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ミトラ教とキリスト教-捏造されるミトラ教-

・始めにキリスト教はミトラ教から盗用している、という人がいます。その証拠として、イエスとミトラの間にある類似性を上げています。
一読すると、本当に似ていて、キリスト教がミトラ教かた盗用したようにしか見えません。

本当にキリスト教はミトラ教から盗用したのでしょうか?

本題に入る前に、以下の点を踏まえておきましょう。

・イエス神話
イエス神話とは、18世紀後半に出現した説です。この説は、歴史的イエス(ナザレのイエス)は存在せず、イエスの話は他の神話を元にして創作された、という内容です。

このイエス神話は、何人かの無神論者お気に入りの説ですが、歴史学者、宗教学者から徹底的に検証され、批判された結果、イエスは実在する、という結論に至っています。
しかし、このイエス神話。細々と続いていて、近年になって大衆の人気を得るようになりました。
それがネット上で遭遇する、「キリスト教はミトラ教、もしくはその他の古代神話から借用して作られたものである」という説に繋がっていきます。

では、本題に入りましょう。


・キリスト教は、本当にミトラ教、あるいはその他の神話から借用したのか?

この本題である、イエス神話を主張する作家に、Acharya S、Earl Doherty, Timothy Freke and Peter Gandy, Tom Harpur, Robert Price, Thomas Thompsonなどがいます。
最近、日本国内のネット上で見られるキリスト教とミトラ教の類似点の出所は、どうやらAcharya Sの著作から来ているようです。

彼女の著作「The Christ Conspiracy: The Greatest Story Ever Told」(及び、彼女自身のホームページ)で、ミトラの神話として以下のことを記述していました。
以下は彼女自身のホームページから書き出したものです。

*ミトラは12月25日に洞窟で処女から生まれ、彼の誕生には贈り物を持った羊飼いが出席しました。
*彼は素晴らしい巡回する先生、主人と見なされていました。
*彼には12人の仲間または弟子がいました。
*ミトラの信者は不死を約束されました。
*彼は奇跡を行いました。
*「太陽の大雄牛」として、ミトラは世界平和のために自分自身を犠牲にしました。
*彼は墓に埋葬され、3日後に蘇った。
*彼の復活は毎年祝われました。
*彼は「善き羊飼い」と呼ばれ、子羊とライオンの両方と同一視されました。
*彼は「道、真理、光」、「ロゴス」、「贖い主」、「救い主」、「メシア」と見なされていました。
*キリストが現れる100年も前から、彼の神聖な日は日曜日であり、それは「主の日」であった。
* 彼は自分自身の神聖な祭典持っており、このは、後のキリストのイースターになった。
*彼の宗教には聖体または「主の晩餐」があり、ミトラは「私の体を食べたり、私の血を飲んだりして、私と一つとなり、私は彼と共にいます。そうでない者は救われない」と述べました。
*「彼の毎年の犠牲は、マギの過越祭であり、それは道徳的および肉体的再生の誓約の象徴的な贖いです」


彼女の説は、イエスの生涯とほぼ似ています。人によっては同じと思うかもしれません。

これに対して、新約聖書学者、本文批評の学者であるBart Denton Ehrmanは「Did Jesus Exist? The Historical Argument for Jesus of Nazareth」という著作の中で、「自分たちを神話家と呼ぶ作家、ブロガー、インターネット中毒者」に対する痛烈な批判を浴びせています。
Ehrmanは、彼らが「神話」の意味を定義しておらず、歴史的証拠を調べるのではなく、宗教を非難したいという願望によって本当に動機付けられていると主張し、彼は現代神話家を名指しで、「素人っぽい」、「頭がおかしい」、「風変わりな」と批判して、作家たちのイエス神話を否定しています。

Ehrmanは、同著作(及び本人のブログ)の中でイエスの物語は死と再生の神の異教の神話に基づく発明であるという考えを否定し、初期のキリスト教徒は主にギリシャやローマの考えではなく、ユダヤ人の考えに影響を受けたと主張しています。


他にも、Acharya Sのイエス神話に意見している方で、新約聖書言語文学名誉教授であるPhilip Maurice Casey がいます。
Caseyは「彼女のアンチキリスト教的見方、現実的な思慮の欠如、適切な参照の欠如、一次資料を正しく解釈できないこと、および一次資料ではなく、不正確な古い二次資料への依存関係」とAcharya Sを批判しています。(1)


・現代の神話家が参照するイエス神話の出所は?

この出所問題についても、Ehrmanはブログ内で指摘しています。
「現在、キリスト神話を著作している人たちは、カージー・グレイヴスの「磔にされた十六人の世界の救い主」を参照している」と述べており、ミトラ以外に ヒンドゥーのクリシュナ、仏陀、フェニキアのバール(もしくはバアル)、シリアのタンムズ、ペルシャのミトラ、ギリシャのカドモス、アラビアのムハンマドなど があげられています。


・グレイヴスの著作

グレイヴスの著作「磔にされた十六人の世界の救い主」は、学問的裏付けにかける説だと言われている書籍です。

グレイヴスの著作は、Ehrmanが書き出した以上の神話の神の名前が書かれ、以下のような主張を含んでいます。

「奇跡的または処女の誕生、最高の神の息子、12月25日に生まれ、星が彼らの出身地を指し示し、幼児として羊飼いと魔術師が訪れ、子供の頃に死から逃げ、神性の特徴を示した人物もいます。
子供の頃、砂漠で過ごし、教えながら旅をし、弟子を持ち、奇跡を起こし、迫害され、十字架につけられ、死後地獄に降り、復活や幻影として現れ、天国に昇りました。
また、バプテスマと聖体のルーツは、異教からであるとし、イエスは実在の人物ではなかった」


Ehrmanは、他の学者が出した結論と同じように、「事実上全て、グレイヴスが言ったことは間違っている」と指摘します。


以上が、キリスト教はミトラ教から盗用されている、という主張に対する答えです。


・Earmanに批判された他のイエス神話家

・Timothy Freke & Peter Gandy
「The Jesus Mysteries: Was the "Original Jesus" a Pagan God? 」で、ミトラ以外にオシリス、ディオニュソス、アッティスを取り上げています。

・Tom Harpur
ホルス、ミトラス、仏陀は、イエスと似ていることについて書いています。


・終わりに

キリスト教はミトラ教から盗用しておらず、実態はむしろ逆です。そもそも、神話にない、遺物、遺跡にない内容を捏造しているのが、イエス神話家です。その著作の内容だけが、海外から日本に輸入されて、ネット上に広まっています。

今回、重点的にEhrmanの著作、ブログから引用した理由は、彼は今回のイエス神話について、中立に位置している学者だからです。

彼は元キリスト教徒で、今は不可知論者として有名な方であり、また、著作のせいでキリスト教嫌いからは好かれ、著作のせいでキリスト教徒に嫌われている学者でもあります。

そのことから、キリスト教はミトラ教から盗用したのか、という議論-イエスは他の神話から創作された、も含めて-について、実態はどうなのか、について記すのに、Earmanほどの適任はいないと私は思いました。


Earman のブログ
https://ehrmanblog.org/did-jesus-exist-the-birth-of-a-divine-man-for-members/

(1) Casey, Maurice (2014). Jesus: Evidence and Argument or Mythicist Myths?. T&T Clark.

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