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たまには誰かとコントするのも楽しい

先月の話になるけれど、2月15日にトゥインクル・コーポレーション所属の先輩コンビ、ジャパネーズさんとスタジオでのコント収録をした。その話を書いておこうと思う。

ひとりコントとユニットコント

ひとりコントの楽しみと苦労

ふだん僕はピン芸人である。ひとりのコントというのは結構制約があるもので、会話ができないとか、傍観者の目線を置けないとか、結構工夫しなければいけないポイントが多い。

これは苦労するポイントであると同時に、楽しいポイントでもある。会話が出来ないことを逆手にとって「説教と意識」というコントを作った。これは強制的にお客さんを話し相手にしてしまうコントである。あるいは、「勉強=納豆」というコントを作った。これは強制的にお客さんをその場にいる誰かにしてしまって、頭の中で同じものを想像し、皆で幻覚を見ようというコンセプトのコントである。

でもでも、複数人のコントもやってみたいなとかねてから思っていた。人数がいると、そういう工夫ないし小細工をしなくてもいい、あるいは別の工夫や小細工が使えるようになる。

ジャパネーズの二人

その点、僕が時たまユニットコントをさせて頂いている先輩コンビ「ジャパネーズ」は、もう僕なんかにもったいないくらい格好のパートナーである。

お二人は物語性のあるコントから、歌ネタ・リズムネタまで幅広くこなすマルチプレーヤータイプの芸人である。僕はお二人のネタで言うならば「これ」が馬鹿で大好きである。

ふだんネタ書きを担当しているウネモトモネさんは、セリフ回しが綺麗でネタの進行役が抜群に上手い。キレツッコミから戸惑いから妙にイノセントで変な奴までこなす幅の広さもある。

対してアチャ・マサノブさんは、妙に間の抜けた雰囲気を醸し出していて、愛嬌たっぷりの演技を得意としている。しかもそれでいて幅が広く、シリアス系の演技もどっしりこなす。

即興性の高いコント作り

僕たちは、集まるとすぐにコントを撮り始める。だいたい、核となるアイディアを持って行くのは僕なのだけど、だからといってその時点では何一つ完成していない。だってそれはまだコントではなく、アイディアに過ぎないのだから。僕は「こういうトーンの何かがやりたい」ということを漠然と話すことしかできない。

それを聞くなり、ジャパネーズのお二人は一気に僕がだいたい何をしたいのかを汲み取ってくれる。このスピード感ったら誰かに見せたいくらいである。めちゃくちゃ楽であり、めちゃくちゃ楽しい。

そしてだいたいの絵が見えたら、僕たちは軽く合わせるくらいですぐにコントを撮り始める。ここまで出会ってから5分である。スタジオでバンドマンが音を出し合って、コード進行だけ決めて、セッションベースで曲を作るのと似ていると思う。

実際にネタを始めると、初期のアイディアになかったものがたくさん登場していく。これが楽しい。モネさんは本筋を適度にキープしてくれるし、アチャさんは本筋を程よく崩してくれる。すると、いつのまにか話が進んでいることがよくある。

ピン芸人でネタ書きから演技まで自作自演で普段やっている身としては、そういうランダム要素が楽しくて仕方がない。だからユニットコントを作るのは楽しい。

今回の撮影で出来たネタの紹介

「試さない人」

一瞬で出来た。当初のアイディアは「こういうのを試さない人っているよね」くらいの話である。イノセントっぽい、無邪気で悪意なく変な人をやるのはモネさんが上手そう。外野から眺めている人はアチャさんかな。僕が真ん中で怒って本筋をキープする感じにしよう。そういうフォーメーションを、特に打ち合わせることなく自然に組み、撮影を始めた。

動画を見てもらえると助かる。めっちゃ楽しい。途中まではあるある系のコントである。僕を起点に、あるあるが左右二画面で進んでいく。向かって右。モネさん。こういう奴いるよね、話聞いてるのに試さない人。向かって左。アチャさん。こういう場面あるよね。人の話が気になっちゃって、なんか自分でやってみたくなること。

ここまでは全然わかる。最後、アチャさんが急に立ち上がるのが意味不明で楽しい。そんなわけない。立ち上がるな。

「絶対に当たるパンチ」

アイディアは僕。伝えてすぐに出来たものである。もう本当に馬鹿である。モネさんがこうやって、アチャさんにこうやって、僕をめっちゃ殴ってください、しか伝えていない。

めちゃくちゃシンプルなフリオチのコントなのだけど、もう殴られながら楽しくて仕方なかった。意味がなさ過ぎる、話が通じなさ過ぎる、さっきまで言ってたのと違う、というのは原初のおもしろだと思う。

やっぱりこういうとき、のほほんとした雰囲気のアチャさんが、一番殴らなさそうだから殴るべきである。そして一番体の大きい僕が、殴られなさそうだから殴られるべきである。無邪気に可愛らしいノリを思いついただけのモネさんが、あたふた混乱する。フォーメーションもこれしかなかった。

僕は殴られるだけなのであんまり画面に登場しない。たまに手が見切れるくらいである。でもそれが楽しい。コントの中であればという条件付きだけれど、たまにはボコボコにされたい。

「ボケた後にめちゃくちゃキレる人」

ああもう、これは撮っていて楽しすぎた。トーク動画を撮影していたら、途中でちょっと広がりそうなやり取りがあった。それをモネさんが「コントにできるんじゃない?」と言った。

