilt
(東京都杉並区高円寺南2-22-6 2F)
料金:1000円
内容:90分、トーク
https://tiget.net/events/323128

6.15(土)「第175回単独公演 静岡県東部界隈」
時間:15:00‐29:00(翌朝5時)
場所:駄菓子カフェせせらぎ
(静岡県三島市芝本町7−6)
料金:入場1000円/応援入場2000円
内容:こちらも予約不要、開催期間中はいつでも入退場可能なコントライブ。九月はずっと何かをやっています。静岡県東部界隈の皆さんにお越し頂きたい。ちなみに東京・神奈川からもそんなに遠くなかったりする。一晩見れます。

6.22(土)「第176回単独公演 東京スケープゴートクラブ」
時間:18:00‐19:30
場所:渋谷松濤BASE
料金:1500円+1drink
内容:新ネタを中心にした渋谷での定期コント公演。東京でスケープゴートにされてしまった人たちのコント15本。
https://tiget.net/events/321176

6.28(金)「第177回単独公演 九月の生活ライブ」
時間:0:00‐24:00
場所:オフィスunbuilt
(東京都杉並区高円寺南2-22-6 2F)
料金:1000円
内容:人間の生活はどこまで生活なのでしょうか。見られても生活は成立するのでしょうか。疑問に思ったので行う、九月が生活するのを眺めるライブです。ご飯を食べたり、仕事をしたりします。話しかけられたら友達と話す感じで応答します。予約不要。開催期間中はいつでも入退場可です。

6.29−30(土)「第178回単独公演 高円寺九月展・初夏」
時間:各日12:00‐22:00
場所:高円寺BLUE MOON
(東京都杉並区高円寺南3−23−16 2F)
料金:入場1000円/応援入場2000円
内容:ギャラリーを舞台に、壁一面にコントタイトルを張り出し、まるで脳内に入り込んだかのような臨場感ある魔界演出のコントライブです。20時間かけて200本のコントを上演します。予約不要。開催期間中はいつでも入退場可です。

6.29(土)「第179回単独公演 九月の怪談 自由形」
時間:22:00‐23:00
場所:オフィスunbuilt
(東京都杉並区高円寺南2-22-6 2F)
料金:1000円(高円寺九月展に参加の方は無料です)
内容:九月による人生初の創作怪談ライブです。雰囲気のある和室で怪談を話します。九月の思う自由形の怪談を準備します。
https://tiget.net/events/323131

7.14(日)「第180回単独公演 生きている感」
時間:開場17:45/開演18:00/閉演19:30
場所:四谷シアターウィング
(〒160-0011 東京都新宿区若葉1丁目22−16 アスティー B1F)
料金:2000円
内容:「生きている感」全開で挑みたいコント15本。ものすごくパワフルな内容になる予定。珍しく小劇場での公演。
https://tiget.net/events/319238

エッセイ『走る道化、浮かぶ日常』はこちら。


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