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Garden5

あっという間に水曜日がやってきた。
きてほしいような…ほしくないような…複雑な心境で、いつもより早く目覚めるとコーヒーを落とす。

夕方、あのカフェで待ってるねっ。といたずらっぽく
笑った顔を思い出す。
笑うと目尻にシワが寄って、小さな子どもみたい。

溜まった洗濯物を洗う。
ぐるぐる廻る様子を、ぼーっと眺めていると色々な事を思い出す。

いつから1人で生きていけるようになったっけ?
いつから男の人に甘えなくても大丈夫になったっけ?
最後の恋はいつだった?
ずいぶん前に忘れてしまった感情が、ゆるゆると胸の中で流れだす。

夕方が近づくにつれ、ソワソワし始める。
髪をいつもより、丁寧に巻いて。
洋服は…いやいや。普段と同じでいいよね…
ピアスだけは、先週ボーナスで買ったプラチナの新しい物にした。

時計を見ると16時前…私はサンダルを履いて玄関の姿見で、隈なく全身をチェックする。
変な期待は持たないように…もしかしたら冷やかしかも…いないかも。それでもいい。夕方のカフェにアイスラテを飲みに行くだけだ。

玄関の鍵をかけて、深呼吸する。
落ち着いて、、そう思えば思うほど、足が速まる。

にっこり笑う大きな歯や、少し伸びた衿足、長くて白い指がフラッシュバックのように頭の中で浮かんでは消える。
他にもそういう人はいる。
でも、なぜか彼の姿だけが浮かぶ。
私の気持ちがそうさせる。きっともう惹かれているから。

カフェに着いてゆっくりと辺りを見回すと、いつもの席に座っていた。
オーバーサイズのTシャツに、JAZZの眼鏡。
頬杖を突きながら、難しい顔をして本を読んでいる。

「はっ」小さな声が出そうになる。
暫くその姿を見ていたい。私は一歩進む事が出来ずに立ち尽くした。

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