その後はすぐだった。大人しそうな仲良し3人組が遊んでるシチュエーションとして、古本市が選ばれた。あとはもう、タイトルの通りである。ジャンルとしては、あるあるを誇張したような日常系コントなのだとは思う。

このコントでは僕がボケ役で大暴れなのだけど、もう自分でも何を言っているのかが分からなくて、何回やっても笑ってしまってダメだった。これは4~5回くらい撮影した中で、ギリギリ笑わなかったテイクを動画として公開したものである。近い種類のコントは「帰宅後」だろうか。

編集する際、あんまりにも笑っちゃっているものだから、少し雰囲気を作ろうと思ってBGMを足した。余計に馬鹿っぽくて楽しくなった。

「今日はカツカレーだよ」

これは僕が持ち込んだアイディアがもとになったもの。もともとは自分の一人のコントとして「今日はオムライスだよ」と連呼するだけのコントをやろうと思っていた。だけど、シチュエーションの緊迫感を出すためには人数が必要で、あんまり上手くいかなかった。それを3人でやり直してみたものである。

いやもう、本当に楽しい。シェアハウスで暮らす楽しそうな奴らが、楽しそうすぎて怖すぎて強い、というだけの内容なのだけど、後半の連呼するところなんて、やってて頭がおかしくなるかと思った。考えてみれば、オムライスよりもカツカレーの方が馬鹿っぽいためアイテムとしてもよかった。

強盗演じるモネさんが立ち入った僕たちのシェアハウスは、お金を盗めるカモなんかじゃなく魔境だった、というストーリーラインなのだけど、中身がなさ過ぎて本当に楽しい。「シェアハウスに強盗が来る」という設定を特に説明なしでやってしまっている反則感もいい。

後半はリズムネタっぽくなる。ここだけ何回か練習した。普通のリズムネタとは異なり、ちょっと変拍子っぽいので乗りにくいのである。「今日はカツカレーだよ」「ラッシーもあるよ」のリズムで4つ打ちっぽく刻みたいところ、「言え!」が挟まるために一拍余るのである。そのグニャ~っとしたリズムがやっていて楽しかった。

「よーい、ドン」

いよいよ本当に不毛なコントのゾーンに入る。これは誰からともなく出て来たアイディアを強引に一つにまとめたらこうなった、というだけのコントである。それぞれ一定の発動条件で「歌舞伎の人」「カニの人」「上唇がなくなる人」になるだけのコントである。

雛形というか、原型にあたるのは「初練習」というコントである。こういうことを言うのはどうかと思うが、ぶっちゃけほぼ同じである。

この手のコント、もう少し台本をちゃんと組むならば、それぞれの人たちの条件が発動されたりされなかったりして、少しずつ状況が変わっていく、みたいなコントになるのだろうか。それはそれで楽しそうである。しかし、即興の勢いのままでやってしまうのもこれはこれで楽しい。

でもやっぱり、このコントのピークはアチャさんがカニになるところだろうか。意味が分からなさ過ぎる。走ってないときカニってなんなんだろう。

「三枝兄弟」

天才ピアノ連弾ユニット・三枝兄弟の二人がスタジオライブをするコント。これもアイディアは僕だったのだけど、もう中身の表現力に頼りっぱなしである。「ピアノを弾いてるときの顔がうんこ」というだけの取っ掛かりから、なんとまあ色々なうんこのバリエーションが出て来ること。

途中から僕は画面に映らず、心の声ツッコミみたいな感じで参戦している。動画のコメントでも指摘されていたけれど、心の声ツッコミをしているうちに背景が変わっていく(僕にとっての見え方が変わっていく)という小細工もとい工夫をしている。普段ピン芸人だから、「こいつにはこう見えている」系の演出はよく使う。それの転用である。

ちなみに、冒頭のインタビューはもう少し尺があったものをコンパクトに畳んでいる。そこまで長くインタビューを引っ張らずともよいなと思ったのが一つ、インタビューのシーンでちょっとユルい空気になり過ぎてしまったのが一つである。後半で雰囲気もおなかもユルくなるコントであるため、序盤はちょっと端正に畳んでおいた。

「先生、トイレ」

もともと僕が昔コンビでやっていたショートコントをもとにしている。あんまり説明しようがない。単に怖すぎる。本当によくない。アチャさんはこういうコントのこういうキャラが似合う。「診察室」にもこいつは出て来る。怪しい教師、怪しい医者、アチャさんにちょっと権力を握らせるとこうなるのだろうか。この手のキャラを掘り下げるコントもあっていいなあ。

僕たちはねぼう工房です

僕たち、ジャパネーズと九月の三人は、ユニットで活動するとき「ねぼう工房」という名前を使う。名前というか屋号というか、なんかそうい感じである。

今までスタジオで撮影してきたコントの中だと、「使用人」とか「新宿駅」とか「右脳戦」とかはかなりアホでいい。お客さんの前でやったものだと、「結ツ婚」とか。とても楽しげな感じでやっているので、よかったら色々見て頂けたらと思う。

そんな僕たち、今年はユニットでM-1グランプリに出よう、という話をしている。ここまでコントの話をしてきたのに漫才なんかい。漫才大変だ。センターマイクってどうやって高さをいじるんだ。がんばります。

ということで、漫才のツカミを考えよう!とわちゃわちゃしているトーク動画がこちら。

楽しそうでしょう。僕たちはねぼう工房です。

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