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これが精一杯の生き様だった

あの頃はひどく弱ってた。
泣き腫らした目と、涙の跡と、
壊れかけた自分の体を持って、箱に入った。

教室がどうも苦手で、
思い出すと大抵いつもの登場人物がいる。
特に、あのボロボロになった学級のなかに詰め込まれる息苦しさといったら、。


教室の窓をトンカチで殴り割って発狂したかった。

乾いた笑い声と汚れた目をした者たちが、そこにはいた。

何者でもなかった彼らがわたしの心を破壊するまでは一瞬だった。

担任は取り乱していた。ひどく抗っていた。
ここまで私が一生懸命見守ってきて、育ててきた、あの可愛い生徒たちが、いじめなんてする訳ない、と。そんなふうに表情が物語っていた。

わたしは間違っていた。
担任は、困ったら頼っていい存在なのだと思っていた。耐えられなくて涙が止まらなくなったら、相談しよう、と自然に思える存在だと思ってた。

そのとき、先生も生身のニンゲンなんだな、と思った。

・忙しいから後で聞く。
・なんで彼らが貴方のことを罵っている、とわかるの?
・絶対なんだね?
・100パーセント彼らが悪人だと貴方は言い切れるんだね?

相談したらふつう、
労る言葉をかけてくれると、
どこか期待してた。

そこから、人に期待しないことを学んだ。
いつでも裏切られる準備を整えて
生身のニンゲンと関わってきた。
これは誰にどう言われようと変えるつもりはない。自分を守るためのスキルだから。

あたりまえじゃないか、と今でも笑いが込み上げてくる。わざわざ先生にバレるようにいじめる生徒がどこにいるんだよ、と自分の乾いた泣き笑い声が家の中で響いたときのことを、覚えている。


唯一の逃げ場は保健室で、
唯一の学びは、養護教諭からの教えだった。

『今、あなたはドン底にいて、まぁるい円の中心にいる。まぁるくあなたを囲っているのは、あの担任を含めた加害生徒たちで、あなたを中心に置いて笑っている。あなたは俯いたままで、上手に息が出来なくなっている。でも、よく考えて。渦中にいると、周りが見えなくなる。周りにいるのが、目を合わせたくない人たちだから尚更。
だから飛ぶのよ。飛んで、まぁるい円の1段上にあがって、ひとり外側に出るの。自分が今いるその円は「客観視の円」と言うの。ほら、下を覗き込んでみな?』

客観視の円から見えた景色は、自分よりずっと下にあるまぁるい円で、そこにはうじゃうじゃと動く彼らがいた。

これですこしだけ、前を向けた。
息が吸えることに気がついて、
「絶対に、意地でも毎日登校してやる、一日でも休んだら、わたしの負けだ。」と戦闘モードに入った。そうやって、自分を奮い立たせて生きていくしかできなかった。


俯きっぱなしで姿勢が悪くなったことに加えて、下手くそな会話と笑顔を身につけて、
乗り越えた。多分、勝利した。

わたしは備えていた。
いつ、自分に何があってもいいように、
いつ、私が死んでもいいように、
備えていた。
いじめの証拠になるものをかき集めて、
毎日毎日、ノートに書き記した。
ペンケースの中にはいつもメモ帳を入れて
・何月何日、何時何分に〇〇君がこんな暴言を言ってきた。
・何月何日、何時何分に〇〇君がこんな事をしてきた。………。
暴言を聞いた瞬間、時計を見て記録していた。
もし、限界で死んだとき、いじめの証拠として突き出せるから、記録しておきなさい、と母親にそう言われていた。結局、今じゃただ嫌な記憶を思い出させるノートでしかないけれど。


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わかったことがたくさんあった。
死にたい、と思うことはダメなことなのか。
軽い気持ちで口にしてた訳では無い。
なんでそんなこと言うんだ、と
怒られたいから言っていた訳では無い。

その時点で、今のこの、ギリギリ人のカタチを保てている状態の自分では、今から先の時間を生きていくことが難しい、と思った。
だから、生きていたくなかっただけ、なんだよ。
既に壊れかけた心に対して、今後どれだけ攻撃されるかがわからない恐怖や、明日を生きることへの恐怖が、もう生きれないです、と伝えてくれてただけなんだよ。

卒業と同時にいじめから解放されたとき、
ご飯を、おいしいと言いながら食べられる喜びを感じた。明日が来るという事実に怯えずに、眠ることが出来る喜びを感じた。中学卒業とともに、得られた喜びと学びがたくさんあった。

許す、ということを実現できているかはわからない。難しいことだと思う。だけど、今、私は幸せだから。もう大丈夫。いま、彼らが、誰も傷つけず、周りを悲しませず、幸せに生きていてくれたら、それでいい。私の存在なんて忘れてしまっていい。もう二度と関わらないでくれればそれでいい。もう二度と、私を話題にしないでくれれば、それで、いい。
これだけはずっと想ってきたから、
ぜったいに揺るがない。

いちばんすきなんだ。このドラマ。このセリフ。

《嫌な過去は、なかったことにはならないと思う。でも、幸せになることが復讐だよね。毎日、楽しいなって思えることが、いちばんの復讐。やっつけよう、過去》
ドラマ:日曜の夜くらいはより。


さいごまで読んでくださってありがとうございます。どうか良き一日を。

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