発音練習は必須

英語学習者の中には「インド人やメキシコ人はみんな訛っていても堂々と話すのだから、日本人も発音や間違いを気にせず堂々と話せば良い」という意見がかなりあります。日本の通訳学校に通った人からも色々な質問が出ます。
発音は重要ではないと教わった」
という人もいる一方、
「帰国子女の先生に発音が間違っていると言われるけれども、どうやって直したら良いのかわからない
という人もいて、かなり混乱しているようです。

1⃣「発音や間違いを気にせず堂々と話せば良い」という説
「堂々と話す」には、まず「訛っていても、多少の間違いがあっても、意思の疎通には不自由しない程度の英語が身についていることが必要です。インド人は自国でも英語環境で育っており、メキシコ人は英語に近いスペイン語が母国語ですから、話し方に癖があっても、細かいところが正確でなくても、相手にわかってもらえる程度の話し方はできるのです。言語体系が全く違う日本人とは基本的な条件が違うので、一緒に扱うことはできません。日本人はカタカナで英語を覚えているので、日本人が聞いてわかりやすい英語と、英語圏の人が聞いてわかりやすい英語は全く違います。「あんなに酷い発音でも通じるじゃないですか」などと言う人は、自分の発音のわかりにくさに気が付いていないのです。

2⃣「発音は重要ではない」という説
上記のとおり、まずは相手にわかってもらえる程度の発音を身につけることが必要です。ここでは「誰にわかってもらえるかが重要です。
英会話教室の先生は、カタカナ英語を完璧に理解します。なので残念ながら、「英会話教室の先生に通じる英語」は「他の人には通じない英語」です。とりあえず、この段階はすべての学習者が超える必要があります。
東京の外資系企業で働いている英語圏の駐在員は、日本人の発音にも、日本的な英語表現にも、和製英語にも慣れています。なので「東京の外国人上司に通じる英語」も日本の外では通じない可能性が高いのです。海外出張やテレビ会議があると辛い思いをするので、この段階も超える必要があります。
国連などの国際機関で働いている人たちは、世界中の人が話す英語を毎日聞き慣れているので、かなりわかりにくい英語でも理解してくれます。ただし「相手の努力で理解してもらう」という立場の人は、英語堪能な人よりも不利なのは当然ですから、わかりやすい英語を話せる努力はここでも必要です。
英語圏の一般人には、日本人の話し方はよく理解してもらえません。彼らはわかりにくい英語をわざわざ努力して聞く必要も根気もないので、最低限必要なこと以外は話そうとしても聞いてもらえません(外国人の多い地域で突然親切そうに話しかけてくる人は、何かの勧誘だったり詐欺師だったりしますから要注意)。「普通の人との日常会話」は最難関ですが、これができないと海外生活が苦痛になります。
日本語環境で育った人は、ほとんど①か②の段階です。努力すれば③までは行きますが、これまでの勉強方法では、いくらやってもそこで頭打ちになってしまいます。
「まあ通じる」程度の英語では、会議で発表はできても、質疑応答や討論に積極的に参加することはできません。日本人が黙っているのはよく性格や度胸のせいだと言われますが、実はそうではなくて、発音が悪いから自由に話せないのです。これは英語圏の留学生や研究者なら誰もが経験していることです。大きな問題は、その解決方法がわからないことです。

3⃣どうやって直したら良いのかわからない
学校ではカタカナ英語とヘボン式表記を教えられ、英会話教室では「度胸と根性で堂々と話せ」と言われ、それで正しい話し方が身につくはずはありません。英語の発音の基礎を知らないのだから、見様見真似でいくらやっても思わしい成果が出ないのは当たり前です。まず勉強の方法を変える必要があります。
①英語の母音と子音の種類と数、発音の方法を知る
②母音と子音と組み合わせて「音」を「単語」にする方法を知る
③「単語」を組み合わせて「節」と「文」にする方法を知る
④頭で覚えたことを筋肉を使って実践する
⑤何度も反復して筋肉を鍛える
この順番で、音程やリズムも頭に入れながら、長い文を止まらずに言えるように練習していけば、大人でも伸び悩むことはありません(逆に言うと、勉強は際限なく続きます)。

NY、LA、大阪、東京で開かれるワークショップの発音講座では、①から始めて②③の基本を説明します。発音の勉強をしたことがない初心者から、体系的に復習したい帰国子女まで、どんな人にでも役立つ内容です。

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